書評:世界史

カトリックとプロテスタントの風俗史/『宗教改革の真実 カトリックとプロテスタントの社会史』永田諒一

歴史は海のうねりのようにゆっくりと動く。劇的な変化もよく目を凝らして見れば、長期間にわたって圧力や負荷に覆われていることがわかる。小事が積もり積もって大事へ至る。 中世の宗教改革を社会史の観点から読み解いている。 宗教改革と宗派対立の時代と…

権威者の過ちが進歩を阻む/『科学と宗教との闘争』ホワイト

『ニューステージ 世界史詳覧』浜島書店編集部編 権威者の過ちが進歩を阻む 化物世界誌と対蹠面存在否定説の崩壊 自由とは良心に基いた理性/『思想の自由の歴史』J・B・ビュァリ キリスト教を知るための書籍 驚くべき名著。見事な教科書本である。書かれて…

魔女狩りの環境要因/『魔女狩り』森島恒雄

『思想の自由の歴史』J・B・ビュァリ:森島恒雄訳 魔女は生木でゆっくりと焼かれた 魔女狩りの環境要因 魔女狩りの心情 コロンブスによる「人間」の発見/『聖書vs.世界史 キリスト教的歴史観とは何か』岡崎勝世 キリスト教を知るための書籍 歴史を学ぶこと…

第二次世界大戦の命運を分けた人脈−チャーチル、イントレピッド、ルーズベルト/『アメリカはなぜヒトラーを必要としたのか』菅原出

アメリカ経済界はファシズムを支持した 第二次世界大戦の命運を分けた人脈−チャーチル、イントレピッド、ルーズベルト CIA以前 人が歴史を動かすのか、あるいは歴史が人を育むのか。いずれにしても歴史の先頭に立つ人物が必ずいるものだ。時代の寵児(ちょう…

ソ連がアフガニスタンを侵攻するようにアメリカが誘導した/『そうだったのか! 現代史 パート2』池上彰

『そうだったのか! 現代史』池上彰 ソ連がアフガニスタンを侵攻するようにアメリカが誘導した 目をえぐり取られ、耳をそがれ、手足や性器を切断されたチェチェン人の遺体 湾岸戦争では800トンに上る劣化ウラン弾が使用された パレスチナに関するトピックは…

中国−大躍進政策の失敗と文化大革命/『そうだったのか! 現代史』池上彰

中国−大躍進政策の失敗と文化大革命 戦争と真実 イランはアラブ民族ではない 『そうだったのか! 現代史 パート2』池上彰 教科書には載っていない現代史を池上彰がわかりやすく解説した作品のパート1。今月の課題図書。知っているようで意外と知らないのが現…

大英帝国の発展を支えたのは奴隷だった/『砂糖の世界史』川北稔

大英帝国の発展を支えたのは奴隷だった 『人種戦争 レイス・ウォー 太平洋戦争もう一つの真実』ジェラルド・ホーン 貿易の二大スターは織物と砂糖だそうだ。万人が欲するヒット商品が現れた時、世界はどのように動くかがわかりやすく描かれている。こういう…

ヒトラーに抗議したドイツの学生達/『「白バラ」尋問調書 『白バラの祈り』資料集』フレート・ブライナースドルファー編

映画『白バラの祈り』の資料集。映画のためのタイアップ作品ではなくして、映画制作の過程で調査された内容を元にして新たな解釈を試みる労作である。白バラ入門としては相応しいものではない。それにしても、未來社の活字は読みにくい。講談社文庫よりもダ…

アメリカ経済界はファシズムを支持した/『アメリカはなぜヒトラーを必要としたのか』菅原出

アメリカ経済界はファシズムを支持した 第二次世界大戦の命運を分けた人脈−チャーチル、イントレピッド、ルーズベルト CIA以前 『ヒトラーの経済政策 世界恐慌からの奇跡的な復興』武田知弘 ナチス・ドイツというファシズム国家を誕生せしめたのはアメリカだ…

「貧しいユダヤ人」だけがナチスに殺された/『新版 リウスのパレスチナ問題入門 さまよえるユダヤ人から血まよえるユダヤ人へ』エドワルド・デル・リウス

物語には作者が存在する。そして、物語には意図が託されている。ユダヤ人を取り巻く物語は、ユダヤ人が創作したものが殆どで、脚色のレベルを超えて歴史捏造(ねつぞう)の領域に達している。 シオニズムというペンで書かれた物語を流布させたのはロスチャイ…

神様やヒーローを待ち望んではいけない/『不可触民の父 アンベードカルの生涯』ダナンジャイ・キール

ヒンズー教は差別という制度を宗教化したものだ。アーリア人をバラモン階級に配することで、インド現地住民との混血を避ける目的もあったとされている。つまり、政治の宗教化とも言えよう。 2500年間という長きにわたって、不可触民の祈りをヒンズー教の神様…

歴史とは何か/『世界史の誕生 モンゴルの発展と伝統』岡田英弘

『〈狐〉が選んだ入門書』山村修 世界史は中国世界と地中海世界から誕生した 歴史とは何か 歴史文化に不可欠なものは暦と文字 インドに歴史文化がない理由 『歴史とは何か』E・H・カー 『歴史とはなにか』岡田英弘 物理学的観点からすれば、絶対的な位置も絶…

世論は当てにならない/『雍正帝(ようせいてい) 中国の独裁君主』宮崎市定

雍正帝は清朝の第5代皇帝。在位が1722〜1735年というから、日本の享保年間に当たる。清朝は満州族が立てた王朝で、1644年から1912年までの長きにわたって中国を支配した。 雍正帝は特殊な独裁システムを構築した。信用できなければ、兄弟であろうと容赦なく…

侵略者コロンブスの悪意/『わが魂を聖地に埋めよ アメリカ・インディアン闘争史』ディー・ブラウン

コロンブスが最初の航海に出たのは1492年のこと。当時、地球は丸いと考えられていたが、実際に確認した者はいなかった。中々陸地に到着せず、乗組員が暴動を起こした。彼等は地球が平らな世界だと思っていた。きっと帰れなくなることを恐れたのだろう。 この…

コロンブスによる「人間」の発見/『聖書vs.世界史 キリスト教的歴史観とは何か』岡崎勝世

魔女狩りの環境要因/『魔女狩り』森島恒雄 コロンブスによる「人間」の発見 キリスト紀元の誕生は525年 「レメクはふたりの妻をめとった」 化け物とは理性を欠いた動物 世界の構造は一人の男によって変わった/『「私たちの世界」がキリスト教になったとき …

魔女は生木でゆっくりと焼かれた/『魔女狩り』森島恒雄

魔女は生木でゆっくりと焼かれた 魔女狩りの環境要因 魔女狩りの心情 12世紀にカトリック教会は異端審問を始める。教会に歯向かう者は叩き潰しておくに限るってわけだ。キリスト教における神は絶対的な存在である。人間は「神に似せてつくられた」存在であり…

世界史は中国世界と地中海世界から誕生した/『世界史の誕生 モンゴルの発展と伝統』岡田英弘

『〈狐〉が選んだ入門書』山村修 世界史は中国世界と地中海世界から誕生した 歴史とは何か 歴史文化に不可欠なものは暦と文字 インドに歴史文化がない理由 『歴史とは何か』E・H・カー 『歴史とはなにか』岡田英弘 これまた、8月に読み終えていた。血沸き肉…

生き生きとした人物描写と興味深いエピソードで読ませる/『戦争報道の内幕』フィリップ・ナイトリー

翻訳に際して数章ほど割愛したとのことだが、それでも十分な厚さ。資料としても耐え得る量でありながら、きちんとした読み物になっているところが凄い。1854年から1975年に至るまでの戦争(クリミヤ戦争からベトナム戦争まで)をフォローした労作。 マルタ遠…

善は急げ、遅いのは悪だ/『夜』エリ・ヴィーゼル

私たちは目から鱗が落ちたが、もう遅すぎた。 【『夜』エリ・ヴィーゼル(みすず書房、1995年)以下同】 ルワンダ大虐殺と同じ光景がここにも。「まさか……」「よもや……」「いくら何でも……」――そんな人々の声が聞こえてきそうだ。『夜』でエリ・ヴィーゼルが…

『傭兵の二千年史』菊池良生

古代ギリシャ都市国家の軍隊は「市民軍」が中核であった。市民にとって兵役は直接税のようなもので、武器も装備も自弁で、都市の共同体成員としての無償の愛国的献身であった。少なくとも初期はそうだった。ところで、ここで言う市民とは、例えば都市国家ア…

『攻防900日 包囲されたレニングラード』ハリソン・E・ソールズベリー

歴史に厳然とそびえる不屈の民衆劇 決して面白い本ではない。事実を一つひとつ積み重ねることによって全貌を現す労作業が、異様な重さとなって読者に覆い被さる。ドイツ軍に包囲されたレニングラードを舞台に、第二次大戦における独ソの熾烈な戦闘が克明に綴…