古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

2001-07-01から1ヶ月間の記事一覧

心を打ってやまない歌〜中島みゆき「ファイト!」

音楽は元々好きな方だが、38歳にもなると新しい音楽を探し出すほどの体力は既に残ってない。最近は、なんとはなしに昔よく聴いた音楽を流している。邦盤だと、メロディ志向で日本語がよく聞き取れるものがよい。 同郷ということもあって中島みゆきを好んで聴…

障害者プロレスを取り巻くそれぞれの人生/『ラブ&フリーク ハンディキャップに心惹かれて』北島行徳

障害者プロレス第2弾である。 北島の2冊目である。ペンが随分と落ち着いている。障害者と社会の間に存在する欺瞞をぶち壊そうと開始したプロレス興行が波に乗る。すると今度は、障害者が自分自身と向き合わざるを得なくなる。身体的な苦痛、将来への不安、家…

標高8848mに解き放つ男の本能/『神々の山嶺』夢枕獏

・『星と嵐』ガストン・レビュファ ・標高8848mに解き放つ男の本能・『狼は帰らず アルピニスト・森田勝の生と死』佐瀬稔 ・『ビヨンド・リスク 世界のクライマー17人が語る冒険の思想』ニコラス・オコネル ・『そして謎は残った 伝説の登山家マロリー発見記…

黄金タッグが追いかけるナチスの残影/『夜と霧の盟約』デイヴィッド・マレル

ひょっとするとこの作品は期せずして生まれたものかも知れない。『ブラック・プリンス』(光文社文庫)のソールとエリカ、そして『石の結社』(光文社文庫)のドルーとアーリーンが本作で顔を合わせる。このアベックが余りにも酷似し過ぎているのだ。海外ミ…

ニュース拾い読み・書き捨て 8

大リーグ・マリナーズのイチローと佐々木が日本の報道機関に対して取材を拒否することを公表した 7月17日付スポーツ報知にも、このことに触れたコラムが掲載されていた。記者側の言い分としては「一部の報道陣の行き過ぎがあったからといって取材拒否という…

コンビニにて

「お箸は何膳おつけしますか?」と訊いてくる店員がいる。買い物の量が多い場合、一瞬、混乱する。「必要な分だけつけてくれよ」と答えるようにしている。 コンビニやファスト・フード店などに見られるマニュアル会話は、このところ、中年の女性店員にまで影…

ナチスに加担した女性の、悲しいほど率直な人生/『朗読者』ベルンハルト・シュリンク

あとがきによれば「ギュンター・グラスの『ブリキの太鼓』以来、ドイツ文学では最大の世界的成功を収めた作品」(週刊誌『シュピーゲル』)だそうだ。『ブリキの太鼓』を読んでないので比較のしようもないが、まあ、それほどでもあるまい。ハッキリ言って苦…

淡白なギャグに挿入される感動/『おたんこナース』佐々木倫子

漫画である。連載中から愛読していた。前々から思っていたのだが、佐々木作品には見事な淡白さがある。今回読んで初めて知ったのだが、北海道の人だったのね。納得。私を筆頭とする北海道人は淡白なのである。なぜか? 歴史が浅いからだ。つまり先祖伝来の怨…

ニュース拾い読み・書き捨て 7

上尾署の警部補自殺 7月9日付朝日新聞夕刊より。この警部補は、会社役員刺殺事件をめぐり、事前に捜査依頼を受けて調べておきながら、引き継ぎを忘れるなど操作を放置したとされる。遺書には「責任をとります」と。自宅で首を吊り、死亡していたのを家族が発…

気高いストイシズムをまとった暗殺者/『石の結社』デイヴィッド・マレル

人は快楽を求めるのと同様、ストイックなものに憧れるのもまた確かであろう。堕落と禁欲は、どこか生と死にも似て、相反するものでありながら、補完し合い、密接につながっている。 主人公のドルーは幼少時に暗殺された両親の復讐を果たすべく、テロ組織「ス…

ニュース拾い読み・書き捨て 6

またしても笑わせてくれる朝日のコラム「ワイドショー政権と参院選」 【朝日新聞 2001年6月30日付】 中央の見出しは“狂熱より理性取り戻すとき”。賢明な読者であれば、これだけで内容を察することができるだろう。小泉首相を「ライオン髪の絶叫」「『構造改…