はっきり書いておこう。作品としてはイマイチだ。だが、サラエボの子供達の言葉の数々は一読に値する。否、そのためだけに対価を支払ったとしてもお釣りが来る。
「そしてぼくは、ぼくらの国の言葉で書かれ、ぼくらの国の俳優が演じているこの作品を、サラエボで上映することで、苦しんでいる子供たちに、ほんの少しだけの喜びを、ほんの少しだけの微笑を、ほんの少しだけの感動を与えてやりたいんだ。そして何より、彼らに会いたいんだ。特別なことは何もない。ただ、彼らが生きているのをこの目で見て、この手で触って、楽しく語り合って、そしてこの映画を一緒に見たいんだ」
【『失われた思春期 祖国を追われた子どもたち サラエボからのメッセージ』堅達京子〈げんだつ・きょうこ〉(径書房、1994年)】
逆境が魂を崇高にするのか。はたまた、悲惨が心に悟性を開花せしめるのか。こんな美しい言葉が次から次と、インタビューに応じて溢れ出る。
10代でありながらも、少年少女達は既に私の何倍もの人生を知っているのだろう。彼等は確固たる“人間”だ。私以上に人間だ。