古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

「IMFの父」はソ連のスパイだった/『秘密のファイル CIAの対日工作』春名幹男

『日本テレビとCIA 発掘された「正力ファイル」』有馬哲夫

 ・「IMFの父」はソ連のスパイだった

『通貨バトルロワイアル』浜田和幸
『世界を操る支配者の正体』馬渕睦夫
『ヴェノナ』ジョン・アール・ヘインズ、ハーヴェイ・クレア


 いやあ、たまげた。だって、IMF国際通貨基金)をつくった人物がソ連のスパイだったって言うんだもの。

 会議は(ハリー・デクスター・)ホワイト(米財務長官首席補佐官)とそのスタッフが牛耳った。詰めの交渉で突然、それまで論議されたこともない項目を協定の中に盛り込み、他国の代表を驚かせたりした。
 結局、IMF協定と国際復興開発銀行世界銀行)協定を含めたブレトンウッズ協定が採択された。ホワイトの構想を基本にケインズ案の特色を加味した内容となった。まさにこれが、戦後の国際的な通貨・金融体制の出発点となった。ホワイトを「IMFの父」と呼んでもよいかもしれない。
 そのホワイトが実はソ連のスパイだったのである。


【『秘密のファイル CIAの対日工作』春名幹男共同通信社、2000年/新潮文庫、2003年)】


 しかしながら問題は、IMF設立に工作の意図があったか否かである。例えば、IMFが具体的にソ連を利した事実はあるのか? それについては何も書かれていない。ウウム、困ったものだ。スパイ合戦が何となく馬鹿げて見えるのは、諜報戦の最終形が「世界各国の大統領をスパイに仕立てる」ところまで行き着いてしまうためだ。


 尚、ハリー・デクスター・ホワイトについては、以下の情報も参照されよ。