書評:書評
普段は殆ど注目されることのない分野から、いきなり頭角を現して世間の耳目を集める本がある。藤原正彦や福岡伸一など。池内恵もその一人に加えられる人物である。 池内は1973年生まれ。私自身が40代後半になったせいもあるが、やはり若く感じる。時代が激し…
〈狐〉こと山村修はとにかく文章がいい。多分、敢えて易(やさ)しい言葉を使い、意図的に豊穣なる部分を割愛しているはずだ。このようにして彫琢(ちょうたく)を極める文体が生まれる。 以下は、岡田英弘著『世界史の誕生』(ちくまライブラリー、1992年)…
哲学者の西田幾多郎が、京都大学退職のおり、「回顧すれば、私の生涯は極めて簡単なものであった。その前半は黒板を前にして坐した、その後半は黒板を後にして立った。黒板に向かって一回転をなしたといえば、それで私の伝記は尽きるのである」と語っていま…
発売当初から絶賛された書評集を今頃になって読んだ。ウーーーム、確かに凄い。奇をてらったものではなく、それなりに王道だと思った次第。ただ、言い回しがキャピキャピしているので、「パワーアップした中野翠」といった感がある。 とにかく、本の海を泳ぐ…
・『狐の書評』狐・『悲しみの秘義』若松英輔 人は、自分が好むものを褒められ、自分が嫌うものを貶(けな)されると快感を覚えるようだ。 たまたま、ネットを渉猟していたところ、「狐」と名乗る匿名書評家がいることを知った。イエロージャーナリズムの代…
ランキングが生む現象と陥穽 このところミステリから離れがちだったので、後学のためと思って通読してみた。1988年(昭和63年)版が最初というから月日が経つのは早いものだ。因みにこの年のベスト3はというと、 【国内編】 1.『伝説なき地』船戸与一(講談…
心に染み入る言葉 目を瞠(みは)る言葉がある。並べられた言葉の遥か彼方から、書き手が見つけた真珠のような何かが、迫力を持って私の目前に立ち現われる。そんな詩句が紹介されていたので、皆さんにも、おすそ分けしよう。 タイトルは「本よむ人の歌」。…