書評:経済

消費税が国民を殺す/『消費税のカラクリ』斎藤貴男

税という名の暴力がある。国民・県民・市民・区民は税金と引き換えに何を手にしたのだろうか? あるいは失ったものの方が多いのだろうか? 租税には三つの機能がある。公共サービスの費用調達機能、所得の再分配機能、景気の調整機能である。この前提自体が…

行動経済学という武器/『「ジャパン」はなぜ負けるのか 経済学が解明するサッカーの不条理』サイモン・クーパー、ステファン・シマンスキー

透徹した専門性は学問領域を軽々と越境する。ま、「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」ってな感じだわな。狭いトンネルが別世界に通じることもあれば、穴のまま終わることもあるのだろう。 それにしても行動経済学の台頭恐るべし。一昔前なら「大体…

600兆円の政府紙幣を発行せよ/『政府貨幣特権を発動せよ。 救国の秘策の提言』丹羽春喜

この国は政権交代をしても変わらないことが明らかになりつつある。国民は民主党政権には期待していた。期待が大きかっただけに、裏切られた思いもまた強い。ウェブ上では既に自民党政権を懐かしむ声すらちらほら見える。 何かおかしい。その象徴が小沢封じ込…

国債とCDSの仕組み/『恐慌第2幕 世界は悪性インフレの地獄に堕ちる』朝倉慶

経済や金融に関する本は圧倒的に悲観論が多い。ま、パスカルの賭けみたいなもので、外れたとしても損をする人はあまりいないところがミソ。しかしながら、子羊のような一般投資家はこの手の情報に翻弄され、マーケットの需給を支える羽目となる(笑)。 やや…

道徳と政治を混同してはならない/『資本主義に徳はあるか』アンドレ・コント=スポンヴィル

「政治とカネ」の問題がかまびすしい。電波利権に浴する人々が口角泡を飛ばして政治家を糾弾している。去る参院選では「クリーンな政治」を掲げた政党もあった。ひょっとして政治家はクリーニング屋になろうとしているのだろうか? ちょっと考えてみよう。ク…

CDSが爆発するのはこれから/『大恐慌入門 何が起こっているか? これからどうなるか? どう対応すべきか?』朝倉慶

世界経済が不況に陥り大恐慌(1929年)へと転げ落ちた1920年代、ヨーロッパではファシズムが台頭した。オルテガが『大衆の反逆』(La rebelión de las masas)を著したのは1930年のこと。大衆(las masas)という心理的情況を「慢心しきったお坊ちゃん」に譬…

比較トラップ/『予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』ダン・アリエリー

『隠れた脳 好み、道徳、市場、集団を操る無意識の科学』シャンカール・ヴェダンタム 『意識は傍観者である 脳の知られざる営み』デイヴィッド・イーグルマン 比較トラップ 不合理性はいつも同じように起こり、何度も繰り返される 刷り込みやアンカーに気づ…

予言の自己成就/『世界は感情で動く 行動経済学からみる脳のトラップ』マッテオ・モッテルリーニ

経済学は実に妙ちきりんな学問で、「経済人」という合理的な存在が大前提になっている。しかしながら私は衝動買いをし、読んでいない本が数千冊あってもなお古本を買い漁り、コンビニやスーパーへ行くと常習的にプッチンプリンを買ってしまう。そんな私が経…

アメリカの反テロ戦争が金融崩壊を招いた/『ドンと来い! 大恐慌』藤井厳喜

まるで「売れない演歌歌手」といったところだ。表紙も著者名も。若者相手の講義といった体裁をとっているため、言い回しが馴れ馴れしくなっている。「――なんだよな」みたいな。読みやすさを考えた戦略なんだろうが裏目に出ている。話し言葉と書き言葉の違い…

明治維新は外資によって成し遂げられた/『洗脳支配 日本人に富を貢がせるマインドコントロールのすべて』苫米地英人

では、明治維新のおさらいをしておこう。 1840年 阿片戦争 1841年 中濱万次郎、太平洋を漂流しアメリカ船に救われる。 1851年 土佐漁民中濱万次郎ら、アメリカ船に送られて琉球に上陸する。 1853年 黒船来航 1854年 日米和親条約 1858年 安政の大獄 1860年 …

郵貯・簡保・厚生年金で戦費調達/『「お金」崩壊』青木秀和

歴史を動かしているのは何か? 人の心だ。人と言ったって万人を指すわけではない。もちろん権力者である。では、権力者の心を動かすのは何か? 金だ。金に決まっているよ。 歴史というものは、経済で読み解くと非常にわかりやすい構図となる。どこからどこへ…

大恐慌が第二次世界大戦を惹き起こした/『「1929年大恐慌」の謎 経済学の大家たちは、なぜ解明できなかったのか』関岡正弘

確かな視点で1929年のアメリカ発大恐慌の原因を解こうとした労作。硬質な教科書本。本書は元々、ダイヤモンド社から1989年に刊行されたもの。PHPが復刊させた。大英断。文庫ではなくハードカバーにしたのも正解だ。末永く読まれるべき作品である。 初版はバ…

ファシズム全体主義を徹底的に糾弾する一書/『ドラッカー名著集 9 「経済人」の終わり』P・F・ドラッカー

ドラッカーの処女作である。書き始めたのはヒトラーがドイツ首相となった直後のこと(1933年2月)。ドラッカーは23歳だった。書き上げた後も原稿を温めていた。ドラッカーの予測は次々と的中した。こうして1939年(昭和14年)に刊行されベストセラーとなった…

世界大恐慌 ドラッカー19歳/『ドラッカー入門 万人のための帝王学を求めて』上田惇生

そろそろピーター・F・ドラッカーを読もうと思い立ったのだが、いずれの内容も重量級と察して本書を選んだ。正解だった。上田惇生は、ドラッカー作品の大半の翻訳を手掛け、ドラッカー本人とも親交があったという。やや礼賛が勝ちすぎていて鼻につくがこれは…

米国内の格差/『通貨バトルロワイアル』浜田和幸

金融に関する本は、部分的な価値があればそれでいい。読み物というよりは、情報(データ、仕組み)収集に徹するべきだ。そう考えないと腹立たしくなってくる(笑)。 アメリカ人労働者は、日本と比べ今や年間3週間も長く働かされているのである。そして労災…

襲い掛かる駄洒落の嵐/『かくかく私価時価 無資本主義商品論 1997-2003』小田嶋隆

前作の『無資本主義商品論 金満大国の貧しきココロ』と比較すると、明らかに駄洒落ネタに舵を切っている形跡がある。内容はやや軽め。それでも、秀逸なる警句の類いはそこここに散りばめられている。 まあ、黙って堪能するがいい―― 小渕恵三 この度の自民党…

旧ソ連は「年金問題」で崩壊した/『繰り返す世界同時株暴落 自民崩壊・生活壊滅の時代』藤原直哉

ウウム、昨今の金融経済を予言したような書名である。ま、この手のタイトルって多いんだけどね。徐々に上がっていって、暴落する。まるで、人生のようだ。破壊は一瞬、建設は死闘。 労働力が世界マーケットの筋肉だとすれば、金融は血液に喩えることができよ…

ハゲ頭に群がるカツラメーカー/『無資本主義商品論 金満大国の貧しきココロ』小田嶋隆

コンプレックスを後ろ手に捻(ひね)り上げたような商売は多い。チビ・デブ・おたんこなす・ホクロ・ムダ毛・一重まぶた・ペチャパイ・口臭体臭・包茎・勃起不全など、数え上げればキリがない。そして、これらの筆頭格がハゲであることは衆目の一致するとこ…

『アングロサクソンの金融支配戦略 ドル本位制がつくり出した世界支配の罠』高橋雄二+アングロサクソン金融戦略研究会

国債は「不況対策」と言える。戦後の復興期、高度成長期、80年代のバブル期を除いては、国債の発行が景気の振興に不可欠だったのが日本だ。国が歳出をカットすると需要減につながり、景気には必ず悪影響が出る。この点を忘れて、歳出減は財政赤字減って国が…