古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

2001-03-01から1ヶ月間の記事一覧

橋/『千日の瑠璃』丸山健二

小説のリアリティを支えているものは何か。まず、視点が浮ついてないことだ。人の目の高さなどはそう簡単に変わるものではない。地にしっかりと足を踏み下ろしているかどうか。物語の構成上、都合のよいことを書いてしまっては、読者の興醒めに手を貸してい…

朝日新聞の欺瞞

3月19日付の朝日新聞朝刊に「日韓W盃に向けて 第3部」と題した連載記事。紙面の半分以上を使って書かれているのは松田優作。 今は亡き人気俳優を取り上げ、問題意識を高めるのが狙いのようだが、その内容は、彼に朝鮮人の血が半分流れていたということのみ。…

『テロリストのパラソル』藤原伊織

再読。ご存じ、直木賞と乱歩賞をダブルで受賞した作品。社会からドロップ・アウトしたアル中の主人公・菊池と少女の出会いから物語が始まる。少女が年齢の割りには、やけにませているきらいはあるものの、一気に引き込まれる。別れた直後に起こる爆発テロ。…

クルクル回るパラソルに思う

3月8日付朝日新聞一面にカラフルな傘の写真が掲載されていた。「緊張の一投 目くらまし」との見出し。副題は「パスケ応援、米国風」。 つまりだ。これはバスケットの試合で、フリースローをする選手の集中力を妨げる目的で、応援席にいる大勢の連中が渦巻き…

『静寂の叫び』ジェフリー・ディーヴァー

一日半で読み終えた。久方振りの読書は喜ばしいことに快感を伴うものとなった。ロバート・ラドラム亡き後、ジェフリー・ディーヴァーに掛ける期待は大きい。作風は異なるが、極限状況を克服するドラマが与える興奮は同じものだ。ディーヴァーの場合、人質や…

パソコン周辺機器の快感

PC

パソコンを買ってから、早2年余りとなる。今では、朝から深夜に至るまで、私の生活に欠かすことのできない道具となった。自己主張の強い私はかねてから「ファックス? 必要ないね。電話で充分だ」「携帯? 行き先をちゃんと伝えておけば、そんなものなど要ら…

空気/『千日の瑠璃』丸山健二

丸山は映像に対抗し得る世界を常に書き表そうとしている。この作品を映像化するとどうなるだろう? 私なら、朗読中心のスライドにする。まずは1000人の読み手を選別し、それから数千枚の写真撮影をさせる。音楽は少な目にし、大自然の音をふんだんに取り入れ…