古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

2000-02-01から1ヶ月間の記事一覧

オンライン古書店の風景

吾輩は店主である。まだ儲かってない。 なぜ本を売るのか? 部屋に本があるからだ。 このわずか2行が我が人生の現在を語り尽くしている。電網超厳選古書店「雪山堂」を立ち上げて、早、3ヶ月。振り返るほどの日月(にちげつ)は重ねていないが、雪山(せっせ…

『ラジオの鉄人 毒蝮三太夫』山中伊知郎

心を響かせて発せられたものが言葉だとすれば、声に心根が現れると言って良いだろう。この間読んだ藤原伊織著『てのひらの闇』(文藝春秋)には、会長秘書の言葉を称して「ステンレスの定規みたいに事務的な声」なんてのがあったが、巧いもんだね。生の言葉…

『てのひらの闇』藤原伊織

あなたの周囲には、信じるに足る人間が何人いるだろうか? 常に一緒にいても、ただ饒舌なだけで、深く交わろうともしない互いを「友達」と呼称する時代。表現する自己すら失った社会では、言葉は虚しい響きしか持たず、鳥のさえずりにも劣り、殺伐たる様相を…

『日本語 表と裏』森本哲郎

人は言葉を介して他人や事物を理解し、言葉を用いて思考し、言葉を発して自己を表現する。人はまさしく言葉に生きる動物であるといってよい。 誰しも言葉を自由に扱っているつもりになっていよう。欲求を示すに当たっては幼児期の「ママ」に始まり、愛の告白…

『梟の拳』香納諒一

黒いマントを羽織った誰かが、いきなり俺の前に飛びおりたのはそのときだ。 チャンピオンの栄光をつかんだ主人公が、網膜剥離(もうまくはくり)で視力を奪われた瞬間をこのように表現する。思わずため息が出た。巧い。ところどころに挿入されるボクシングの…