書評:写真
第一次世界大戦の写真集である。粒子が粗(あら)くて見にくい。だからこそ我々は、異形と化した兵士を辛うじて見つめることが可能になる。彼等の顔は原型を思い描くことができないほどズタズタになり、窪み、一部を吹き飛ばされている。 スーザン・ソンタグ…
スーザン・ソンタグの本を初めて読んだ。凄い。柔軟さとしなやかさが強さであることを示している。当初、「鞭のようだ」と思った。が、それは正確ではない。衣(ころも)のように包み込み、水のごとく浸透する、と言うべきか。 彼女は揺らぐ。バランスをとる…
フェルディナンド・プロップマンの文章が余計だ。所詮、デスクの上で写真を眺めながら書いている文章に過ぎない。しかも、彼はそれを書くことで報酬を得ているはずだ。二重に許し難い。 それでも、いい写真集である。生きる糧(かて)を獲得するための生業(…
1940年6月、ドイツ軍がパリを占領した。凱旋門にはハーケンクロイツ(鍵十字)の旗が翻(ひるがえ)り、フランスの栄光はナチスの軍靴に踏みにじられた。時の首相・ペタン将軍はドイツ軍の前にひざまずいた。 この時立ち上がったのがドゴールだった。無名の…
・『メッセージ 告白的青春論』丸山健二 ・命の炎はしっかりと燃えている 花の写真集である。丸山健二が一人で作った自宅の庭に咲き乱れる花々だ。庭の写真集ではないので注意が必要だ。言葉は「ついで程度」に記されている。 昔ながらの丸山ファンから不評…
サラエボ紛争の本は数冊持っている。だが、一冊も読んでいない。その事実から言えば、私はサラエボ紛争には関心はあるものの、まだ関わろうとはしていない。 二人の青年が笑顔で写真に収まっている。邪気のない顔つきだ。ローソクのような柔らかい光に包まれ…
写真とは切り取られた“瞬間”である。何をどう写すかは、カメラを持つ者の立ち位置で決まる。桃井和馬は世界140ヶ国を飛び回り、己の視線が捉えた光景と人々を“永遠”に刻みつけようとしている。 万物は諸行無常であり生老病死のリズムを奏でる。桃井は敢えて…
こうした作品にそれなりの意味はあるのだろう。テロや戦争の犠牲となった遺体の写真集だ。現代社会は死を隠蔽するから、「これが現実なんだぞ!」と言われれば、「はい、そうですか」と答えるしかない。 出版当初、大手取次のトーハンが委託を拒否した。 『…
土門拳による肖像写真とエッセイ。現場風景が描かれることによって写真の凄味がぐっと増している。後書きで書かれている「梅原龍三郎を怒らせた話」が面白い。 写真嫌いの梅原に対して土門が色んなポーズを要求する。土門は「僕の邪推によれば、写真というも…