書評:介護

『もっと!らくらく動作介助マニュアル 寝返りからトランスファーまで』中村恵子監修、山本康稔、佐々木良(医学書院、2005年)

これはオススメ。岡田慎一郎著『古武術介護入門 古の身体技法をヒントに新しい身体介助法を提案する』よりもはるかにいい。身体障害者の体位変換および移動に関して私はプロ級の腕前だが(ナース、ヘルパーで私より上手い人を見たことがない。また実際に大学…

超えられない医師と患者の立場/『痴呆を生きるということ』小澤勲

決して悪い本ではない。文章もこなれている上、著者自身が癌を宣告され余命いくばくもない中で執筆されているため独特な透明感がある。 老い呆けし母を叱りて涙落つ 無明無限にわれも棲みゐて(斎藤史〈さいとう・ふみ〉) 【『痴呆を生きるということ』小澤…

重度身体障害者が独り暮らしを断行/『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』渡辺一史

重度身体障害者が独り暮らしを断行 『往復書簡 いのちへの対話 露の身ながら』多田富雄、柳澤桂子 よもや、活字で「三角山」に出会うとは思わなかった。私は幼少時をこの山の麓(ふもと)で過ごしているのだ。それ以降、苫小牧、帯広と引っ越し、再び札幌の…

思想と理論/『リハビリテーション・ルネサンス 心と脳と身体の回復 認知運動療法の挑戦』宮本省三

リハビリテーションの思想と、イタリアのカルロ・ペルフェッティが提唱する認知運動療法の啓蒙書である。宮本省三の文章は機関銃のように怒りを放っている。畳み込む理論が時に破綻することもある。実に強引極まりない。私は本書を読んで、宮本省三の評価に…

リハビリ〜歩行をイメージする/『脳から見たリハビリ治療 脳卒中の麻痺を治す新しいリハビリの考え方』久保田競、宮井一郎

今読んでいる最中の『マインド・ウォーズ 操作される脳』(ジョナサン・D・モレノ著/久保田競監訳、西尾香苗訳、アスキー・メディアワークス、2008年)の表紙見返しに「脳機能の最高権威 久保田競(京都大学名誉教授)監訳」とあった。その関連で本書を取り…

血に寄り掛かる親/『寝たきり婆あ猛語録』門野晴子

門野晴子は幼い頃、母親から虐待されていた。それでも、介護が必要となった母を自分が引き取ることにした。理由は自分でもわからないという。 とにかく婆さんの偏屈ぶりが凄い。これほどひねくれていれば、もはや笑うしかない領域に達している。著者自身が娘…

年をとると個性が煮つまる/『老人介護 じいさん・ばあさんの愛しかた』三好春樹

三好春樹のエッセイはハズレがない。介護に興味がなくても十分楽しめる。介護従事者であればユーモラスな文章の合い間から深い見識を汲(く)み取ることができる。 老い先が短くなってくると、外面(そとづら)をよくする必要はなくなる。好かれようが嫌われ…

リハビリ革命/『脳のなかの身体 認知運動療法の挑戦』宮本省三

宮本省三の最新刊である。認知運動療法入門といってよい。リハビリ・介護関係者は必読。リハビリの歴史もよく理解できる内容となっている。 認知運動療法はイタリアのカルロ・ペルフェッティが提唱した新しいリハビリテーションだ。宮本省三はリハビリの限界…

ターミナルケアを「医療」の枠にはめるな/『ケアを問いなおす 〈深層の時間〉と高齢化社会』広井良典

介護保険の導入が2000年なので、それを睨(にら)んで執筆したものと思われる。発行から既に10年以上経過しており、時期を逸した感もあるが、それでも有益さが損なわれることはない。 広井良典が説くのは「思想としてのケア」であり、「ケアという行為」から…

早期リハビリの危険性/『リハビリテーション・ルネサンス 心と脳と身体の回復 認知運動療法の挑戦』宮本省三

早期リハビリの危険性に関する情報。ま、参考程度にしてもらいたい。 早期リハビリテーションと称して急性期に早期起立や早期歩行を求めると、脳の自然回復を遅らせる可能性がある。さらに、早期起立や早期歩行は「痙性(spasticity)」という異常な緊張感を…

片麻痺〜利き手でない手で文字を書く/『リハビリテーション 新しい生き方を創る医学』上田敏

脳梗塞など脳血管障害によって片麻痺になる人は多い。以下は、利き腕の側が麻痺になった場合、どのように反対の手で文字を書くかという具体的な手法。これは覚えておいて損はない―― ただ、利き手でない手で字を書くには訓練の順序がある。字を書くときは筆圧…

経頭蓋磁気刺激法(TMS)/『脳から見たリハビリ治療 脳卒中の麻痺を治す新しいリハビリの考え方』久保田競、宮井一郎編著

初心者向けリハビリ最新情報といった内容。さほど勉強にはならなかったが、この検査法は知らなかった。 その代わりによく用いられる方法が経頭蓋(けいとうがい)磁気刺激法(TMS)というやり方です。 電気の代わりに頭皮の上に置いた磁気コイルで磁場を発生…

オムツにしない工夫こそが介護/『老人介護 常識の誤り』三好春樹

入力したテキストを見直していたところ、書き忘れていることに気づいた。ここのところ、読むペースが異様に速い。ちなみに私は、「紙」というテキスト編集ソフトを使用している。 時間の概念を持つのは人間だけだとされている。果たして本当なのだろうか? …

崩壊しつつある介護事業/『失語症者、言語聴覚士になる ことばを失った人は何を求めているか』平澤哲哉

タイトルが衝撃的だ。「貧乏人、金持ちになる」よりも凄いね。介護版『王子と乞食』と言いたいところだが、そんな甘いものではない。平澤は言語聴覚士となった現在も尚、失語症と格闘している。 私が訪問している患者さんの奥さんがこんな話をしてくれました…

巧みな介護の技/『古武術介護入門 古の身体技法をヒントに新しい身体介助法を提案する』岡田慎一郎

DVD付き。岡田慎一郎は古武術を利用した介護を提唱したエキスパート。古武術は甲野善紀に師事している。介護にありがちなのは、介護している側が要介護者の体位移動で腰を痛めることである。同居家族やヘルパー、はたまた看護師に至るまで腰痛を抱える人は多…

『わたしのリハビリ闘争 最弱者の生存権は守られたか』多田富雄

世界的な免疫学者もリハビリ難民に 多田富雄は抑制T細胞を発見した人物で、DNAによる支配に異を唱え、自己生成系としての超(スーパー)システムを唱える免疫学の世界的権威。その傍らで能の創作も行っており、病に倒れた後も続けている。 多田は2001年に脳…

『老人介護 じいさん・ばあさんの愛しかた』三好春樹

これほどエッセイを堪能したのは、古波蔵保好著『男の衣裳箪笥』以来かもね。介護というのは、人生の最終ステージにおける人間ドラマである。それゆえ、誰もが「される側」になったり、「する側」になる可能性がある。 まず、三好春樹氏の顔がいい。どこかで…

『セックスボランティア』河合香織

衝撃的なタイトルだが、中身は「障害者の性」を扱った極めて真面目なルポ。文章も読みやすい。 竹田さんはビデオでこんな言葉を語っていた。 「介護を受けるってことは僕らにとっては最大の屈辱なんだ。我慢してるよ。生きるためにね」 【『セックスボランテ…

『ラブ&フリーク』北島行徳

障害者プロレスを取り巻くそれぞれの人生 副題は「ハンディキャップに心惹かれて」。障害者プロレス第2弾である。 北島の2冊目である。ペンが随分と落ち着いている。障害者と社会の間に存在する欺瞞をぶち壊そうと開始したプロレス興行が波に乗る。すると今…

『無敵のハンディキャップ』北島行徳

荒技で障害者への偏見をぶっ飛ばす 副題は“障害者が「プロレスラー」になった日”。表紙に掲載されている写真を見るとわかるが本物である。正真正銘の障害者の面々だ。小ぶりの写真に何とも言えぬ笑顔の数々が眩しい。 著者が代表を務める障害者プロレス団体…