歴史

歴史とは死者と生者が連続しているという物語

歴史とは死者と生者が連続しているという物語で、この物語を維持する仕組みを失ってしまえば、国家も歴史も崩壊する。戦没者の顕彰はナショナリズムを維持する上での不可欠の機能で、私の理解では、靖国神社は戦没者を慰霊するというよりも顕彰する場所なん…

文字禍

文字を覚える以前に比べて、職人は腕が鈍り、戦士は臆病になり、猟師は獅子を射損なふことが多くなった。(中島敦『文字禍』) 【『物語の哲学 柳田國男と歴史の発見』野家啓一〈のえ・けいいち〉(岩波書店、1996年/岩波現代文庫、2005年)】 野家啓一

騙す意図、騙される被害/『夜』エリ・ヴィーゼル

世の中には騙(だま)す人と騙される人がいる。「オレオレ」と電話をする者が騙す人で、慌てて振り込んでしまうのが騙される人だ。当然、騙す側には何らかの意図や狙いがある。騙されるのは常に人がよいタイプだ。ま、判断力を欠いているわけだが。 人は何か…

史観の難しさ

たしかに、歴史的考察は魅力的だが、歴史観がはっきりしていないと、分析が甘くなる。さりとて、特定の史観にこだわると、それに足をとられてしまう。なかなかむずかしいのである。 【『「1929年大恐慌」の謎 経済学の大家たちは、なぜ解明できなかったのか…

歴史を書くことは倍率の低い顕微鏡でものを見るのに似ている

世界の歴史を書くという作業は、倍率の低い顕微鏡でものを見るのに似ている。その場合、観察者は標本のかなりの部分を見ることができるが、細かいところは犠牲になってしまう。 【『ドラッグは世界をいかに変えたか』デイヴィッド・T・コートライト/小川昭…

名もない人々の歴史こそ本当の歴史である

名もない人々の歴史こそ、本当の歴史である。 日本史の勉強をはじめたばかりの頃、私が先学の仕事から鮮烈に受け取ったメッセージはこのことだった。最近の歴史書がとかく大文字でばかり書かれるのを見るにつけ、私はいいものを先学から頂戴したと思っている…

インドに歴史文化がない理由

『〈狐〉が選んだ入門書』山村修 世界史は中国世界と地中海世界から誕生した 歴史とは何か 歴史文化に不可欠なものは暦と文字 インドに歴史文化がない理由 『歴史とは何か』E・H・カー 『歴史とはなにか』岡田英弘 インド文明には都市があり、王権があり、文…

日本が成立したのは7世紀か

個人が個人として成立するのは自己と他者を区別したときであるのと同じで、日本という国が国として成立したのは日本と他国を区別したときである。そのような区別が生じたのは他国から圧迫を受けたからであろう。 すなわち、大陸に隋・唐という強力な帝国が成…

コジェーヴ「語られたり書かれたりした記憶なしでは実在的歴史はない」

それでは、終焉すべきものが終焉した後で、言い換えれば「起源とテロスの不在」のただ中にあって、われわれにとっての「歴史」はいかにして可能なのか。このように問いかけるとき、われわれに一つの示唆を与えてくれるのは、やはり(アレクサンドル・)コジ…

キリスト紀元の誕生は525年

こうしたなかで、525年にキリスト紀元が発生してくる。6世紀初めになってキリスト紀元が生み出された原因は、カトリック教会の教会行事上の問題、具体的にはキリスト教世界では最も主要な祝祭日の一つ、復活祭の日を決定するという問題からであった。 【『聖…

歴史文化に不可欠なものは暦と文字

『〈狐〉が選んだ入門書』山村修 世界史は中国世界と地中海世界から誕生した 歴史とは何か 歴史文化に不可欠なものは暦と文字 インドに歴史文化がない理由 『歴史とは何か』E・H・カー 『歴史とはなにか』岡田英弘 ただし口頭伝承だけでは歴史は成立しない。…

民族という概念は「創られた伝統」に過ぎない/『インテリジェンス人生相談 個人編』佐藤優

まずは、1050円という値段に抑えた扶桑社に拍手を送りたい。文章で行う人生相談は不利なところがある。相手の表情や声がわからないためだ。それゆえ答える側はどうしても一般論に傾きやすい。私は今まで開高健や北方謙三のものを読んだが、面白かったという…

枢軸時代の変化

「空」とは否定作業によって自己が新しくよみがえるプロセスの原動力 「私」とは属性なのか?〜空の思想と唯名論 枢軸時代の変化 「空」の語意 『世界の名著1 バラモン教典 原始仏典』長尾雅人責任編集 ソクラテス、孔子、イエス、仏陀は、同じような時期に…

文字改革=情報空間の隠蔽

どういうことかと言うと、中華人民共和国になってから略字を大幅にとり入れる文字改革が断行されましたよね。どの国でも文字改革というのは、前の歴史との連続性を切断するために行うんです。ですから、中華人民共和国で標準的な教育を受けている人間は、戦…

「理想的年代記」は物語を紡げない/『物語の哲学 柳田國男と歴史の発見』野家啓一

今年、最大の収穫。脳内のシナプスがバチバチと火花を散らしながら、次々と新しい回路を形成した。 私は20年ほど前から大乗仏教の成立について様々な疑問を抱いていた。最大の疑問は膨大な経典のいずれもが「無署名」であることだった。しかも、それらが「ブ…

明治維新は外資によって成し遂げられた/『洗脳支配 日本人に富を貢がせるマインドコントロールのすべて』苫米地英人

では、明治維新のおさらいをしておこう。 1840年 阿片戦争 1841年 中濱万次郎、太平洋を漂流しアメリカ船に救われる。 1851年 土佐漁民中濱万次郎ら、アメリカ船に送られて琉球に上陸する。 1853年 黒船来航 1854年 日米和親条約 1858年 安政の大獄 1860年 …

「貧しいユダヤ人」だけがナチスに殺された/『新版 リウスのパレスチナ問題入門 さまよえるユダヤ人から血まよえるユダヤ人へ』エドワルド・デル・リウス

物語には作者が存在する。そして、物語には意図が託されている。ユダヤ人を取り巻く物語は、ユダヤ人が創作したものが殆どで、脚色のレベルを超えて歴史捏造(ねつぞう)の領域に達している。 シオニズムというペンで書かれた物語を流布させたのはロスチャイ…

歴史とは過去を正しく理解すること

歴史とは過去を正しく理解することで、現在の価値の基準で裁くことではないのです。 【『イメージを読む 美術史入門』若桑みどり(筑摩書房、1993年/ちくま学芸文庫、2005年)】 そして、過去を正しく理解することが不可能であることを自覚する態度である。…

歴史とは何か/『世界史の誕生 モンゴルの発展と伝統』岡田英弘

『〈狐〉が選んだ入門書』山村修 世界史は中国世界と地中海世界から誕生した 歴史とは何か 歴史文化に不可欠なものは暦と文字 インドに歴史文化がない理由 『歴史とは何か』E・H・カー 『歴史とはなにか』岡田英弘 物理学的観点からすれば、絶対的な位置も絶…

歴史の中心軸を転回させる/『〈狐〉が選んだ入門書』山村修

〈狐〉こと山村修はとにかく文章がいい。多分、敢えて易(やさ)しい言葉を使い、意図的に豊穣なる部分を割愛しているはずだ。このようにして彫琢(ちょうたく)を極める文体が生まれる。 以下は、岡田英弘著『世界史の誕生』(ちくまライブラリー、1992年)…

コロンブスによる「人間」の発見/『聖書vs.世界史 キリスト教的歴史観とは何か』岡崎勝世

魔女狩りの環境要因/『魔女狩り』森島恒雄 コロンブスによる「人間」の発見 キリスト紀元の誕生は525年 「レメクはふたりの妻をめとった」 化け物とは理性を欠いた動物 世界の構造は一人の男によって変わった/『「私たちの世界」がキリスト教になったとき …

ゼロをめぐる衝突は、哲学、科学、数学、宗教の土台を揺るがす争いだった/『異端の数ゼロ 数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念』チャールズ・サイフェ

ゼロをめぐる衝突は、哲学、科学、数学、宗教の土台を揺るがす争いだった 数の概念 太陽暦と幾何学を発明したエジプト人 ピュタゴラスにとって音楽を奏でるのは数学的な行為だった ゼロから無限が生まれた パスカルの賭け 『宇宙を復号(デコード)する 量子…

世界史は中国世界と地中海世界から誕生した/『世界史の誕生 モンゴルの発展と伝統』岡田英弘

『〈狐〉が選んだ入門書』山村修 世界史は中国世界と地中海世界から誕生した 歴史とは何か 歴史文化に不可欠なものは暦と文字 インドに歴史文化がない理由 『歴史とは何か』E・H・カー 『歴史とはなにか』岡田英弘 これまた、8月に読み終えていた。血沸き肉…

歴史とは「文体(スタイル)の積畳である」/『漢字がつくった東アジア』石川九楊

凄い言葉だ。中々出て来るものではあるまい。さすが“漢字思想の語り部”石川九楊である。タイトルだけでは意味が理解しにくいと思われるが、以下のテキストを読めば多少なりとも腑に落ちることだろう。 まず歴史とはいったい何でしょうか。歴史というのは、過…