古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

2001-06-01から1ヶ月間の記事一覧

人生を翻弄された二人の孤児の復讐譚/『ブラック・プリンス』デイヴィッド・マレル

再読。十分堪能できた。国際謀略モノといえば、フレデリック・フォーサイス、ロバート・ラドラムと並んで三羽烏の一翼を担うマレルである。この後、全く別ストーリーの『石の結社』(光文社文庫)があり、『夜と霧の盟約』(早川文庫)では、両方の主人公が…

ニュース拾い読み・書き捨て 5

南米チリで、15匹の野良犬を引き連れて2年間にわたって放浪生活を送っていた10歳の少年が警察に保護された。「雌犬の乳を飲んで朝食代わりにした」と話している。 【朝日新聞夕刊 2001年6月20日付】 ▼5歳の時に両親と離れて施設に引き取られた少年の冒険行▼…

「地の塩の箱」~理想と絶望のはざまを生きた詩人を追跡/『昭和の根っこをつかまえに』北尾トロ

このシリーズはオンライン・テキストで公開されている。飄々としたポップな文体で知られる北尾が、ややジャーナリスティックな構えで、平成に生き残る“昭和の根っこ”を捉えた作品。いずれの対象も“残滓(ざんし)”と軽々しく言うことがためらわれるような、…

迸(ほとばし)る薀蓄・溢れるトンデモ本/『古本マニア雑学ノート〔2冊目〕 愛と古書と青春の日々』唐沢俊一

副題は「愛と古書と青春の日々」。前号で紹介した作品の続編。二番煎じと侮るなかれ。筋金入りの古書マニアが披瀝する薀蓄(うんちく)の数々は、2冊の本で涸れてしまう程度のものには非ず。イラストは実弟の唐沢なをき。 何にせよマニアが著した作品の本質…

縦横無尽な面白がり方/『古本マニア雑学ノート』唐沢俊一

以前、本屋で半分ほど立ち読みをしたのだが、ちゃんと読み直してみた。いやあ面白い。北海道出身でこんな面白い人がいたとは驚き。道産子というのはわたくしのように奥床しく、ゆったりしていて、大人しい人ばかりと勝手に思い込んでいた。 副題が「人生に大…

ニュース拾い読み・書き捨て 4

豪快な塩まきで人気を読んだ元関脇の水戸泉が今月9日、国技館で断髪式。5歳の時に父親と死別。母の手一つで育てられる。中学卒業と同時に角界入りしたのも「母を楽にさせたい」との思いからだったという。故障に泣かされ続けたが、92年の名古屋場所で平幕優…

タブブラウザ「Sleipnir」

PC

・http://www.fenrir.co.jp/sleipnir/ インターネット・エクスプローラー(以下IE)はもう要らない。ネットスケープも不要だ。すこぶるつきの便利なタブ型ブラウザである。私は最近になって知った。このブラウザは、2002年度「窓の杜大賞」を受賞しているフ…

朝日新聞久々のヒット!

▼いつもこき下ろしてばかりいるので、たまには持ち上げることにしよう。6月4日付の天声人語が好かった。歯痛の話し▼「あの痛みは孤独な痛みだ。なぜかあまり同情されない。まわりは何と自己中心的な奴(やつ)ばかりなのだ、と歯ぎしりしても痛みが増すばか…

『このミステリーがすごい!/1999、2000、2001年版』

ランキングが生む現象と陥穽 このところミステリから離れがちだったので、後学のためと思って通読してみた。1988年(昭和63年)版が最初というから月日が経つのは早いものだ。因みにこの年のベスト3はというと、 【国内編】 1.『伝説なき地』船戸与一(講談…