書評:科学

ソマティック・マーカー仮説/『デカルトの誤り 情動、理性、人間の脳』(『生存する脳 心と脳と身体の神秘』改題)アントニオ・R・ダマシオ

ソマティック・マーカー仮説 『隠れた脳 好み、道徳、市場、集団を操る無意識の科学』シャンカール・ヴェダンタム 『意識は傍観者である 脳の知られざる営み』デイヴィッド・イーグルマン 『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ…

「もし自分が光の速さで飛んだら、顔は鏡に映るのだろうか?」/『みるみる理解できる相対性理論 改訂版』ニュートン別冊/佐藤勝彦監修、水谷仁編集

ニュートン別冊を読むたびに、イラストとテキストのバランスの悪さが気になる。絵は大きすぎるし、文字は小さすぎる。高齢者には不向きな雑誌である。 さほど期待してはいなかったのだが、意外な発見がいくつもあった。 そのはじまりはアインシュタインが16…

1ビットの情報をブラックホールへ投げ込んだらどうなるか?/『ブラックホール戦争 スティーヴン・ホーキングとの20年越しの闘い』レオナルド・サスキンド

『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン 『黒体と量子猫』ジェニファー・ウーレット 『重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る』大栗博司 『広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由 フェルミのパラドックス』ス…

バイオホロニクス(生命関係学)/『生命を捉えなおす 生きている状態とは何か』清水博

読書には時機というものがある。タイミングだ。長ずるにつれ、知識の枝は天を目指して複雑に枝分かれしてゆく。そして生の現実が地中に根を張り巡らす。 不幸にして本書はタイミングが合わなかった。1978年に出版されながら、今まで知らなかったのは、私の守…

相対性理論の伝記/『相対論がもたらした時空の奇妙な幾何学 アインシュタインと膨張する宇宙』アミール・D・アクゼル

アインシュタイン入門、あるいは相対性理論の伝記ともいうべき一冊。文章がやや固いもののスラスラ読める。 彼(※アインシュタイン)はギムナジウムを回想して、力と強制と権威をふりかざすところだったと述べている。アインシュタインが権威に疑問を呈する…

権威者の過ちが進歩を阻む/『科学と宗教との闘争』ホワイト

『ニューステージ 世界史詳覧』浜島書店編集部編 権威者の過ちが進歩を阻む 化物世界誌と対蹠面存在否定説の崩壊 自由とは良心に基いた理性/『思想の自由の歴史』J・B・ビュァリ キリスト教を知るための書籍 驚くべき名著。見事な教科書本である。書かれて…

生命とは情報空間と物理空間の両方にまたがっている存在/『苫米地英人、宇宙を語る』苫米地英人

経典本(きょうてんぼん)、あるいは神本(かみぼん)だ。しつこく書いておくが私は苫米地英人の人間性を信頼したことは、ただの一度もない。だからこそカテゴリーに「苫米地英人」を設けていないのである。それでも否応なく彼のアクロバティックな知的アプ…

レイプを研究対象とする愚行/『人はなぜレイプするのか 進化生物学が解き明かす』ランディ・ソーンヒル、クレイグ・パーマー

「進化論は後だしじゃんけんだ」というのが私の持論である。進化論は生き残った種を勝者と位置づけ、残された機能を有利と判断する。しかしよく考えてみよう。淘汰という概念から見ても、果たしてヒトが進化しているかどうかは不明だ。人類が地球の歴史に登…

超ひも理論の危うさ/『迷走する物理学 ストリング理論の栄光と挫折、新たなる道を求めて』リー・スモーリン

ストリング理論とは超ひも理論のことで超弦理論ともいう。 細かい話である。原子よりもはるかに小さな世界だから、それも当然。1ミリの1000万分の1だってさ。宇宙を構成する最小物質が粒子ではなく、振動するひもであるというのだ。しかも、この世界は十次元…

宇宙定数はアインシュタインの生涯最大の過ち/『エレガントな宇宙 超ひも理論がすべてを解明する』ブライアン・グリーン

猿も木から落ちるという話。アインシュタインは26歳の時に特殊相対性理論を発表した。次いで10年後には一般相対性理論に辿り着いた。 そして、アインシュタインは「宇宙定数」を導入して一般相対性理論を修正した。これが後にアインシュタインをして「生涯最…

空間内に絶対的位置は存在しない/『ホーキング、宇宙を語る ビッグバンからブラックホールまで』スティーヴン・ホーキング

空間内に絶対的位置は存在しない 『エレガントな宇宙 超ひも理論がすべてを解明する』ブライアン・グリーン 『ブラックホール戦争 スティーヴン・ホーキングとの20年越しの闘い』レオナルド・サスキンド 『物質のすべては光 現代物理学が明かす、力と質量の…

枕には4万匹のダニがいる/『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン

太陽系の本当の大きさ 相対性理論によれば飛行機に乗ると若返る 枕には4万匹のダニがいる あなた個人を終点とする長い長い系図 陽子 ビッグバン宇宙論 進化論に驚いたクリスチャン 『黒体と量子猫』ジェニファー・ウーレット 『重力とは何か アインシュタイ…

記録の様相/『DNAがわかる本』中内光昭

昨年読んだが、紹介するのを忘れていた。全体的には底が浅い印象を受けた。ま、DNA入門といってよい。 DNAは記録である。では記録とは何か。その様相を著者はこう綴る―― 従来、人間世界で使われるシナリオは紙にインクなどで書かれてきました。今ではフロッ…

寿命は違っても心臓の鼓動数は同じ/『ゾウの時間ネズミの時間 サイズの生物学』本川達雄

寿命は違っても心臓の鼓動数は同じ 一生の時間は体重の1/4乗に比例する 『「長生き」が地球を滅ぼす 現代人の時間とエネルギー』本川達雄 時間論 1992年発行。いまだに売れているようだ。翌1993年のベストセラーを見ると28位で、高村薫の『マークスの山』の…

怨霊の祟り/『霊はあるか 科学の視点から』安斎育郎

科学の視点から霊の存在を検証している。まず冒頭で、霊視詐欺商法や心霊手術に騙された人々の被害状況が述べられている。霊の存在を信じる人達は、金がかかってしようがないね。まったくご苦労なこって。 一番興味深かったのは『医事新報』に掲載されたとい…

かつて無線は死者との通信にも使えると信じられていた/『黒体と量子猫』ジェニファー・ウーレット

『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン かつて無線は死者との通信にも使えると信じられていた レオナルド・ダ・ヴィンチ コペルニクスが引っ繰り返したもの コペルニクスは宇宙における人間の位置づけを変えた 『重力とは何か アインシ…

米国における天地創造と進化論/『神と科学は共存できるか?』スティーヴン・ジェイ・グールド

同じクリスチャンでも欧米には落差がある。アメリカはモルモン教に見られるように原理主義的であり、独善的だ。 モルモン教 そのため、米国が行う蛮行は“正義の名の下”に実行され、「神が書いたシナリオ」として事後承認される。主よ、あなたは後出しジャン…

相対性理論によれば飛行機に乗ると若返る/『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン

太陽系の本当の大きさ 相対性理論によれば飛行機に乗ると若返る 枕には4万匹のダニがいる あなた個人を終点とする長い長い系図 陽子 ビッグバン宇宙論 進化論に驚いたクリスチャン 『黒体と量子猫』ジェニファー・ウーレット 『重力とは何か アインシュタイ…

「自己」を規定しているのは脳ではなく免疫系/『免疫の意味論』多田富雄

多田富雄の名著をやっと読んだ。専門用語が多いが、すっ飛ばして読んでも十分お釣りが来る。 「自己」を規定しているのは脳ではなく免疫系 『往復書簡 いのちへの対話 露の身ながら』多田富雄、柳澤桂子 人体は常に病原菌にさらされており、ミクロの戦場では…

日本は流動性なきタコツボ社会/『生物と無生物のあいだ』福岡伸一

『もう牛を食べても安心か』で火がつき、本書がベストセラーとなった。科学本が売れるのは異例の事態。出版界の動向を変えるほどの衝撃を与えた。 福岡伸一が来し方を振り返り、このように綴っている―― ポスドク(ポスト・ドクトラル・フェロー/博士研究員…

太陽系の本当の大きさ/『人類が知っていることすべての短い歴史』ビル・ブライソン

太陽系の本当の大きさ 相対性理論によれば飛行機に乗ると若返る 枕には4万匹のダニがいる あなた個人を終点とする長い長い系図 陽子 ビッグバン宇宙論 進化論に驚いたクリスチャン 『黒体と量子猫』ジェニファー・ウーレット 『重力とは何か アインシュタイ…

神は細部に宿り、宇宙はミクロに存在する/『「量子論」を楽しむ本 ミクロの世界から宇宙まで最先端物理学が図解でわかる!』佐藤勝彦監修

ここ数年、科学本が賑やかだ。福岡伸一著『もう牛を食べても安心か』や池谷裕二著『進化しすぎた脳 中高生と語る〔大脳生理学〕の最前線』などがバカスカ売れたことは記憶に新しい。“未知なる世界への憧れ”や“正確な知識の渇望”といった人々の要求があるのか…

人間が挑める高さの限界/『人間はどこまで耐えられるのか』フランセス・アッシュクロフト

ヒトが登れる高さの限界、潜れる深さの限界、暑さ、寒さ、スピードの限界を生理学的見地から探っている。誰もが実感できそうなテーマがグッド。 夢枕獏著『神々の山嶺』を読んで以来、私は自称“山男”となった。多分、同意見の人が多いことと思う。そして私は…

見る、視る、観る/『脳は美をいかに感じるか ピカソやモネが見た世界』セミール・ゼキ

色々な見方がある。五感の中で眼から得る情報量は他の器官を圧倒している。色・形・距離・大きさ・質感などなど。しかしながら、「見る」という脳の構造はいまだによくわかっていない。少し前までは、脳の中で「誰かが」見ているような説明がまかり通ってい…

『もう牛を食べても安心か』福岡伸一

面白みのないタイトルに騙(だま)されることなかれ。狂牛病(著者は敢えてBSEとは書かない)という象徴的な“事件”を通して、類い稀な身体論、文明論、生命論が説かれている。著者が振るうのは「分子生物学」という名のメスだ。よくもまあ、これだけの内容を…

立花隆『臨死体験』その五

科学万能主義による視野狭窄を露呈 初めに発行が遅れた言いわけをしておく。原稿を書こうかと思っていたところ、掲示板にて赤マント氏からの逆襲を受けてしまった。あたふたと応戦している内に、色々と考えざるを得なくなってしまったのだ。ってなわけで失礼…

立花隆『臨死体験』その四

科学万能主義による視野狭窄を露呈 前回の原稿を読み直して、ふと妙案を思いついた。脳が無い生き物がいるではないか。ネットで調べたところ虫にはあるようだ。 だが植物にはないだろう。あったらゴメンなさい。いくら何でもないよなー、という前提にしてお…

立花隆『臨死体験』その三

科学万能主義による視野狭窄を露呈 目の前に蟻がいたとしよう。6本の脚(あし)を懸命に動かしながら、蟻は前進している。これを人差し指で潰す。指を裏返せば、体液をにじませた蟻の死骸がピクリともせず貼りついている。先ほどまで活発に動いていた蟻の生…

立花隆『臨死体験』その二

科学万能主義による視野狭窄を露呈 この本を批判するために別の本まで読む羽目となってしまった。これから書くので何とも言えないが、あと数回続くかも知れないことをお断りしておく。 体外離脱の体験はいずれも面白いのだが、信憑性となると随分と危ういも…

立花隆『臨死体験』その一

科学万能主義による視野狭窄を露呈 まどろっこしい本である。臨死体験への純粋な興味がある人は読まない方がいいだろう。私自身、上巻の前半で何度挫けそうになったかわからない。何らかの死生観を持っている人であれ、参考になる体験が数多く紹介されている…