古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

2001-02-01から1ヶ月間の記事一覧

『二重言語国家・日本』石川九楊

ある種の手品を見ているような気にさせられる本である。出るはずのない場所から鳩が現れたり、こちらが持っている札をピタリと当てられた瞬間に立ち上がって来る驚愕を随所で感じてしまう。手品に使われる道具は――漢字のみである。著者はタネを明かしてみせ…

ゲーテ

「今日を生きた」――こう言える日が人生で何日あるだろうか。仕事に追われ、家事に追われ、生活に追われる。不本意な一日があっという間に過ぎ去り、人生から容赦なく時間が奪われてゆく。人の一生が一日一日の積み重ねであるとすれば、今日一日の生き様に人…

ある冬の断面

太陽の軌道が低い季節になると、ここ東京では抜けるような青空が見えるにもかかわらず、ビルの影が街を覆い隠す。高台を走る電車に乗ると、林立する高層ビルの背が陽光を浴びて眩しい。都会では、目に映る本物の太陽ですらバーチャルな存在だ。惜し気もなく…

「走る階級」BORO

昔はよく音楽を聴いた。寝る前などは必ずと言って好いほどLPレコードに耳を澄ませたものだ。思春期の多感な生命は、音楽や書物によって信じられないほどの振幅を示した。自分がドラ声のせいか、声の大きな歌い手が好きだ。最近だと、新井英一や伊藤多喜雄。…

『ボーン・コレクター』ジェフリー・ディーヴァー

・『ボーン・コレクター』・『コフィン・ダンサー』 ジェフリー・ディーヴァー ・『エンプティー・チェア』ジェフリー・ディーヴァー ・『石の猿』ジェフリー・ディーヴァー ・『魔術師(イリュージョニスト)』ジェフリー・ディーヴァー ・『12番目のカード…