書評:国際情報
アクションもののヒーローはおしなべて無法者の匂いがする。「俺が法だ」と言わんばかりに社会の矛盾や組織の理不尽を踏みつけてくれる。我々に代わって。人気の高い作品というのは、人々の不満を上手にすくい取ってカタルシスを与えているのだろう。 映画『…
アメリカの政治システムを支えているのがシンクタンクである。それぞれのシンクタンクが立案した政策は公開され、政府が変わるたびに採用されたり斥けられたりする。いわば政策立案の市場化。 読み物としてはさほど面白くないが資料的価値のある一冊。アメリ…
・アメリカ経済界はファシズムを支持した ・第二次世界大戦の命運を分けた人脈−チャーチル、イントレピッド、ルーズベルト ・CIA以前 人が歴史を動かすのか、あるいは歴史が人を育むのか。いずれにしても歴史の先頭に立つ人物が必ずいるものだ。時代の寵児(…
・『マスードの戦い』長倉洋海 ・アフガニスタンの砂漠を緑に変えた男 ・百の診療所よりも一本の用水路 ・食糧不足と脱水症状で死んでゆくアフガニスタンの子供たち・台湾の教科書に載る日本人・八田與一/『台湾を愛した日本人 土木技師 八田與一の生涯』古…
・プラハで学んだ少女達の30年後の真実 ・ペンは剣よりも強し ・チャウシェスク大統領を処刑した理由・『打ちのめされるようなすごい本』米原万里 米原万里は9歳から14歳にかけて、プラハのソビエト学校に通った。1960年代のことである。人種が入り乱れるク…
期待したほどではなかった。丁々発止(ちょうちょうはっし)、侃々諤々(かんかんがくがく)、喧々囂々(けんけんごうとう)とまでは言わないが、対談というものはもっと緊張感があってしかるべきだ。それがあって初めて、対話の妙が生まれる。基本的に手嶋…
・『パレスチナ 新版』広河隆一 ・虫けらみたいに殺されるパレスチナの人々 ・銃弾が食い込んだままの教科書 ・普段通りの暮らしを続けることが人々のインティファーダだった ・パレスチナ人は普通の暮らしも望めない 幼稚園の先生がパレスチナへ行った。彼…
・アフガンの英雄アフマド・シャー・マスード・『医者、用水路を拓く アフガンの大地から世界の虚構に挑む』中村哲 ・『台湾を愛した日本人 土木技師 八田與一の生涯』古川勝三 この男の風貌は強い何かを私に訴えかけてくる。どうしようもなく惹きつけられる…
数字は個別の物語を捨象する。例えば、完全失業者数は359万人(2009年7月)、65歳以上の人口は2640万人(2006年9月)、交通事故による死者数は5155人(2008年)、自殺者は3万2249人(2008年)などを見ても明らかなように、個々人の顔が全く浮かんでこない。…
アンナ・ポリトコフスカヤは殺された。自宅アパートのエレベーター内で何者かの手によって蜂の巣にされた(2006年10月7日)。それまでにも彼女は、北オセチア共和国で起こったベスラン学校占拠事件の取材に赴く機中で紅茶に毒を盛られたことがあった。銃口を…
丸山隆三は派手なカーチェイスの末に逮捕された。アメリカでのこと。バブル前夜ともいうべき時期に、彼は外車の並行輸入を手掛けて、これが当たった。懐が温かくなると悪い友達が群がるようになる。そして転落の人生が幕を開けた。麻薬売買の仲介者(フィク…
・アメリカ経済界はファシズムを支持した ・第二次世界大戦の命運を分けた人脈−チャーチル、イントレピッド、ルーズベルト ・CIA以前・『ヒトラーの経済政策 世界恐慌からの奇跡的な復興』武田知弘・必読書 その二 ナチス・ドイツというファシズム国家を誕生…
私はサッカーをまったく観ない。多分、日本代表がワールドカップの決勝戦に進出したとしても観ることはないだろう。そんな私が本書を開くや否や、一気に引きずり込まれ、貪(むさぼ)るように読んだ。 彼等は紛争という大地に立っていた。彼等は人種差別とい…
コソボ紛争は複雑である。まず、ユーゴスラビア紛争を理解しなくてはならない。 コソボ問題 わかりやすく ユーゴスラビアという国家は、チトー大統領の傑出したリーダーシップによって諸民族が微妙なバランスを取ることで成り立っていた。チトーの死(1980年…
・『物語の哲学』野家啓一 ・『死と狂気 死者の発見』渡辺哲夫 ・自爆せざるを得ないパレスチナの情況 ・9.11テロ以降パレスチナ人の死者数が増大 ・愛するもののことを忘れて、自分のことしか考えなくなったとき、人は自ら敗れ去る ・物語の再現性と一回性 …
1940年6月、ドイツ軍がパリを占領した。凱旋門にはハーケンクロイツ(鍵十字)の旗が翻(ひるがえ)り、フランスの栄光はナチスの軍靴に踏みにじられた。時の首相・ペタン将軍はドイツ軍の前にひざまずいた。 この時立ち上がったのがドゴールだった。無名の…
・9.11テロは物質文明の幻想を破壊した ・ロスチャイルド家がユダヤ人をパレスチナへ送り込んだ ・ユダヤ人移民は分割統治の道具 ・アラファト前議長、毒殺された可能性 遺骨からポロニウム検出・『「パレスチナが見たい」』森沢典子 一般的には「パレスチナ…
・9.11テロは物質文明の幻想を破壊した ・ロスチャイルド家がユダヤ人をパレスチナへ送り込んだ ・ユダヤ人移民は分割統治の道具 ・アラファト前議長、毒殺された可能性 遺骨からポロニウム検出・『「パレスチナが見たい」』森沢典子・必読書リスト その二 …
・少年兵は自分が殺した死体の上に座って食事をした ・かくして少年兵は生まれる ・ナイフで切り裂いたような足の裏 ・逃げ惑う少年の悟りの如き諦観 ・ドラッグ漬けにされる少年兵 ・少年兵−捕虜を殺す競争 戦争はいつだって男達が始め、女と子供が被害者と…
・目をえぐり取られ、耳をそがれ、手足や性器を切断されたチェチェン人の遺体 ・ソ連によるアフガニスタン侵攻の現実 ・チェチェンの伝統「血の報復の掟」 チェチェン人の男は必ず復讐を果たすという―― それから、チェチェンには、独特の「血の報復の掟」が…
森巣博(もりす・ひろし)はオーストラリア・カジノを拠点とする博徒(ばくと=ギャンブラー)である(森巣は「カシノ」と表記している)。本書のテーマは「日本人論」であるが、自在な筆致はギャンブル哲学を通奏低音とした小説のような味わいもある。 で、…
はっきり書いておこう。作品としてはイマイチだ。だが、サラエボの子供達の言葉の数々は一読に値する。否、そのためだけに対価を支払ったとしてもお釣りが来る。 「そしてぼくは、ぼくらの国の言葉で書かれ、ぼくらの国の俳優が演じているこの作品を、サラエ…
・中国人民の節度 ・若き日の感動 父は西園寺公一(きんいち)、曽祖父は西園寺公望(きんもち)。西園寺一晃は北京に10年間留学し、文化大革命を目の当たりにする。本書を文革礼賛本と称する向きもあるようだが、底の浅いステレオタイプの類いに過ぎない。…
私の世代の男性であれば若い頃、落合信彦を読んだ時期があることだろう。そう。単なる寄り道だ。だが、活字の世界は奥が深い。寄り道同様に。 モータースポーツに興味がなくても、アイルトン・セナの名前を知る人は多い。日本では「音速の貴公子」と呼ばれ、…
・『9.11 アメリカに報復する資格はない!』ノーム・チョムスキー ・近代政府による組織的な宣伝活動 ・アメリカ軍国主義が日本を豊かにした ・ウォルター・リップマンの策略 ・観客民主主義 ・民主主義の新しい革命的な技法=合意のでっちあげ ・「必要な幻…
まずは以下の記事を読んでもらいたい。 ・情報の歪み=メディア・バイアス で、次なる問題として当然「自分というバイアス」が考えられる。どちらかと言えばこっちの方が問題である。正しい情報まで歪めることもあるからだ。早合点、曲解、すり替えなど。人…
忘れないうちに書いておこう。養老孟司は「われわれの社会では言語が交換され、物財、つまり物やお金が交換される。それが可能であるのは脳の機能による」(『唯脳論』)と書いた。 佐藤●マルクスが解き明かしたことの中でも重要なのが「国家」と「貨幣」の…
・『日本テレビとCIA 発掘された「正力ファイル」』有馬哲夫 ・「IMFの父」はソ連のスパイだった・『通貨バトルロワイアル』浜田和幸 ・『世界を操る支配者の正体』馬渕睦夫 ・『ヴェノナ』ジョン・アール・ヘインズ、ハーヴェイ・クレア いやあ、たまげた。…
・目をえぐり取られ、耳をそがれ、手足や性器を切断されたチェチェン人の遺体 ・ソ連によるアフガニスタン侵攻の現実 ・チェチェンの伝統「血の報復の掟」 軍事技術の発達は「距離を獲得」したと言ってよい。すると、戦争とは縁のない我々は、離れた位置から…
サラエボ紛争の本は数冊持っている。だが、一冊も読んでいない。その事実から言えば、私はサラエボ紛争には関心はあるものの、まだ関わろうとはしていない。 二人の青年が笑顔で写真に収まっている。邪気のない顔つきだ。ローソクのような柔らかい光に包まれ…