書評:心理
脳は言葉に支配されている。思考が言葉という情報によって成り立っている以上、人は言葉に束縛される。意識とは言語化可能な状態と言い換えてもよいだろう。 懐疑や批判の難しさもここにある。示された言葉【以外】の知識がなければ、そもそも判断のしようが…
ある時代の常識が、時を経て異様な姿となって現れてくることは決して珍しくない。むしろ多いくらいだ。岸田秀はこれを「共同幻想」としてバッサバッサと斬り捨てている。 岸田によれば「アメリカは強迫神経症(強迫性障害)」で「日本は精神分裂病(統合失調…
・『隠れた脳 好み、道徳、市場、集団を操る無意識の科学』シャンカール・ヴェダンタム ・『意識は傍観者である 脳の知られざる営み』デイヴィッド・イーグルマン ・比較トラップ ・不合理性はいつも同じように起こり、何度も繰り返される ・刷り込みやアン…
・予言の自己成就 ・ヒューリスティクスとは 経済学は実に妙ちきりんな学問で、「経済人」という合理的な存在が大前提になっている。しかしながら私は衝動買いをし、読んでいない本が数千冊あってもなお古本を買い漁り、コンビニやスーパーへ行くと常習的に…
・視覚の謎を解く一書 ・道に迷うことは物事を発見するために欠かせないプロセスだ ・盲目の冒険者・耳が聴こえるようになった瞬間の表情 ・色盲の人が初めて色を見た瞬間の感動動画 ・生まれて初めて色を見て咽(むせ)び泣く人々 ・『奇跡の脳 脳科学者の…
・唯幻論の衝撃/『ものぐさ精神分析』岸田秀 ・現代心理学が垂れ流す害毒 ・文明とは病気である ・貧困な性行為 ・ヨーロッパの拡張主義・膨張運動・唯脳論宣言/『唯脳論』養老孟司 ・『神々の沈黙 意識の誕生と文明の興亡』ジュリアン・ジェインズ ・『ユ…
・宗教とは何か? ・唯幻論の衝撃 ・吉田松陰の小児的な自己中心性 ・明治政府そのものが外的自己と内的自己との妥協の産物 ・軍部が強制的に国民を戦争に引きずりこんだというのは誤り・現代心理学が垂れ流す害毒/『続 ものぐさ精神分析』岸田秀 ・『神々…
答えは「睡眠障害」。エ、それだけ? そう、それだけの話だ。序盤で解答が判明するため、これから汗を握ろうとしている手から力が抜ける。構成に難あり。脱力状態。残されているのは冗長な説明。 元々スーザン・A・クランシーは「偽りの記憶」に関する研究を…
組織や他人に服従することは、自分を差し出し、委(ゆだ)ねる行為に他ならず、自分の輪郭が曖昧に溶けてしまう。権威−服従という構造は「役割を与える−役割を与えられる」関係性になっている。つまり、服従とは機能なのである。指示、命令に従い、与えられ…
坂根厳夫訳(創元社、2008年)。「だまし絵」は「トリックアート」ともいう。騙(だま)されていることがわかっているにも関わらず、妙な快感を覚える。騙されても何の被害もないことにもよるが、それ以上に人間が「不思議という意外性」を求めているためだ…
・精神科医がたじろぐ「心の闇」・『良心をもたない人たち 25人に1人という恐怖』マーサ・スタウト ・『累犯障害者 獄の中の不条理』山本譲司 ・『自閉症裁判 レッサーパンダ帽男の「罪と罰」』佐藤幹夫 ・『生ける屍の結末 「黒子のバスケ」脅迫事件の全真…
昔であれば、医師や教師、僧侶はそれなりに世間から尊敬されていたものだ。社会の中で間違いなく教育者的役割を果たしていた。だが今はどうだ。単なる職業へと成り下がってしまった。 「職業だっていいじゃないか」と相田みつをが言いそうだ。「人間だもの」…
一般向けに書かれた催眠療法の入門書である。中盤からは結構難解。 昨今は、科学的な検証性や論理的な整合性を欠いたものを「トンデモ」と嘲笑う風潮が見られるが、少しばかり優(まさ)っている知識に任せて小馬鹿にしているだけのレベルだ。大体が専門バカ…
「陸上自衛隊初の心理幹部」という肩書が気になって読んでみた。なるほど、実践に強そうな人だ。カウンセリングは一歩間違うと、理論の迷宮に入り込んでどんどんクライアントから離れてゆく傾向がある。 ハウツーものっぽい内容だが決して侮れない。私はどち…
・『物語の哲学』野家啓一 ・狂気を情緒で読み解く試み ・ネオ=ロゴスの妥当性について・『新版 分裂病と人類』中井久夫 ・『アラブ、祈りとしての文学』岡真理 ・『プルーストとイカ 読書は脳をどのように変えるのか?』メアリアン・ウルフ ・『神々の沈黙…
インナーマザーとは「内なる母」のこと。虐待、過干渉、ネグレクトなど、さまざまな形で子供の心を踏みにじり、侵略し、遂には変形させる悪魔のような存在だ。親子の姿は支配関係となり、日常的に親が子をコントロールし続ける。プレッシャーに耐え切れなく…
「営業する人々」に共通するのは、“儲かる匂い”を意図的に発している点だ。儲け話――これこそが資本主義社会の通奏低音なのだろう。私ならたちどころに悟る。「お前は俺以上に儲け、お前の会社はもっと儲かる算段に違いない」と。 カウンセラーを長年していま…
時代劇を好むのは年寄りである。ってこたあ、「安心できる倫理観」がそこにあるのだろう。 岸田●私はよく言うんですが、日本のテレビ番組の時代劇は水戸黄門とか、遠山金四郎とか、権力側の代表者が最後に出てきて事件を解決するという筋書きになっているの…
・江原啓之はヒンドゥー教的カルト ・平将門の亡霊を恐れる三井物産の役員 ・死の瞬間に脳は永遠を体験する 「平将門の首塚」だってよ。周辺跡地に大蔵省が建てられることとなったが、工事関係者や大蔵省職員の不審死が相次いだそうだ。 東京・地下鉄大手町…
集中力とは時間を忘れることのできる力だ。つまり、相対性理論から見れば、思考のスピードが光に近づいているといえる。多分。っていうか、そう言いたいんだよ、俺は(笑)。 天才の心の中にひそむ、炎のような情熱と創造への意志は、それ自体ひとつの謎であ…
友岡雅弥の『ブッダは歩むブッダは語る ほんとうの釈尊の姿そして宗教のあり方を問う』で紹介されていた一冊。いくつか紹介する予定だが、まずは友岡本に引用されていた「多幸症(ユーフォリア)」の部分から―― 時代の気分は、薄く浅い「幸せ」に色づいて流…
「霊魂シリーズ」第5弾。これで打ち止め。 苫米地英人は「認識された存在」として霊へのアプローチを試みている。認知科学の立場からすれば、幻聴・幻覚の類いであろうと、本人の脳が認識している以上、「存在するもの」と仮定する。 こうなると、霊はいない…
・ストレスとコミュニケーション ・死線を越えたコミュニケーション 既に絶版となっているため、長文の引用をしておこう。本書の白眉ともいえる箇所だ。「極限状況におけるコミュニケーションの意味」を理解することができる。人は誰かとつながっているから…
・『「疑惑」は晴れようとも 松本サリン事件の犯人とされた私』河野義行 ・『彩花へ 「生きる力」をありがとう』山下京子 ・『彩花へ、ふたたび あなたがいてくれるから』山下京子 ・ストレスとコミュニケーション ・死線を越えたコミュニケーション・『夜と…
私が読んだ途端、絶版になってしまった。さすが古本屋というべきか。ただし、商魂逞しいベッチー先生なんで「オーディオブックCD」の方はまだある。『洗脳原論』の実践編といった内容で硬質な文章。 洗脳とは、「自由に取捨選択できない価値観」ということが…
公安からの依頼を受け、オウム真理教幹部の洗脳を解除したあらましが書かれている。私が読んできたベッチー本の中では最も文章が硬質。例えば、サブリミナル効果を扱ったものではウイルソン・ブライアン・キイの『メディア・セックス』があった。しかしなが…
実にわかりやすい文章である。きっと普段から「わかりやすくあろう」と努めているのだろう。明晰というよりは誠実。患者の前に立つ自分自身に対して自問自答を繰り返す様子すら窺える。この若さで中々できるものではない。 以下の指摘は重要―― そもそも、精…
読んでから随分と時間が経ってしまった。1997年1月発行。今頃出せば、もっと売れていたことだろう。時代を先読みし過ぎた感がある。 岸田秀の言い分は、『ものぐさ精神分析』に尽きており、他の著作は焼き直しに過ぎない。これは本人もそう語っている。「唯…
アメリカ南部では、ダーウィンの『進化論(正式名称は「種の起源」)』を掲載している教科書が採用されないことは知っていた。でもまさか、大人の半分が神による天地創造を信じているとはね。 とはいえ、この説(ダーウィンの自然選択説)を絶対に受け入れな…
順序を間違えた。読み終えたのはこちらが先。『夢をかなえる洗脳力』は、やや宗教色が強いが、こちらはビジネス色が濃い。アプローチの角度を変えて2冊の本を出すのがベッチーの錬金術だ。その商魂の逞しさまで、私には魅力的に見える。「全く商売上手ね〜」…