丸山健二

丸山健二が生まれた日

今日は丸山健二が生まれた日(1943年)。23歳で芥川賞を受賞。賞や文壇のような文学界とはほとんど関わりを持たずに執筆を続けており、中央文壇とは離れたスタンスと現代都市文明への批判的視座にある力強い生き方から「孤高の作家」とも形容される。 「37年…

丸山健二新刊『猿の詩集』(文藝春秋、2010年)

時は第2次世界大戦中。南方の激戦地にて眉間を撃ちぬかれた男の魂が、1匹の猿に乗り移る――。あの戦争を超越的な視点から語りつつ、そこに生きる市民、権力者、そして天皇の在り方をも論じる異色の超大作です。文章を読点によって長く続けるという、特異な文…

地獄と痛み

体内に地獄を感じない者には、魂の安息を求める資格がない。 良心に痛みを覚えない者には、残りの生命を謳歌する権利がない。 【『鉛のバラ』丸山健二(新潮社、2004年)】

私は闇だ/『千日の瑠璃』丸山健二(文藝春秋、1992年/文春文庫、1996年)

風 千日の瑠璃(上) 千日の瑠璃(下) (※上が単行本、下が文庫本)

『百と八つの流れ星』丸山健二(岩波書店、2009年)

『千日の瑠璃』(文藝春秋、1992年/文春文庫、1996年)と似て非なるスタイルか? チト、食指が動く。それにしても、岩波書店からの刊行とは驚いた。 丸山健二 どれほど凡庸な日常、懊悩に満ちた生活、不運に翻弄される生涯であろうとも、人生には闇を走る閃…

命の炎はしっかりと燃えている/『荒野の庭』言葉、写真、作庭 丸山健二

花の写真集である。丸山健二が一人で作った自宅の庭に咲き乱れる花々だ。庭の写真集ではないので注意が必要だ。言葉は「ついで程度」に記されている。 昔ながらの丸山ファンから不評を買ってから久しい年月が経つ。庭造りに傾倒するようになってからは、更な…

『荒野の庭 言葉、写真、作庭』丸山健二(求龍堂、2005年)

ま、年を食っても丸山は丸山だが、児玉清の如才なさ、反応のよさ、抑制の効いた誠実ぶりに驚いた。こういう年齢の重ね方は、そうそうできるものではない。 丸山健二

丸山健二の豪語

最新作『日と月と刀』(上下)について、日本経済新聞に寄稿した模様。梅田望夫氏が紹介していた。随分と豪語している(笑)。 著作の反響、将棋をめぐる感想、「日と月と刀」

丸山健二の新作『日と月と刀』(上下)

戦火のなか生まれおちた〈無名丸〉の生涯を、流浪の人生から絵師へと生きぬくさまをとおして描き、生と死、人生とはなにかを問う意欲作! 著者初の歴史小説、しかも渾身の1300百枚書き下ろし長篇小説です。室町時代、野盗にさらわれた女が産み落とした男児の…

丸山健二と井上マーの共通点

丸山健二と井上マーの共通点を発見。 どちらの名前にも「ま」がある。こりゃ、冗談(笑)。 「定型化した表現による風刺」である。我ながら大発見だと思うが、いかが?(笑) 井上マー

『逃げ歌』丸山健二

7度の推敲の跡なし 買わなくてよかった、と心底思いながら私は本をパタンと閉じた。上巻117ページに「よしんば」が3回出てきた直後のことだ。「野郎、嘘をつきやがったな」と私は心の中で呪った。「貴様、7度の推敲から“逃げうた”な」と駄洒落を言おうとして…

『ミッドナイト・サン 新・北欧紀行』丸山健二

殴られる心地好さ 私は軽井沢の地にいた。新世紀初のゴールデン・ウィークを、余りにも有名となった避暑地で優雅に過ごす予定だった。2日に出発。クルマで向かう途中、怪しげな顔を見せていた雲がパラパラと雨を落としてきた。面子が悪過ぎた。古書店仲間だ…

丸山健二と『マタイ受難曲』/『虹よ、冒涜の虹よ』丸山健二

丸山健二の『虹よ、冒涜の虹よ』(新潮社)に出てくる『マタイ受難曲』を遂に聴くことができた。私が借りてきたCDは、カラヤン指揮、ベルリン・フィル・ハーモニーによる演奏である。検索して調べたところ、カール・リヒター指揮の方が遥かに好い出来のよう…

丸谷才一の『思考のレッスン』(文藝春秋)を読み終えているのだが、書評が上手くまとまらないので、次号に回すことにした。原稿に困った時は『千日の瑠璃』に限る。 語り手は、会社帰りの工員が砂利道に落とす「影」である。 私を足枷のように引きずりなが…

小説のリアリティを支えているものは何か。まず、視点が浮ついてないことだ。人の目の高さなどはそう簡単に変わるものではない。地にしっかりと足を踏み下ろしているかどうか。物語の構成上、都合のよいことを書いてしまっては、読者の興醒めに手を貸してい…

空気

丸山は映像に対抗し得る世界を常に書き表そうとしている。この作品を映像化するとどうなるだろう? 私なら、朗読中心のスライドにする。まずは1000人の読み手を選別し、それから数千枚の写真撮影をさせる。音楽は少な目にし、大自然の音をふんだんに取り入れ…

紋章

権威は人を服従させる力を持つ。名誉、地位からブランド・マークに至るまでが何らかの力を持っている。人を欺くにはこうした力を利用するのが手っ取り早い。詐欺師なんぞは名刺を麗々しい肩書きで飾り、りゅうとした身なりで登場するに違いない。ブランド・…

野良犬

丸山の人生観が色濃く滲(にじ)み出ている箇所である。それ故、彼が好ましく思う人間関係の距離感がよく出ていると思う。 私は野良犬だ。 語り手は、まほろ町を徘徊する野良犬である。 もっともそのおかげで私は、人間に飼われている犬や、犬を飼っている人…

茶柱

日常生活は微妙な幸不幸に支えられている。不幸の後を幸福が和らげ、幸福の隣を不幸が駆け抜ける。紛(まが)うことなく存在するのは「今」という目の前の一瞬だけだ。 女性相手の雑誌の売れ行きは“占い記事”が左右するという話を聞いたことがある。今週、今…

義手

10月末日の月曜日を語るのは「義手」だ。 このページは丸山の特徴がよく出ている。対照的な叙述、意表を衝く喩(たと)え、幾何学的な形容、反復によるリズム、等々――。 私は義手だ。 茸採りにかけては比肩する者がいないといわれている男、彼の左の腕を補う…

私は扉だ。 語り手はまほろ町に建てられたばかりの暴力団事務所の扉だ。頑丈極まりない扉が据え付けられて事務所は完成する。 うわべは平凡そのものでも、しかし私の内側には分厚い鋼鉄の板が2枚も仕込まれていた。私を横眼で見ながら素早く通り過ぎる町の人…

落ち葉

小説の好みは人によって様々であり、何に対して痺れるかは人それぞれの見解があろう。あるいはまた、小説などという作り事は読むに値せず、とする人もまま見受けられる。そこには、作家が勝手気ままに、都合良くストーリーをデッチ上げることへの侮蔑が感じ…

丸山は現状維持に安住する小市民の描き方が非常に巧い。向上心なき人間を辛辣な表現で串刺しにする。その激しさが戯画的な効果を生み、操り人形を見せられているような気になってしまう。 私は靴だ。 踵が摩滅し、とうとうつま先の部分がぱっくりと割れた、…

『丸山健二エッセイ集成/第4巻 小説家の覚悟』丸山健二

山国を急速に占めてゆく紅葉と黄葉の得もいわれぬ芳香がいよいよ秋を深め、色とりどりの候鳥の羽音が透徹した大気を震わせるとき、ふとわれに返る一瞬がある。言葉を唯一の頼みとして、形而下から形而上へと分け入り、太極まで肉薄しようとする、そうした生…

『さらば、山のカモメよ』丸山健二

青春時代が放つ、あの熱はどこから湧いてきてどこへ去ってゆくのか──。 丸山にしては極めて珍しい軽快な文章の小説である。エッセイで紹介されていた事柄が随分出て来るということは、かなりの割合で事実に基づいて書かれたのだろう。等身大の丸山が感じられ…

『穴と海』丸山健二

初期の短編集である。利沢行夫の解説によれば丸山にとっては3冊目の作品とのこと。昭和44年文藝春秋から発刊されたというから、著者25歳前後の作品である。表題作以下6編が収められている。 丸山はエッセイ集『イヌワシ讃歌』(文藝春秋)で映画『灰とダイヤ…

『野に降る星』丸山健二

魂を射抜く、物語の気高さ 1月29日深夜零時、読了。放心状態。言葉を失うほどの感動。心酔、では及ばない。圧倒、でも足りない。 「やってくれたな」言葉にならない言葉が胸の裡(うち)で竜巻と化す。魂を撃たれた。射抜かれたと言ってもいいだろう。昂(た…

『小説家の覚悟』丸山健二

孤独な魂が発する鮮烈なメッセージ 痺れた。心が震えると言うよりは、痺れたと言った方が正確だ。打たれたと言ってもよい。地震ではなく雷のそれだ。 私が始めて丸山の作品を手にしたのは、今から7年前のことだ。以前から探していた『メッセージ 告白的青春…