古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

2009-02-01から1ヶ月間の記事一覧

インド、チベットに伝わるイッサ=イエス伝説/『イエスの失われた十七年』エリザベス・クレア・プロフェット

イエスの人生は13歳から30歳に至る記録がまったくないそうだ。キリスト教では「エジプトへ行っていた」としているらしいが何一つ証拠がないとのこと。ところがこの間、アジアへ行った形跡がある。過去に3人の人物がチベットで「イッサ=イエス」にまつわる経…

アンベードカルの名言/『不可触民の父 アンベードカルの生涯』ダナンジャイ・キール

「扉をたたかなければ扉は開かれないだろう」 【『不可触民の父 アンベードカルの生涯』ダナンジャイ・キール/山際素男訳(三一書房、1983年)】 確かにそうだ。そしてアンベードカルは「差別」という扉を、死ぬまでノックし続けた。

『晩年に想う』アルベルト・アインシュタイン/中村誠太郎、他訳(日本評論社、1950年)

宗教なき科学は不完全であり、科学なき宗教にも欠陥がある。 晩年に想う

ニコラス・ハンフリー

1冊読了。 30冊目『内なる目 意識の進化論』ニコラス・ハンフリー/垂水雄二訳(紀伊國屋書店、1993年)/トール・ノーレットランダーシュ著『ユーザーイリュージョン 意識という幻想』よりも9年前に発行されている。ノーレットランダーシュを読んだ人なら物…

厳格極まる音楽教育/『齋藤秀雄・音楽と生涯 心で歌え、心で歌え!!』民主音楽協会編

・厳格極まる音楽教育・『嬉遊曲、鳴りやまず 斎藤秀雄の生涯』中丸美繪 齊藤秀雄は著名な英語学者・齊藤秀三郎の子息である。戦後は桐朋学園で音楽教育に取り組み、ここから小澤征爾、岩城宏之、秋山和慶など錚々(そうそう)たる音楽家が巣立っていった。 …

不可触民は立ち上がった アンベードカルは先頭に立った/『不可触民の父 アンベードカルの生涯』ダナンジャイ・キール

飲み水を奪われた不可触民は遂に立ち上がった。アンベードカルはその先頭に立った―― 大会初日、数人のカーストヒンズー有志も演説し、被抑圧階級の権利を認め、援助を約した。その夜、大会委員会は出席した上位カースト・リーダーたちの意向を汲み、チャオダ…

『嬉遊曲、鳴りやまず 斎藤秀雄の生涯』中丸美繪(新潮社、1996年)

チェリストから指揮者へ転身し、やがて小沢征爾、藤原真理ら世界的音楽家を育てあげた斎藤は、その頑固な性格と鬼気迫る指導で誰もが恐れをなした天才的教育者だった。家庭内の問題や周囲との対立をよそに、子供の音楽教育にも情熱を注いだ執念の源とは。戦…

ガンディーはカースト制度の信奉者であった/『不可触民の父 アンベードカルの生涯』ダナンジャイ・キール

歴史は粉飾される。目一杯化粧を施し、ロンドンブーツを履き、更に竹馬に乗ることも珍しくない。嘘と欺瞞と修正主義がセットメニューになっている。歴史とは権力者の都合次第で書き換えられる物語だ。 ガンディー、アンベードカルは全く異った形で不可触民解…

『歓喜の街カルカッタ』ドミニク・ラピエール/長谷泰訳(河出書房新社、1987年)

歓喜の街カルカッタ(上) 歓喜の町カルカッタ(下) 『パリは燃えているか?』の著者が、マザー・テレサの国インドで体験した、愛とヒロイズムの大型ノンフィクション。 この街には、西欧の豊かな町のどこよりも、ヒロイズム、思いやり、そして喜びと幸福が…

「同じ列車に乗ることはない」SION

YouTubeで偶然見つけた歌手。福山雅治が熱烈なファンだってさ。度肝を抜く声は、まるでトム・ウェイツが浪曲を唸っているような印象。曲調がどことなくソ連のウラジミール・ヴィソツキーに似ている。妙に後を引く不思議な声だ。 SION(シオン)

世界の金融システムは実質的に崩壊した=ソロス氏

著名投資家のジョージ・ソロス氏は20日、世界の金融システムは実質的に崩壊した、とし、危機が短期間で解決する可能性は見えていない、と述べた。 ソロス氏は米コロンビア大学で、動揺は大恐慌時よりも大きい、との見方を示し、現状をソビエト連邦の崩壊に例…

S・J・ローザン

1冊読了。 29冊目『ピアノ・ソナタ』S・J・ローザン/直良和美〈なおら・かずみ〉訳(創元推理文庫、1998年)/シェイマス賞なんてのがあったんだね。さほど期待はしていなかった。表紙がどことなく『A型の女』(マイクル・Z・リューイン)を思わせた。物語…

不可触民=アウトカースト/『不可触民の父 アンベードカルの生涯』ダナンジャイ・キール

・不可触民=アウトカースト ・ガンディーはカースト制度の信奉者であった ・不可触民は立ち上がった アンベードカルは先頭に立った ・アンベードカルの名言 ・ガンディーは不可触民制撲滅運動を起こしていない ・アンベードカルに対するガンディーの敵意 ・…

サラエボ紛争を生き抜いた子供達/『失われた思春期 祖国を追われた子どもたち サラエボからのメッセージ』堅達京子

はっきり書いておこう。作品としてはイマイチだ。だが、サラエボの子供達の言葉の数々は一読に値する。否、そのためだけに対価を支払ったとしてもお釣りが来る。 「そしてぼくは、ぼくらの国の言葉で書かれ、ぼくらの国の俳優が演じているこの作品を、サラエ…

「孤独な詩人」忌野清志郎

どんとの曲を清志郎が歌っている。2006年1月に開催された「どんと紅白」というステージ。自家薬籠中の物とした観がある。ローリング・ストーンズの「Like a Rolling Stone」を彷彿とさせる。ソウルフルなバラードが魂をビリビリさせる。是が非でも清志郎のCD…

挨拶のできない人々

仕事上で様々な企業や店舗へ行くが、挨拶のできない人を時折見かける。私は声が大きいので、聞こえないということは考えにくい。「多分忙しいのだろう」「きっと心に余裕がないのだろう」と思うように努力しているのだが、あまり上手くゆかない。 私の実家は…

えひめ丸事故で「やむなく沈没」 閣僚経歴に絡み笹川氏発言

自民党の笹川尭総務会長は24日夜、都内で開かれた党参院議員のパーティーであいさつし、平成13年に起きた米原潜と実習船えひめ丸の衝突事故への対応で退陣に追い込まれた森内閣で閣僚を務めた自らの経歴に触れ、「ゴルフをやっていて閣僚を首になったわけで…

犬養道子著『一億の地雷 ひとりの私』(岩波書店、1996年)は間違いだらけ

田中一生

進化する進化論 米国事情

創造説のナンセンスな変異 《G・ブランチ/E・C・スコット(全米科学教育センター)》 生物は進化したのではなく、クリエーターたる神が創造した……。米国では創造論者たちが依然として公立学校での進化教育に反対する運動を続けている。創造説を進化論に代わ…

依法不依人/『仏教とキリスト教 イエスは釈迦である』堀堅士

・宗教は人を殺す教え/『宗教の倒錯 ユダヤ教・イエス・キリスト教』上村静 ・インドのバラモン階級はアーリア人だった ・依法不依人・偶然性/『宗教は必要か』バートランド・ラッセル ・キリスト教を知るための書籍 いやあ、たまげた。これほど興奮を掻(…

巨大な建造物は人間の不安を写している/『アウステルリッツ』W・G・ゼーバルト

こんな文章が延々と続く。改行もないままで―― 駅舎建築を研究していると、と午後遅くハントスフーン・マルクトにあるカフェのテラス席で歩き疲れた足を休めているあいだにもアウステルリッツは語った。別離の苦悩と異郷への恐怖という考えがなぜか頭にこびり…

『人間の崩壊 ベトナム米兵の証言』マーク・レーン/鈴木主税訳、鶴見良行解説(合同出版、1971年)

これでも人間か! 人間はこうもなり得るのか? もはや人間ではない。崩壊だ! 崩壊が、あなたとわたしを包む同じ文明、同じ時間の中で起こってる! この本は公刊に際し、非常な勇気と決意を必要とした。権力に対する、最も強烈な告発の書だったからだ。読者…

仏教はもっともドグマから遠い教え/『ブッダ入門』中村元

インディラ・ガンジーは、インド初代首相ネルーの娘。1984年、護衛兵をしていたシーク教徒の凶弾に斃(たお)れた。 私は、インドのインディラ・ガンジー首相がお亡くなりになる2週間ほど前に何度かお会いしました。ちょうどその時、「仏教および国民文化に…

戦時中、日本兵は中国人を食べた/『戦争と罪責』野田正彰

本書もどんどん紹介してゆきたいのだが滞ってしまっている。 日本兵による鬼畜の如き行為がいくつも出てくるが、これには唖然とした―― また自白できることと、決して自白できないことがある。一人ひとりの脳裏を、自白できない罪行が掠めていった。いかに上…

間宮陽介

1冊挫折。 挫折10『市場社会の思想史 「自由」をどう解釈するか』間宮陽介(中公新書、1999年)/新書だと思ってなめてかかったのが失敗。結構難解。20ページほどで挫ける。経済学はアダム・スミスの『国富論』に始まるが、ケインズ理論から現代に至る経済学…

日蓮の『立正安国論』/『鎌倉佛教 親鸞と道元と日蓮』戸頃重基

日蓮の思想は右翼に利用されてきた歴史がある。 ところで、北(一輝)、石原(莞爾)両者とも熱烈な日蓮信者であったわけだし、後述する井上日召も日蓮宗僧侶であった。日本の「右翼」とされる人物には日蓮信者が多い。 【昭和の右翼思想について】 我々は(…

G・H・ハーディはラマヌジャンを警戒した/『無限の天才 夭逝の数学者・ラマヌジャン』ロバート・カニーゲル

ハーディは当代きっての数学者であった。しかし、このケンブリッジ大学教授ですら、ラマヌジャンの数学理論を「狂人のたわごと」程度にしか思っていなかった。ハーディ以外の数学者にもラマヌジャンは手紙を出していたが、誰一人としてまともに扱おうとする…

社内主義から社外主義への転換/『スーパーサラリーマンは社外をめざす』西山昭彦

・社内主義から社外主義への転換・『制度と文化 組織を動かす見えない力』佐藤郁哉、山田真茂留 ビジネス書ではあるが、日本人の内向性を見事に言い当てている。組織の内側に向かうエネルギーが、企業から体力を奪い取っている。 この数年間、多くの企業の部…

「上を向いて歩こう」坂本九、近藤房之助、忌野清志郎

同じ曲でありながら、それぞれカントリー、ブルース、ロックンロールという味つけの違い。歌手の力量が、歌の力を見事に引き出している。近藤房之助の声の表情と陰影、忌野清志郎のねばっこくからみつくようなヴォーカルが圧巻。

イェーリング、森本哲郎

1冊挫折、1冊読了。 挫折9『権利のための闘争』イェーリング/私が読んだのは小林孝輔、広沢民生訳(日本評論社、1978年)。28ページで挫ける。傲慢な保安官を思わせる文体にウンザリ。1872年に行った講演の原稿が元になっているとのこと。先住民(インディ…