書評:コラム

ハサミの値札の法則〜報道機関は自分が当事者になった事件の報道はしない/『たまには、時事ネタ』斎藤美奈子

コラムに必要なのは常識である。ステレオタイプ、決まり文句、故事成語、典型を弁えればこそ、そこから距離を取ることができる。であるからして、コラムニストは冷めた傍観者でなければならない。時事問題を鮮やかな手並みで料理し、微妙なスパイスを利かせ…

議席を相続する二世議員/『かくかく私価時価 無資本主義商品論 1997-2003』小田嶋隆

政治家の世襲が問題視されている。今までの批判とは異なっていて与野党内からも大きな声が上がっている。な、な、なんと、“世襲の権化”ともいうべき鳩山邦夫総務相(当時)まで叫んだ―― 政界の名門、鳩山家4代目の鳩山邦夫総務相は24日の記者会見で民主党の…

和田アキ子という代理オヤジ/『テレビ標本箱』小田嶋隆

テレビを観なくなってから一年ほど経過している。いや一年は大袈裟だな。9ヶ月くらいか。この間に観たのは、NHKスペシャル1回のみである。既にスイッチを入れないというレベルではなくて、コンセントが抜きっ放しになっている有り様だ。我が家にあってテレビ…

公共の空間に土足のままで入り込む携帯電話/『仏の顔もサンドバッグ』小田嶋隆

「面倒な本」がある。小難しい言葉、すっきりしない文章、専門用語の濫用(らんよう)――明晰(めいせき)になっていない思考が文章に表れる。難解な文章は知性の敗北であると私は思っている。この際、私の理解力については不問に付しておこう。面倒な本を読…

駄洒落炸裂/『「ふへ」の国から ことばの解体新書』小田嶋隆

小田嶋隆は駄洒落が上手い。下ネタともなると超絶的な技巧が冴える。この際、当ブログの品位をかなぐり捨てて、抱腹絶倒の駄洒落を紹介しよう。解説はするまい。黙って笑ってくれ給え―― さすがに、コンドームの自販機がしゃべるのはまだ聞いたことがないが、…

亀田大毅とメディアの豹変/『テレビ救急箱』小田嶋隆

テレビはいつだって「利用できる人」を探している。少しばかり注目が集まると、直ぐにハシゴをかける。で、雲行きが怪しくなった途端、ハシゴを外してみせるのだ。 (※亀田)大毅の態度は擁護できない。容認もできない。が、パンチは、自分に返って来る。ボ…

小田嶋隆の正論/『安全太郎の夜』小田嶋隆

宮崎勤に関する報道のあり方に疑義を呈したテキスト。小田嶋隆の気骨が窺える。 Wikipedia プロファイル研究所 宮恕W勤幼女連続殺人事件 「異常だ」 という人もいるかもしれない。 「気味が悪い」 と思う人もいるだろう。 が、こういう状態(私の部屋、ミヤ…

パソコンの世界は「死」に覆われている/『安全太郎の夜』小田嶋隆

ま、進化のスピードが極端に速いってな話だ。本当は宮崎勤の件(くだり)を紹介したかったのだが、本日分のスペースが長大になってしまうため、後日披露しよう。 真面目な話、有為転変の激しいこの(※パソコンの)世界にいると、つくづく「死」というものに…

襲い掛かる駄洒落の嵐/『かくかく私価時価 無資本主義商品論 1997-2003』小田嶋隆

前作の『無資本主義商品論 金満大国の貧しきココロ』と比較すると、明らかに駄洒落ネタに舵を切っている形跡がある。内容はやや軽め。それでも、秀逸なる警句の類いはそこここに散りばめられている。 まあ、黙って堪能するがいい―― 小渕恵三 この度の自民党…

私鉄不動産複合体財閥企業がつくった東京の山の手/『山手線膝栗毛』小田嶋隆

私は今から20年ほど前に上京したのだが、まず驚かされたのは東京という巨大な街の格差であった。もうね、電車の種類によって、着ているものから顔つきまでが違っているのよ。新玉川線(現在は東急田園都市線)=ブティック、東武亀戸線=洋品店ってな感じだ…

アナログの意味/『コンピュータ妄語録』小田嶋隆

コンピュータ用語の辞典。これは本の体裁がダメ。新書版サイズの辞書として作るべきだ。そうすりゃ、騙されて購入する人々も増えたことだろう。驚いたことにネタ満載と思いきや、まともな辞書としても使える内容となっている。惜しむらくは既に古い情報とな…

精神障害者による犯罪の実態/『偽善系II 正義の味方に御用心!』日垣隆

日垣隆の様々なコラムが詰まった一冊。いずれも、しっかりしたデータを引用した上で検証されており、正確を期している。今時、珍しい姿勢だ。まるで、記者クラブ制度に甘んじている新聞社を嘲笑しているような気配すら窺える。そんでもって、タブーに切り込…

小田嶋隆による『広告批評』批判 その三/『罵詈罵詈 11人の説教強盗へ』小田嶋隆

小田嶋隆による『広告批評』批判 その一/『罵詈罵詈 11人の説教強盗へ』小田嶋隆 小田嶋隆による『広告批評』批判 その二/『罵詈罵詈 11人の説教強盗へ』小田嶋隆 これで最後。小田嶋隆の結論は鋭い。横に薙(な)いだ刀で、広告宣教師・天野祐吉の上半身…

小田嶋隆による『広告批評』批判 その二/『罵詈罵詈 11人の説教強盗へ』小田嶋隆

小田嶋隆による『広告批評』批判 その一/『罵詈罵詈 11人の説教強盗へ』小田嶋隆 彼は『広告批評』という雑誌を創刊した。 そして、テレビの画面や、雑誌の誌面や、講演の舞台の上でも、繰り返し繰り返し、広告の効用を説いてきた。 言って見(ママ)れば、…

小田嶋隆による『広告批評』批判 その一/『罵詈罵詈 11人の説教強盗へ』小田嶋隆

「その三」まで続く予定。ご存じのように『広告批評』という雑誌を主宰したのは天野祐吉だった。何を隠そう私も昔っから嫌いだった。あの飄々とした文章や物腰は、悪意を封印する目的があったと推察している。結論は常に断定を避け、善悪をウヤムヤにしてい…

ハゲ頭に群がるカツラメーカー/『無資本主義商品論 金満大国の貧しきココロ』小田嶋隆

コンプレックスを後ろ手に捻(ひね)り上げたような商売は多い。チビ・デブ・おたんこなす・ホクロ・ムダ毛・一重まぶた・ペチャパイ・口臭体臭・包茎・勃起不全など、数え上げればキリがない。そして、これらの筆頭格がハゲであることは衆目の一致するとこ…

キャプテン・クランチという名のハッカー/『「ふへ」の国から ことばの解体新書』小田嶋隆

小田嶋隆の得意技に「企業批判」がある。いずれの場合も、大手企業を名指しでコテンパンにこき下ろしている。多分、ジャーナリスティックな文章を書こうと思えば、いつでも書けるのだろう。しかし、声高な主張は耳障りだ。そして、正しければ正しいほど、人…

戦争は「質の悪いゲーム」だ/『パソコンゲーマーは眠らない』小田嶋隆

3分の1ほどがゲームソフトのレビューだ。それでも、ゲームにまるで関心のない私に読ませるのだから、オダジマンのペン先の鋭さには恐れ入ってしまう。 小田嶋隆の著作を読むと必ずと言っていいほど反戦志向が窺える。だがそれは、ありきたりな平和論とは全く…

効率化が仕事量を増やす/『仏の顔もサンドバッグ』小田嶋隆

小田嶋隆の著作を読むと頭がスッキリする。目からウロコが落ち、脳細胞のシナプスが活発になる。そして、ガハハハと笑っているうちに、オダジマン教の信者となってしまう。 大衆消費社会は広告戦略によって購買意欲を刺激するのが常だが、企業内においては経…

極端な定型化が笑いを誘う/『山手線膝栗毛』小田嶋隆

小田嶋隆と丸山健二の共通点は、極端な定型化(ステレオタイプ)を描くことで笑いを誘っているところだ。この作品は、山手線の全ての駅にまつわるエッセイ集で、東京の断面図が鮮やかに描かれている。 仮に、池袋、高田馬場、目白の三つの町を三姉妹と仮定し…

若手芸人の役回りはイジメ被害者の「モガキ」/『テレビ救急箱』小田嶋隆

私は高校生の頃から、30歳過ぎまで殆どテレビを見てこなかった。そのため、社会から懸け離れてしまうことを恐れて、新聞の番組表だけはしっかりと読んできた。それで困ったことといえば、何一つない。多分、得していることの方が多いことだろう。 テレビとい…

『テレビ標本箱』小田嶋隆

小田嶋隆がナンシー関の衣鉢を継ぐことを試みた作品。残念ながら私はナンシー作品を一冊も読んでない。それにしても、小田嶋隆の目のつけどころと、説明能力の高さには、いつもながら驚かされる。オタクの視線が社会と時代に向けられると、諸問題をカミソリ…

『偽善系II 正義の味方に御用心!』日垣隆

前作『偽善系やつらはヘンだ!』よりもパワーアップ。精神障害者による犯罪、日本人の死に方、佐高信批判、田中知事誕生以前の腐敗しきった長野県政(長野五輪の予算の使われ方は、官僚の感覚が窺える貴重な資料)、書評、買い物日誌と、てんこ盛りの内容。…

『偽善系 やつらはヘンだ!』日垣隆

日垣氏は『「買ってはいけない」は嘘である』で名を馳せた人物。左翼系人権派をこき下ろしたコラムが多いが、決して右寄りではない。ここがミソ。徹底した取材を基にして、「普通の感覚」で切り捨てている。後味が悪くないのはそのためだ。社会問題、少年法…

「地の塩の箱」/『昭和の根っこをつかまえに』北尾トロ

理想と絶望のはざまを生きた詩人を追跡 このシリーズはオンライン・テキストで公開されている。飄々としたポップな文体で知られる北尾が、ややジャーナリスティックな構えで、平成に生き残る“昭和の根っこ”を捉えた作品。いずれの対象も“残滓(ざんし)”と軽…