書評:日本論
孫崎享〈まごさき・うける〉を初めて知ったのは、岩上安身のUSTREAMインタビューでのこと。そのフランクな物腰から元外務官僚であるとは伺い知れなかった。どこから見ても「近所のオジサン」である。実はそこにこの人の凄さがある。仕立ての良さそうなスーツ…
ある時代の常識が、時を経て異様な姿となって現れてくることは決して珍しくない。むしろ多いくらいだ。岸田秀はこれを「共同幻想」としてバッサバッサと斬り捨てている。 岸田によれば「アメリカは強迫神経症(強迫性障害)」で「日本は精神分裂病(統合失調…
林秀彦は、人気テレビドラマ『鳩子の海』や『七人の刑事』の脚本を書いた人物。後に、バラエティショーの司会やFMのディスクジョッキーも務めた。その“テレビ側の人物”が、怒りを込めて完膚なきまでにテレビの毒性を糾弾している。 この本は賛否両論が極端に…
森巣博(もりす・ひろし)はオーストラリア・カジノを拠点とする博徒(ばくと=ギャンブラー)である(森巣は「カシノ」と表記している)。本書のテーマは「日本人論」であるが、自在な筆致はギャンブル哲学を通奏低音とした小説のような味わいもある。 で、…
昨今はやや落ちぶれた感のある本多勝一だが、権力と対峙する姿勢を彼から学んだ人も数多くいることだろう。 ある山国に、跳躍力の並はずれて強い男が現れました。高い塀などらくらく跳び越えます。今でいえば高跳びの選手にんるところでしょう。とにかく村中…
日本の言論界は眠っていた。ジャーナリストは前もって折ったペンで記事を綴っていた。ところが、カレル・ヴァン・ウォルフレンが投じた一石の音に慌てふためき、やっと目が覚めた。そう言ってもいいだろう。責任者のいない日本の権力構造を「システム」と名…
忘れないうちに書いておこう。養老孟司は「われわれの社会では言語が交換され、物財、つまり物やお金が交換される。それが可能であるのは脳の機能による」(『唯脳論』)と書いた。 佐藤●マルクスが解き明かしたことの中でも重要なのが「国家」と「貨幣」の…
佐藤優氏の著書としては『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』に続く第二弾。聞き手は産経新聞社の斎藤勉氏。佐藤氏は、どのような球も鮮やかに打ち返す。しかも、「なぜ、ここに打ったのか」との理由まで示す。圧倒的な知識量と論理力の前に、読者は…
佐藤優氏の著作を読むのはこれで2冊目。ウーム、麻薬のような習慣性に取りつかれそうだ。麻薬じゃマイナスイメージが強いから、「知的強壮剤」と命名しておこう。佐藤氏の言論は、大半の人々に「無知」を自覚させる。しかも、完膚なきまでに。その反動として…
ある種の手品を見ているような気にさせられる本である。出るはずのない場所から鳩が現れたり、こちらが持っている札をピタリと当てられた瞬間に立ち上がって来る驚愕を随所で感じてしまう。手品に使われる道具は――漢字のみである。著者はタネを明かしてみせ…
それなりに読ませる本だ。著者は自ら右翼を名乗る若手オピニオン・リーダー。 前半の国体論には少々辟易させられる。国の構えを論じる場合どうしても防衛という一点を外すわけにはいかないのはわかるが、納得できる説明などしようがないんじゃないか? 根本…
もう何年も前の話になるが、あるテレビ番組で「どういう時に愛を感じるか?」というインタビューを行っていた。実に下らない応答の数々に辟易しつつ、低俗極まりない制作意図を呪いつつも、私の常に7対3でキマッテいる頭髪の下では脳味噌が答えをひねり出そ…