書評:戦争

戦争で異形にされた人々/『戦争に反対する戦争』エルンスト・フリードリッヒ編

第一次世界大戦の写真集である。粒子が粗(あら)くて見にくい。だからこそ我々は、異形と化した兵士を辛うじて見つめることが可能になる。彼等の顔は原型を思い描くことができないほどズタズタになり、窪み、一部を吹き飛ばされている。 スーザン・ソンタグ…

戦争と写真/『他者の苦痛へのまなざし』スーザン・ソンタグ

スーザン・ソンタグの本を初めて読んだ。凄い。柔軟さとしなやかさが強さであることを示している。当初、「鞭のようだ」と思った。が、それは正確ではない。衣(ころも)のように包み込み、水のごとく浸透する、と言うべきか。 彼女は揺らぐ。バランスをとる…

アフガニスタンの砂漠を緑に変えた男/『医者、用水路を拓く アフガンの大地から世界の虚構に挑む』中村哲

『マスードの戦い』長倉洋海 アフガニスタンの砂漠を緑に変えた男 百の診療所よりも一本の用水路 食糧不足と脱水症状で死んでゆくアフガニスタンの子供たち 台湾の教科書に載る日本人・八田與一/『台湾を愛した日本人 土木技師 八田與一の生涯』古川勝三 ア…

米兵は拷問、惨殺、虐殺の限りを尽くした/『人間の崩壊 ベトナム米兵の証言』マーク・レーン

『ベトナム戦記』開高健 米兵は拷問、惨殺、虐殺の限りを尽くした 米国の不快な歴史 『動くものはすべて殺せ アメリカ兵はベトナムで何をしたか』ニック・タース 『アメリカの国家犯罪全書』ウィリアム・ブルム 『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の…

近藤道生と木村久夫/『きけ わだつみのこえ 日本戦没学生の手記』日本戦没学生記念会編

戦地で活字に飢える 近藤道生と木村久夫 知覚の無限 酔生夢死 昨日、あるお客さんから新聞の切り抜きを手渡された。「後で読んでよ」と。昼休みに目を通した。日本経済新聞で連載されている「私の履歴書」だった。書き手は博報堂最高顧問の近藤道生(こんど…

サラエボ紛争を生き抜いた子供達/『失われた思春期 祖国を追われた子どもたち サラエボからのメッセージ』堅達京子

はっきり書いておこう。作品としてはイマイチだ。だが、サラエボの子供達の言葉の数々は一読に値する。否、そのためだけに対価を支払ったとしてもお釣りが来る。 「そしてぼくは、ぼくらの国の言葉で書かれ、ぼくらの国の俳優が演じているこの作品を、サラエ…

戦時中、日本兵は中国人を食べた/『戦争と罪責』野田正彰

本書もどんどん紹介してゆきたいのだが滞ってしまっている。 日本兵による鬼畜の如き行為がいくつも出てくるが、これには唖然とした―― また自白できることと、決して自白できないことがある。一人ひとりの脳裏を、自白できない罪行が掠めていった。いかに上…

バブル時代の多幸症(ユーフォリア)/『戦争と罪責』野田正彰

友岡雅弥の『ブッダは歩むブッダは語る ほんとうの釈尊の姿そして宗教のあり方を問う』で紹介されていた一冊。いくつか紹介する予定だが、まずは友岡本に引用されていた「多幸症(ユーフォリア)」の部分から―― 時代の気分は、薄く浅い「幸せ」に色づいて流…

戦地で活字に飢える/『きけ わだつみのこえ 日本戦没学生の手記』日本戦没学生記念会編

戦地で活字に飢える 近藤道生と木村久夫 知覚の無限 酔生夢死 二十歳(はたち)前後に読んでおくべき一冊。同世代の青年が戦地で何を思い、死んでいったかを知ることができる。若者を戦場へ送り込むのは、いつの時代も老人だった。その老人を疑うことすらせ…

生き生きとした人物描写と興味深いエピソードで読ませる/『戦争報道の内幕』フィリップ・ナイトリー

翻訳に際して数章ほど割愛したとのことだが、それでも十分な厚さ。資料としても耐え得る量でありながら、きちんとした読み物になっているところが凄い。1854年から1975年に至るまでの戦争(クリミヤ戦争からベトナム戦争まで)をフォローした労作。 マルタ遠…

『ドキュメント 戦争広告代理店 情報操作とボスニア紛争』高木徹

米国民間企業がPR手法を駆使して、国際世論を動かした。いまだに多くの人々が、セルビア人が加害者でムスリム人が被害者だと思い込んでいるはずだ。ミロシェビッチは悪の権化とかね。国際世論を見方にした方が勝つという、戦争の新たな次元を示している。た…