古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

1999-11-01から1ヶ月間の記事一覧

リング上での崇高な出会い/『彼らの誇りと勇気について 感情的ボクシング論』佐瀬稔

格闘技に魅了される心理は何によって支えられているのだろう? 心の裡(うち)でスポーツとはまた違った次元の衝動に、激しく揺り動かされるものの正体は何なのだろう? 知性と暴力が生み出す計算された攻撃、一歩踏み外せば直ぐそこにある死の予感、肩書な…

『現代作家100人の字』石川九楊

文字を読む──言葉の意味を探るのではなく、筆跡を読む。線の一本一本に込められた“何か”を読み取ろうと丹念に注がれる視線は、点の打ち所をも見逃さない。京都芸術短大講師を務める書家が、現代作家100人の文字を眼光鋭く洞察する。写真を含めてわずか一ペー…

子供の詩

眼に映らないものを大切にしたい。顔で笑って心で泣いている、そういう人の悲しみを汲(く)んで上げられる自分でありたい。一粒の種に、大樹と育つ可能性の全てが備わっている。だが、それは見えない。木枯らしに震える枝は丸裸に見える。しかし、内部では…

もったいない/『落語的学問のすゝめ』桂文珍

時代が飽食と呼ばれ久しく時を経たある頃、清貧と名の付いた本がベストセラーになった。「もったいない」と言う人が少なくなったと嘆く声をよく耳にしたものだ。環境問題に関心の高い人は、割り箸なんかに「もったいない」と思うんでしょうね。貴重な森林資…