書評:SF

瞑想の世界を見ることができる情報機器/『ひとりっ子』グレッグ・イーガン

SFの醍醐味は、科学技術が発達してもなお避けることのできない人間の苦悩を描き出すところにある。未来という舞台設定に映し出されているのは、現代社会が抱える人間の業(ごう)といっていいだろう。 グレッグ・イーガンを初めて読んだ。短篇集である。文章…

暗闇の速度/『くらやみの速さはどれくらい』エリザベス・ムーン

近未来SF。主人公のルウは自閉症である。味わい深い文章であるためスラスラ読み進めることができない。文体とストーリー展開が見事に一致している。稀有。難点はただ一つ。時折、語り手が一人称になったり三人称になっているところ。これが少しわかりにくい…

「末世法華経」/『笑うな』筒井康隆

(『笑うな』所収/徳間書店:絶版、現在は新潮文庫) パロディの精神とはシニシズムなのであろうか。あらゆるものを見下し、自分を高みに置き、鼻で笑って済ます態度を指すのであろうか。私はそうは思わない。笑って達観してみせる知性は、弱きを助け強きを…

『総門谷』高橋克彦

世界の不思議が勢揃いする壮大なスケールの伝奇小説 伝奇小説の金字塔ともいうべき傑作である。 UFOに始まり、ナスカの地上絵、ピラミッド、ストーン・サークル、ピリ・レイスの古地図、極移動説等々。これに、フリーメーソンと自衛隊が絡み、歴史上の人物が…