古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

2008-12-01から1ヶ月間の記事一覧

2008年に読んだ本ランキング

リクエストがあったので、今年読んだ本のランキングを発表しよう。尚、年内いっぱいランキングは更新し続ける予定なので(正式順位は大晦日に確定)、新しい記事は下となってしまうが無視しないでね(今日は12月7日)。それから、便宜的に順位をつけたが、こ…

政治テロで問題は解決できず/『永遠の都』ホール・ケイン

「人間共和」を謳い上げた名作。同じ時期にユゴーの『九十三年』を読んだが、こっちの方がはるかに昂奮した覚えがある。 「しかし、そのような役目(暴君暗殺)を引き受ける人間はです」とデイビッド・ロッシィはいった。「いかなる個人的な復讐の感情にもと…

パソコンの世界は「死」に覆われている/『安全太郎の夜』小田嶋隆

・『我が心はICにあらず』小田嶋隆 ・『安全太郎の夜』小田嶋隆・『パソコンゲーマーは眠らない』小田嶋隆 ・『山手線膝栗毛』小田嶋隆 ・『仏の顔もサンドバッグ』小田嶋隆 ・『コンピュータ妄語録』小田嶋隆 ・『「ふへ」の国から ことばの解体新書』小田…

小田嶋隆関連リンク

新連載とラジオを発見。初めて声を聴いたよ。中々知的な語り口だ。 小田嶋隆のコラム道 ラジオの街で逢いましょう「辛口コラムニストの秘密」 インタビュー:テレビ断末魔の悲鳴を聞いているみたいですよね

マザー・テレサ、神の存在への疑念を手紙に記す

カトリック教会の「聖人」に限りなく近いとされるマザー・テレサ(Mother Teresa)がしたためた私的な手紙が、近日出版される書籍の文中で公表される。この中でマザー・テレサは、自身の信仰の危機、および神の存在への疑念に悩まされていたことが明らかにな…

「博士も知らないニッポンのウラ」が最終回

テレビでは放映できない際どい情報を発信した功績は大きい。最終回は宮崎哲弥、宮台真司、苫米地英人という豪華メンバー。中堅どころの論客としては、これ以上の顔ぶれはない。3人の結論が仏教思想で軌を一にしているところもお見事。宮台真司は眼つきが悪く…

小田嶋隆

1冊読了。 『安全太郎の夜』小田嶋隆/昨年読んだのだが再読。前原政之さんが絶賛している作品だが、私としてはイマイチ。「妖怪ネタ」が全く面白くない。全体的に荒削りではあるが、やはりキラリと輝く文章はそこここにある。特に後半がよい。私が選ぶオダ…

霊は情報空間にしか存在しない/『洗脳護身術 日常からの覚醒、二十一世紀のサトリ修行と自己解放』苫米地英人

「霊魂シリーズ」第5弾。これで打ち止め。 苫米地英人は「認識された存在」として霊へのアプローチを試みている。認知科学の立場からすれば、幻聴・幻覚の類いであろうと、本人の脳が認識している以上、「存在するもの」と仮定する。 こうなると、霊はいない…

劣悪な言論に鉄槌/『読書について』ショウペンハウエル

・劣悪な言論に鉄槌 ・読む=情報処理・『仏教と西洋の出会い』フレデリック・ルノワール 「辛辣な警句」といえば本書の右に出るものはあるまい。100年以上を経た現在も尚、鋭さを失っていない。 さきほど私が期待したような評論雑誌がこのような風潮に対し…

レッテルを貼る人々/『初秋』ロバート・B・パーカー

デタラメな両親に育てられたポール少年をスペンサーが自立させる物語。教育的要素が濃い。ひ弱な少年とマチズモの権化みたいなスペンサーのやり取りが面白い。 (※男性のバレー・ダンサーは皆ホモだと、なぜ両親は言うのか) 「なぜなら、その程度の頭しかな…

エレクトーン奏者maruさん情報

maruさんは、何と素人だった! 後ろ向きで弾く姿(下の動画ね)は、まさしく「神」の名に相応しい。 ニコニコ動画の神インタビュー ニコニコ動画 YouTube maru

広井良典

1冊読了。 『死生観を問いなおす』広井良典/なぜか午前2時半に目が覚め、そのまま読み終えてしまった(今は午前4時半)。こりゃ凄いよ。2008年も残り二日というところで、年間ランキングの番狂わせとなった。さほど期待していなかっただけに、喜びと興奮も…

「笑い」は知的作業/『落語的学問のすゝめ』桂文珍

関西大学での講義を編んだもの。報酬の安さを何度も嘆いているのがご愛嬌。私は上方芸人はあまり好きじゃないのだが桂文珍は例外。この人は、「面白がる力」が図抜けている。 この本で最も有名なのは以下の指摘―― だいたい人間ちゅうのは、悲しい映画を一緒…

下劣を叱咤する名ゼリフ/『スカラムーシュ』ラファエル・サバチニ

活劇ロマンの名作。『モンテ・クリスト伯』に連なる系譜の復讐譚である。芝居がかったセリフが実に面白い。 「きさまは上着の着方や髪の結い方以外に──うん、そうだ、子供や僧侶を相手に武器をもてあそぶこと以外に人生や人間については何も知らないのか? …

あやまちのない人生は味気ない/「橋の下」山本周五郎(『日日平安』所収)

・『一人ならじ』山本周五郎 ・胸打たずにはおかない人生模様の数々 ・あやまちのない人生は味気ない ・つつましい落魄 人生の奥深さを書かせれば、山本周五郎の右に出る作家は、まずいないだろう。哀感はしみじみと、そしてじわりと取り付き、読む者の背骨…

華麗なエレクトーン演奏:「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「スターウォーズ」maru

これは凄い! ただただ唖然とする他ない。大した気にも留めてなかった2曲だが、完全に好きになってしまった。このmaruという女性、演奏している時の上半身の動きが見事で、アスリートのような天性が窺える。 エレクトーン奏者maruさん情報 maru

怨霊の祟り/『霊はあるか 科学の視点から』安斎育郎

科学の視点から霊の存在を検証している。まず冒頭で、霊視詐欺商法や心霊手術に騙された人々の被害状況が述べられている。霊の存在を信じる人達は、金がかかってしようがないね。まったくご苦労なこって。 一番興味深かったのは『医事新報』に掲載されたとい…

胸打たずにはおかない人生模様の数々/『日日平安』山本周五郎

・『一人ならじ』山本周五郎 ・胸打たずにはおかない人生模様の数々 ・あやまちのない人生は味気ない ・つつましい落魄・『松風の門』山本周五郎 本のタイトルは「にちにちへいあん」と読む。11篇が収められた短篇集。武家もの、人情もの、滑稽もの、推理も…

詩人 山本陽子

山本陽子の地平 山本陽子の詩について 山本陽子・参考文献 詩が生れるところ もっと、山本陽子を。 「遙かする、するするながら」 「よき・の・し」

アメリカ軍国主義が日本を豊かにした/『メディア・コントロール 正義なき民主主義と国際社会』ノーム・チョムスキー

・『9.11 アメリカに報復する資格はない!』ノーム・チョムスキー ・近代政府による組織的な宣伝活動 ・アメリカ軍国主義が日本を豊かにした ・ウォルター・リップマンの策略 ・観客民主主義 ・民主主義の新しい革命的な技法=合意のでっちあげ ・「必要な幻…

フィリップ・プルマン

1冊挫折。 『黄金の羅針盤』フィリップ・プルマン/1ページ目の文章、「長いすは客のためにあらかじめひいてあった」で戸惑う。確かに「椅子を引く」という言葉はあるが、果たして小中学生が理解できるだろうか? 例えば、「長いすはいつでも客が座れるよう…

介護従事者の定着につながるのか「09年度介護報酬、3%のプラス改定」

CBニュース 【介護】

介護施設、経営難や人手不足

安佐南区の医療機関「協同診療所」が併設するショートステイ施設を訪ねた。今、月額150万円ずつ赤字が膨らむ。運営には国が定めた基準以上の職員数が欠かせず、人件費が経営を圧迫する。坂本裕専務理事は「国の基準が低すぎる。利用者の生活の質を守るには、…

「冬の詩」/『高村光太郎詩集』

雲取山の山頂付近に雪が見え始めた。丹沢も雪化粧を始めた。冬は嫌いだが、雪は大好きだ。上京してからというもの、雪が舞うと胸が踊る。降る雪と私の瞳の間に故郷(ふるさと)の北海道が立ち現れるのだ。天からの贈り物が、私の奥深くにある感情を刺激して…

ダグラス・R・ホフスタッター

1冊挫折。 『ゲーデル,エッシャー,バッハ あるいは不思議の環』ダグラス・R・ホフスタッター/冗長な前書きで挫ける。中型の辞典くらいのボリュームでこれじゃあ、堪(たま)ったもんじゃないよ。文章のあちこちに自己陶酔が散見され、読み手の読書意欲を…

生産性の追及が小さな犠牲を生む/『知的好奇心』波多野誼余夫、稲垣佳世子

・波多野誼余夫、稲垣佳世子 資本主義という運動会では、皆が皆走り回っている。いや違うな。ともすると、競争原理という言葉が合理を象徴しているように見えるが、実際はもっと残酷だ。足の遅い者が落伍する仕組みなのだから。つまり、資本主義は鬼ごっこな…

野球人・王貞治の悟りと怒り/『回想』王貞治

福岡ソフトバンクホークスの王貞治監督が今シーズンで引退した。WBCの第1回大会で日本チームを優勝に導いたドラマは今尚記憶に新しい。癌ですら、野球に懸ける情熱を阻むことはできなかった。グラウンドに再び立った時の痩せこけた頬は、まぎれもなく修行者…

安斎育郎、山本周五郎

2冊読了。 『霊はあるか 科学の視点から』安斎育郎/科学の視点から霊を読み解く。ややくどい記述はあるものの、そこそこ面白かった。ただ、結論としては養老孟司に軍配が上がる。 『日日平安』山本周五郎/10年ぶりに周五郎を読んだ。涙が噴き出たのは土田…

跳躍する言葉 予測不能なアフォリズム/『蝿の苦しみ 断想』エリアス・カネッティ

友岡雅弥著『ブッダは歩むブッダは語る ほんとうの釈尊の姿そして宗教のあり方を問う』には様々なパラグラフが挿入されているのだが、最も衝撃を受けた言葉がこれ―― 世界の息吹から遠ざけられて、おまえは、息吹どころか風も入らない牢獄に入れられているの…

ジェフリー・S・ローゼンタール

1冊挫折。 『運は数学にまかせなさい 確率・統計に学ぶ処世術』ジェフリー・S・ローゼンタール/まず、表紙がダメ。内容はまあまあなんだが、文章がよくない。冗長。洗練された思想は短い言葉となって表れるものだ。100ページあまりで挫ける。