書評:自伝・評伝
世の中には騙(だま)す人と騙される人がいる。「オレオレ」と電話をする者が騙す人で、慌てて振り込んでしまうのが騙される人だ。当然、騙す側には何らかの意図や狙いがある。騙されるのは常に人がよいタイプだ。ま、判断力を欠いているわけだが。 人は何か…
著者のイーブリン・ブローは、『変化への挑戦 クリシュナムルティの生涯と教え』のDVDでホスト役を務めていた女性である。多分財団関係者だと思われる。映像で観る限りでは、冷ややかな目つきで傲然とした雰囲気を漂わせていた。いけ好かないタイプのおばさ…
・『勝海舟』子母澤寛 ・『青い空』海老沢泰久 ・日清戦争に反対した勝海舟・『海舟語録』勝海舟 ・『武士の娘 日米の架け橋となった鉞子とフローレンス』内田義雄 青春時代の15年間を私は江東区の亀戸で過ごした。道産子ではあったが、生来の口の悪さもあっ…
人が歴史を動かすのか、歴史が人をつくるのか──いずれにしても時代と人は密接につながり、シンクロしてゆく。 世に偉人と言われる人々は、それまでの価値観を一変させた── 歴史を通じて、ごく稀にではあるが伝統に抗した人々がいる。ソクラテス、アインシュ…
「沢村貞子に似ているな」──私が初めてクリシュナムルティの顔を見た時の印象だ。若かりし頃の写真は彫像のように端正でエネルギッシュだ。思わず、「ヨッ、色男!」と声を掛けたくなるほど。 英語のDVDを大野純一の提案でDVDブックにしたようだ。これは正解…
・視覚の謎を解く一書 ・道に迷うことは物事を発見するために欠かせないプロセスだ ・盲目の冒険者・耳が聴こえるようになった瞬間の表情 ・色盲の人が初めて色を見た瞬間の感動動画 ・生まれて初めて色を見て咽(むせ)び泣く人々 ・『奇跡の脳 脳科学者の…
・『メンデ 奴隷にされた少女』メンデ・ナーゼル、ダミアン・ルイス ・幼児虐待という所業 ・悪は目立たず・『3歳で、ぼくは路上に捨てられた』ティム・ゲナール ジェーン・エリオットは4歳の時から17年間にわたって義父から虐待され続けた。はっきりと書い…
・『クリシュナムルティ・目覚めの時代』メアリー・ルティエンス ・『クリシュナムルティ・実践の時代』メアリー・ルティエンス ・核兵器開発の総本山ロスアラモス国立研究所での講話ロスアラモス国立研究所といえばマンハッタン計画である。核兵器の開発は…
・『クリシュナムルティ・目覚めの時代』メアリー・ルティエンス ・クリシュナムルティが放つ光・『クリシュナムルティ・開いた扉』メアリー・ルティエンス 三部作評伝の第二作で、『クリシュナムルティ・目覚めの時代』に続くもの。「プロセス」という悟達…
・クリシュナムルティの人間宣言 ・星の教団解散宣言〜「真理は途なき大地である」・『クリシュナムルティ・実践の時代』メアリー・ルティエンス ・『クリシュナムルティ・開いた扉』メアリー・ルティエンス 神智学協会から「世界教師」と目された青年は、真…
・クリシュナムルティの人間宣言 ・星の教団解散宣言〜「真理は途なき大地である」・『クリシュナムルティ・実践の時代』メアリー・ルティエンス ・『クリシュナムルティ・開いた扉』メアリー・ルティエンス クリシュナムルティをニューエイジに貶めるべきで…
・一読者からクリシュナムルティの料理人となった青年 マイケル・クローネンはドイツで生まれ育ち、高校卒業と同時にアメリカに移り住んだ。そして、23歳でクリシュナムルティと遭遇する―― 1966年、カリフォルニアのサンディエゴでのある運命的な朝、私はJ・…
・アフガンの英雄アフマド・シャー・マスード・『医者、用水路を拓く アフガンの大地から世界の虚構に挑む』中村哲 ・『台湾を愛した日本人 土木技師 八田與一の生涯』古川勝三 この男の風貌は強い何かを私に訴えかけてくる。どうしようもなく惹きつけられる…
告白スタイルの自叙伝としては、宮崎学の『突破者 戦後史の陰を駆け抜けた五〇年』(南風社、1996年/新潮文庫、2008年)、佐藤優の『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社、2005年/新潮文庫、2007年)などに匹敵する内容だ。 前半は貧しい少…
スポーツ選手や職人の言葉が胸を打つのは、思考に身体性が伴っているためであろう。そう。人生とは“行為”なのだ。時に学者の言葉が軽く感じられるのは、私の人生とは無縁な能書きに過ぎないからだ。 イビチャ・オシム。身長191cmの偉容。猫背なのは知性が重…
1959年、ゲバラは親善大使として来日した。12日間の日程に広島訪問は含まれていなかった。なぜか? 1959年革命の成功からわずか半年後の7月、ゲバラは使節団の団長として日本を訪れた。このときゲバラは広島訪問に強くこだわった。日本を訪れたキューバの使…
ヒンズー教は差別という制度を宗教化したものだ。アーリア人をバラモン階級に配することで、インド現地住民との混血を避ける目的もあったとされている。つまり、政治の宗教化とも言えよう。 2500年間という長きにわたって、不可触民の祈りをヒンズー教の神様…
洋の東西を問わず、約1000人になんなんとする人々の死に様が描かれている。死を照射しているが、人物図鑑としても立派に通用する。一人に割いているのは高々半ページほどである。山田風太郎の歴史と人物に対する造詣の深さが圧巻。 ま、とにかく読んでごらん…
雍正帝は清朝の第5代皇帝。在位が1722〜1735年というから、日本の享保年間に当たる。清朝は満州族が立てた王朝で、1644年から1912年までの長きにわたって中国を支配した。 雍正帝は特殊な独裁システムを構築した。信用できなければ、兄弟であろうと容赦なく…
・若き斎藤秀三郎 ・超一流の価値観は常識を飛び越える ・「学校へ出たら斃(たお)れるまでは決して休むな」 ・戦後の焼け野原から生まれた「子供のための音楽教室」 ・果断即決が斎藤秀三郎の信条 ・斎藤秀雄の厳しさ・『齋藤秀雄・音楽と生涯 心で歌え、…
侵略する側は、侵略される側を“人間”とは見なさない。そうでなければ、侵略などできるはずがないのだ。帝国主義・植民地主義は“暴力という名の鎧(よろい)”を身にまとっている。 中南米の大半はスペインの植民地だった。なぜなら、コロンブスがスペイン野郎…
・若き斎藤秀三郎 ・超一流の価値観は常識を飛び越える ・「学校へ出たら斃(たお)れるまでは決して休むな」 ・戦後の焼け野原から生まれた「子供のための音楽教室」 ・果断即決が斎藤秀三郎の信条 ・斎藤秀雄の厳しさ・『齋藤秀雄・音楽と生涯 心で歌え、…
これが冒頭の一文―― 人が革命家になるのは決して容易ではないが、必ずしも不可能ではない。しかし、革命家であり続けることは、歴史の上に革命家として現れながらも暴君として消えた多くの例に徴するまでもなく、きわめて困難なことであり、さらにいえば革命…
アンベードカルは不可触民の権利を守るために、なんとヒンズー教をも攻撃した―― “犬およびインド人立入るべからず”といっているヨーロッパ人クラブに入れてくれとヒンズー教徒が懇願しないのと同様、不可触民以外の全てのヒンズー、犬すら立入りを許可する寺…
・『アンベードカルの生涯』ダナンジャイ・キール ・ガンジーは民族主義者に過ぎなかった ・ガンジーはナショナリスト(民族主義)指導者だった ・若い女性に同衾(どうきん)を命じたガンディー ・暴力を肯定したガンディー・『不可触民 もうひとつのインド…
アンベードカルは巨象の尾を踏んだ。それがどんな事態を招くことになるかを知っていながら。獄中にあったガンディーは国民的人気を利用して、不可触民の分離選挙をトリッキーな方法で妨げた。ハンガーストライキ(死の断食)を強行したのだ。命懸けのパフォ…
不可触民はガンディーの欺瞞を知った。 アンベードカルの要求に対するガンディーの敵意は、インド各地の不可触民に大きな衝撃をあたえずにはいなかった。 全印被抑圧者会議で、ラオ・バハーズール・ラージャは、ガンディーは不可触民問題を正しく伝えておら…
「会議派」とはインド国民会議のこと。第一次世界大戦後、ガンディーが主導権を握り、ネルーが後に続いた。ガンディーは政治家だった。 ・Wikipedia 会議派について、アンベードカルは、「会議派は不可触民の廃止を党員に義務付けていない。ガンディーは不可…
「扉をたたかなければ扉は開かれないだろう」 【『不可触民の父 アンベードカルの生涯』ダナンジャイ・キール/山際素男訳(三一書房、1983年)】 確かにそうだ。そしてアンベードカルは「差別」という扉を、死ぬまでノックし続けた。
・厳格極まる音楽教育・『嬉遊曲、鳴りやまず 斎藤秀雄の生涯』中丸美繪 齊藤秀雄は著名な英語学者・齊藤秀三郎の子息である。戦後は桐朋学園で音楽教育に取り組み、ここから小澤征爾、岩城宏之、秋山和慶など錚々(そうそう)たる音楽家が巣立っていった。 …