読書

本に対する執着は、人生に対する執着に他ならない

たいていの本は、読み終えられた瞬間にその価値を失ってしまう。そして、二度と開かれることもないまま、長い無意味な余生を、本棚の中で、ダニの培地として過ごすのだ。 それでも、そうした一向に価値のない本たちを捨てる時に、愛書家は、我が身を切られる…

他人の踏み固めた道になれきって、その思索のあとを追う

精神が代用品になれて事柄そのものの忘却に陥るのを防ぎ、すでに他人の踏み固めた道になれきって、その思索のあとを追うあまり、自らの思索の道からとおざかるのを防ぐためには、多読を慎むべきである。かりにも読書のために、現実の世界に対する注視を避け…

書籍と電子テキストの違い

本はみな、電子メールやそれに類した手軽な情報にはない、独自のリズムと一種の身体的な親密さをもっている。過剰なメディアはしばしば、情報と理解を混同する。追いまくられている気分のときに、本は奇跡のように、内省や熟考や精神的休息のための時間を拡…

ハイネ「本を焼却する国はやがて人を焼却するようになる」

ユダヤ関連の商品や商店に対する不買運動が始まったのが、1933年4月1日である。それはわずか1日で終わったが、1週間も経たぬ4月7日には、市民公職法が発効された。これは、同じドイツ人でも、非アーリア系のドイツ人は、公証人、公立学校教師などの職に就い…

村上専精と宇井伯寿

そのくらい厳しい先生でしたが、この先生にして、そのさらに前の先生に叱られたことがあるのです。村上専精(せんしょう)先生といって、「大乗非仏説」などを提唱された方で、その他の面でも当時としては斬新な考え方の学者で、博学な先生でした。その村上…

情報、知識、思想、哲学、宗教/『おテレビ様と日本人』林秀彦

一見すると、林秀彦の真剣さは強迫神経症をかもし出し、真面目さは被害妄想に導いているように感じられる。それはきっと半分当たっている。もう半分は「行き過ぎた成功からの反動による行き過ぎた自省」であろう。メディアの寵児(ちょうじ)は誰よりもメデ…

「強い本」と「弱い本」

本にも、やはり「強い本」と「弱い本」の二通りがあり、それは、良い本と悪い本とか、面白い本と面白くない本という分類よりも、より根源的なのだ。 たとえば、村上春樹はそこそこに面白いが、弱い。彼の本は、こっちが風邪をひいて弱っているときでも読めて…

書物

「その人間が、考えていることを書物にするまでには、おそらく一生を費やしたのじゃないかな。世界を見、人を見、一生を賭けて考えぬいたあげく、書物のかたちにしているのだ」 【『華氏451度』レイ・ブラッドベリ/宇野利泰訳(早川書房、1964年/ハヤカワ…

天才とは世界という書物を直接読破した人

学者とは書物を読破した人、思想家・天才とは人類の蒙をひらき、その前進を促す者で、世界という書物を直接読破した人のことである。 【『読書について』ショウペンハウエル/斎藤忍随〈さいとう・にんずい〉訳(岩波文庫、1960年)】 読書は「世の中」を読…