古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

書評:宗教

自由を達成するためには、どんな組織にも、どんな宗教にも加入する必要はない/『自由と反逆 クリシュナムルティ・トーク集』J・クリシュナムルティ

「人生は幸福よりも自由を目指すべきだ」──そう思うようになったのは40代になってからのことだ。わけのわからないルール、しがらみ、決まり事が私を縛ろうとしていた。40代は堕落の季節だ。残された人生も何となく見通しがついて保守的な傾向が強まる。腐臭…

体験は真実か?/『自己の変容 クリシュナムルティ対話録』クリシュナムルティ

・『最後の日記』J・クリシュナムルティ ・体験は真実か?・『英知の教育』J・クリシュナムルティ 「計画停電だと? ふざけんじゃねーよ!」と声を大に叫んだところで、パソコンは立ち上がらないし、トイレの水も流れない(集合住宅のため水道ポンプも動かず…

統一教会の霊感商法/『霊と金 スピリチュアル・ビジネスの構造』櫻井義秀

タイトルが上手い。素人向けの宗教社会学ともいうべき内容。真摯かつ真面目な考察。ま、面白味には欠けるわな。 宗教とカネ。信じる者と書いて「儲ける」とはいうなり(笑)。なぜ信仰にカネがかかるのだろうか? それは宗教が生け贄(にえ)を必要とするか…

クリシュナムルティの悟りと諸法実相/『クリシュナムルティの神秘体験』J・クリシュナムルティ

・『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー クリシュナムルティの手帖より 1』J・クリシュナムルティ ・クリシュナムルティの悟りと諸法実相 ・プロセスとは形を変えた病苦か・『クリシュナムルティの日記』J・クリシュナムルティ ・ジドゥ・クリシュナムルティ…

仏教的時間観は円環ではなく螺旋型の回帰/『仏教と精神分析』三枝充悳、岸田秀

脳は言葉に支配されている。思考が言葉という情報によって成り立っている以上、人は言葉に束縛される。意識とは言語化可能な状態と言い換えてもよいだろう。 懐疑や批判の難しさもここにある。示された言葉【以外】の知識がなければ、そもそも判断のしようが…

仏教の実像をわかりやすく探る/『仏教の謎を解く』宮元啓一

決して悪い本ではない。初心者向けの内容でありながらも、きちんと要所を衝いている。手放しで褒めるわけにいかないのは著者が放つ嫌な臭いである。尊大かつ傲慢な素振りを私は感じた。ほんの数ページではあるが結果的に全体を台無しにしてしまっている。 と…

カトリックとプロテスタントの風俗史/『宗教改革の真実 カトリックとプロテスタントの社会史』永田諒一

歴史は海のうねりのようにゆっくりと動く。劇的な変化もよく目を凝らして見れば、長期間にわたって圧力や負荷に覆われていることがわかる。小事が積もり積もって大事へ至る。 中世の宗教改革を社会史の観点から読み解いている。 宗教改革と宗派対立の時代と…

権威者の過ちが進歩を阻む/『科学と宗教との闘争』ホワイト

・『ニューステージ 世界史詳覧』浜島書店編集部編 ・『科学史と新ヒューマニズム』サートン:森島恒雄訳 ・権威者の過ちが進歩を阻む ・化物世界誌と対蹠面存在否定説の崩壊・『時間の逆流する世界 時間・空間と宇宙の秘密』松田卓也、二間瀬敏史 ・『思想…

生命とは情報空間と物理空間の両方にまたがっている存在/『苫米地英人、宇宙を語る』苫米地英人

経典本(きょうてんぼん)、あるいは神本(かみぼん)だ。しつこく書いておくが私は苫米地英人の人間性を信頼したことは、ただの一度もない。だからこそカテゴリーに「苫米地英人」を設けていないのである。それでも否応なく彼のアクロバティックな知的アプ…

自由とは良心に基いた理性/『思想の自由の歴史』J・B・ビュァリ

・『科学史と新ヒューマニズム』サートン:森島恒雄訳 ・権威者の過ちが進歩を阻む/『科学と宗教との闘争』ホワイト ・自由とは良心に基いた理性 ・合理性を阻む宗教的信念・魔女狩りの環境要因/『魔女狩り』森島恒雄 ・キリスト教を知るための書籍 歴史を…

魔女狩りの環境要因/『魔女狩り』森島恒雄

・『科学史と新ヒューマニズム』サートン:森島恒雄訳 ・『思想の自由の歴史』J・B・ビュァリ:森島恒雄訳 ・魔女は生木でゆっくりと焼かれた ・魔女狩りの環境要因 ・魔女狩りの心情・コロンブスによる「人間」の発見/『聖書vs.世界史 キリスト教的歴史観…

神秘時代のクリシュナムルティ/『大師のみ足のもとに/道の光』J・クリシュナムルティ、メイベル・コリンズ

・神秘時代のクリシュナムルティ・『自己変革の方法 経験を生かして自由を得る法』クリシュナムーティ著、メリー・ルーチェンス編 クリシュナムルティが14歳で記した一書。マスター・クートフーミからのお告げとされている。神智学協会の重要なテキスト。 こ…

人間は不完全な情報システムである/『なぜ、脳は神を創ったのか?』(『人はなぜ、宗教にハマるのか?』)苫米地英人

既に『月刊苫米地』と化しつつある。それだけアイディアが豊富ということなのか。確かに頭のいい人物である。でも私は信用してないよ(笑)。断じて。書籍を乱発しているのは高額なセミナーへと誘導するためだろう。ま、行きたい人は勝手にしろ。 ホームペー…

宗教の語源/『精神の自由ということ 神なき時代の哲学』アンドレ・コント=スポンヴィル

・『洗脳支配 日本人に富を貢がせるマインドコントロールのすべて』苫米地英人 ・宗教の語源 ・フランス人哲学者の悟り・『神は妄想である 宗教との決別』リチャード・ドーキンス・キリスト教を知るための書籍 ・悟りとは アンドレ・コント=スポンヴィルは…

キリシタン4000人の殉教/『殉教 日本人は何を信仰したか』山本博文

・『「私たちの世界」がキリスト教になったとき コンスタンティヌスという男』ポール・ヴェーヌ ・キリシタン4000人の殉教 ・殉教とは・『青い空』海老沢泰久・キリスト教を知るための書籍 イエズス会のフランシスコ・ザビエルによってキリスト教が日本に伝…

アナロジーは死の象徴化から始まった/『カミとヒトの解剖学』養老孟司

・『唯脳論』養老孟司 ・霊界は「もちろんある」 ・夢は脳による創作 ・神は頭の中にいる ・宗教の役割は脳機能の統合 ・アナロジーは死の象徴化から始まった ・ヒトは「代理」を創案する動物=シンボルの発生 ・自我と反応に関する覚え書き・『完全教祖マニ…

瞑想は偉大な芸術/『瞑想』J・クリシュナムルティ

瞑想に関するクリシュナムルティの箴言集である。10冊ほどの著作から抜粋したもの。中川吉晴の訳はわかりやすさに重きを置いているため、文章の香りが損なわれている。だが、新訳は必ず新しい発見を与えてくれる。 クリシュナムルティの教えを実践するには瞑…

吐かれた唾を集めた痰壷本/『わらの犬 地球に君臨する人間』ジョン・グレイ

ジョン・グレイが吐いた唾(つば)で全ページがドロドロになっている。ま、言うなれば痰壷本(たんつぼぼん)だ。タイムズを始めとする各紙が2009年の一冊に選んだそうだが、所詮欧米の話。キリスト教に打撃を与えるのはまことに結構なんだが、どうもこの著…

核兵器開発の総本山ロスアラモス国立研究所での講話/『クリシュナムルティ・開いた扉』メアリー・ルティエンス

・『クリシュナムルティ・目覚めの時代』メアリー・ルティエンス ・『クリシュナムルティ・実践の時代』メアリー・ルティエンス ・核兵器開発の総本山ロスアラモス国立研究所での講話ロスアラモス国立研究所といえばマンハッタン計画である。核兵器の開発は…

瞑想とは何か/『クリシュナムルティの瞑想録 自由への飛翔』J・クリシュナムルティ

瞑想は冥想とも書く。「瞑」は目をつぶることで、「冥」は「くらい」と読む。冥(くら)き途(みち)と書いて冥途(めいど)と申すなり。 ブッダは瞑想の果てに仏となった。仏とは覚者の謂いで、ブッダという呼称には「目覚めた人」という意味がある。仏教で…

覚者は一法を悟る/『白い炎 クリシュナムルティ初期トーク集』J.クリシュナムルティ

収められているのは1927〜1930年に行われたインタビューと講話である。星の教会を解散したのが1929年だから、神秘宗教の匂いが強い。読むのであれば、後回しにするべきだ。つまらぬ先入観を持ってしまえば、クリシュナムルティをスピリチュアル系の枠組みで…

クリシュナムルティが放つ光/『クリシュナムルティ・実践の時代』メアリー・ルティエンス

・『クリシュナムルティ・目覚めの時代』メアリー・ルティエンス ・クリシュナムルティが放つ光・『クリシュナムルティ・開いた扉』メアリー・ルティエンス 三部作評伝の第二作で、『クリシュナムルティ・目覚めの時代』に続くもの。「プロセス」という悟達…

星の教団解散宣言〜「真理は途なき大地である」/『クリシュナムルティ・目覚めの時代』メアリー・ルティエンス

・クリシュナムルティの人間宣言 ・星の教団解散宣言〜「真理は途なき大地である」・『クリシュナムルティ・実践の時代』メアリー・ルティエンス ・『クリシュナムルティ・開いた扉』メアリー・ルティエンス 神智学協会から「世界教師」と目された青年は、真…

クリシュナムルティの人間宣言/『クリシュナムルティ・目覚めの時代』メアリー・ルティエンス

・クリシュナムルティの人間宣言 ・星の教団解散宣言〜「真理は途なき大地である」・『クリシュナムルティ・実践の時代』メアリー・ルティエンス ・『クリシュナムルティ・開いた扉』メアリー・ルティエンス クリシュナムルティをニューエイジに貶めるべきで…

時代に真っ向から反逆した日蓮/『日蓮とその弟子』宮崎英修

一般向けの作品ではない。マニア向け。本弟子六老僧の一人である日興の筆による「御遷化記録」(ごせんげきろく)を通して日蓮の逝去前後の経緯が詳しく描かれている。日蓮は貞応元年(1222年)に生まれ、弘安5年(1282年)に死去した。立教開宗(=初めて南…

無学な母親が語る偉大な哲学/『君あり、故に我あり 依存の宣言』サティシュ・クマール

・『精神の自由ということ 神なき時代の哲学』アンドレ・コント=スポンヴィル ・無学な母親が語る偉大な哲学 ・個別性と他者との関係 ・ジャイナ教の非暴力 ・観察するものと観察されるもの ・歩く瞑想・『生きる技法』安冨歩 サティシュ・クマールは自らの…

著者が唱える「顕密体制」に異議あり/『戦国仏教 中世社会と日蓮宗』湯浅治久

込み入った話題が多く一般向けではない。またテーマが曖昧なため、締まりを欠いた内容となっている。歴史の断片を取り上げることに異論はないが、意味性・物語性を示さなければ些末な事実で終わってしまう。 中ほど以降は飛ばし読みのため、思いつくままに書…

クリシュナムルティとの出会いは衝撃というよりも事故そのもの/『私は何も信じない クリシュナムルティ対談集』J・クリシュナムルティ

・クリシュナムルティとの出会いは衝撃というよりも事故そのもの ・あなたは「過去のコピー」にすぎない ・レオポルド・ストコフスキーとの対談 読み始めたのは10月の19日か20日だった。私はクリシュナムルティの名前は知っていたが、いかなる人物なのか皆目…

鍋かむり日親/『反骨の導師 日親・日奥』寺尾英智、北村行遠

日蓮は国家権力と真っ向から対峙した人物だった。門下も好戦的で強烈なキャラクターの持ち主が多い。分裂を繰り返す日蓮系教団の中にあって、最も勇名を轟かせているのが日親(1407-1488年)である。足利幕府に捕えられた日親は、熱した鍋を頭にかぶせられて…

本地垂迹説/『鎌倉佛教 親鸞と道元と日蓮』戸頃重基

・日本仏教の黎明を告げた鎌倉仏教 ・日蓮の『立正安国論』 ・日本仏教は鎮護国家仏教として出発した ・本地垂迹説・『戦国仏教 中世社会と日蓮宗』湯浅治久 仏教の伝来に対する、氏神信仰からの激しい抵抗の結果、仏教の側では、一種の妥協と譲歩を余儀なく…