古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

書籍情報

『サルの正義』 呉智英(双葉文庫、1996年)

馬と鹿の次は猿だ。暴論に正論あり。混迷の20世紀末に贈る知性の爆弾。

『さようなら、ゴジラたち 戦後から遠く離れて』加藤典洋(岩波書店、2010年)

大きな反響と論争を巻き起こすとともに、多くの誤解にも曝された『敗戦後論』の発表から15年。その間に深化した、著者の思索は、壁が崩れ、夢が霧散した世界に、自ら選択したものとしての戦後の可能性を――そこから遠く離れつつも――未来へ向けて押し広げる。…

『シネマ・ポリティカ 粉川哲夫映画批評集成』粉川哲夫(作品社、1993年)

シネマ・ポリティカ 粉川哲夫映画批評集成 映像メディアの転換期の中で、〈映画〉はどこへ行こうとしているのか?作品に秘められた〈政治〉性を引き出し、映画独自の支配と教育の機能を浮き彫りにする“粉川映画論”20年間の全軌跡。

『時間の終焉 J・クリシュナムルティ&デヴィッド・ボーム対話集』J・クリシュナムルティ/渡辺充訳(コスモス・ライブラリー、2011年)

著名な理論物理学者と稀有の覚者が、人類の未来について、英知を傾けて行った13回に及ぶ長大な対話録 本書の冒頭で、「人類は進路を間違えたのだろうか?」とクリシュナムルティが問い、それに対して「人間は5000〜6000年ほど前、他人から略奪したり、彼らを…

『ナット・ターナーの告白』ウィリアム・スタイロン/大橋吉之輔訳(河出書房新社、1970年)

ナット・ターナーの告白 キリスト教の浸透で広がった黒人霊歌の発展 ナット・ターナーと鹿野武一の共通点/『ナット・ターナーの告白』ウィリアム・スタイロン ナット・ターナー

『1940年体制 さらば戦時経済』野口悠紀雄(東洋経済新報社、2010年)

日本型経済システムは日本の長い歴史と文化に根差したものであるがゆえに「変えられない」という運命論を排し、「日本的」と言われているものの多くが「1940年体制的」なものであることを喝破した1995年刊の名著&ロングセラー『1940年体制』の増補版。経済…

『FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学』ジョー・ナヴァロ、トニ・シアラ・ポインター/西田美緒子訳(河出書房新社、2011年)

その一瞬の印象がすべてを決める! 人と接するときの「見た目」と「しぐさ」を変えれば、人生は劇的に変わる! 元FBI捜査官が、好印象や信頼感を与えるためのあらゆる秘策を伝授する!

『続・石原吉郎詩集』石原吉郎(思潮社、1994年)

「世界がほろびる日に/かぜをひくな/ビールスに気をつけろ/ベランダに/ふとんを干しておけ/ガスの元栓を忘れるな……」。生活とは残酷なもの。何でもない日常は、この人物からその額の微しとなった異常さを剥奪しようとする……。 石原吉郎

『枯木灘』中上健次(河出文庫、1980年)

自然に生きる人間の原型と向き合い、現実と物語のダイナミズムを現代に甦えらせた著者初の長篇小説。毎日出版文化賞と芸術選奨文部大臣新人賞に輝いた新文学世代の記念碑的な大作!

『生活の世界歴史 9 北米大陸に生きる』猿谷要(河出文庫、1992年)

生活の世界歴史 9 北米大陸に生きる デモクラシーとエゴの同居するアメリカ的生活様式と価値観、その形成と破綻を描く。

タイムトラベルもの

『対比列伝 ヒトラーとスターリン』アラン・ブロック/鈴木主税訳(草思社、2003年)

20世紀とは何だったのか 洞察に満ちた超弩級の歴史読み物 独裁政治家としての二人の軌跡を対比しつつたどった初の試み。二人の出自から、ヒトラーの敗北、そして戦後のスターリンの死までを描く。膨大な資料をもとに臨場感に満ちたディテールを積み重ね、大…

『自殺する種子 アグロバイオ企業が食を支配する』 安田節子(平凡社新書、2009年)

巨大アグロバイオ(農業関連生命工学)企業が、遺伝子工学を駆使した生命特許という手法で種子を独占し、世界の食を支配しつつある。本書は、工業的農業の矛盾を暴きつつ、その構造を徹底解剖する。グローバリズム経済を超えて、「食」と「農」の新たな地平…

『火の賜物 ヒトは料理で進化した』リチャード・ランガム/依田卓巳訳(NTT出版、2010年)

ヒトは自然淘汰によって形成され、人類の起源がアフリカにあることをわれわれは知っている。しかし、いまだに大きな 謎が残されている。それは、「何がわれわれを人間にしたのか」だ。この疑問に対しては、さまざまな見解が出されているが、本書では、新しい…

『生物時計はなぜリズムを刻むのか』ラッセル・フォスター、レオン・クライツマン/本間徳子訳(日経BP社、2006年)

生物(ヒト、動物、植物、細菌)がもつ時計の仕組みを明かす科学読み物です。遺伝子やタンパク質が深く関わる生物時計(動物では体内時計という)の謎を実際の生物行動や実験結果に沿って解説します。1日(さらに昼と夜)、季節、1年といった周期は、生物の…

『自由貿易の罠 覚醒する保護主義』中野剛志(青土社、2009年)

この罠に 嵌ったままなら 窮乏化。実際に、自由貿易パラダイムから保護貿易パラダイムへの大転回の予兆は、すでに現われはじめている……クルーグマンは言う。「保護主義について良いことを言ういかなる理論も間違っているなどと言わないでもらいたい。それは…

『大野一雄 稽古の言葉』大野一雄、大野一雄舞踏研究所編(フィルムアート社、1997年)

魂が先なのか、肉体が先なのか。肉体と魂がひとつになって、ということは、魂を自分に向けて、こっちに伝わってこないと。保土ケ谷の稽古場で語られた未公開テープから集めた舞踏のアフォリズム154章。

『アフリカ 苦悩する大陸』ロバート・ゲスト/伊藤真訳(東洋経済新報社、2008年)

アフリカの希望を誰が奪っているのか! 腐敗した政府、民族対立、貧困、HIV……。停滞するアフリカの現実と問題の核心。

『ルワンダ ジェノサイドから生まれて』ジョナサン・ドーゴヴニク/竹内万里子訳(赤々舎、2010年)

カメラに向けられた力強い眼差し。沈黙の果てに語られる言葉。ジェノサイドの際に性的暴力を受けた女性とその子どもたちの肖像。 20世紀最大の悲劇のひとつ、ルワンダのジェノサイド(集団殺害)の際に大勢の女性が「武器」として性的暴力を受け、その結果お…

『精神の生態学』グレゴリー・ベイトソン/佐藤良明訳(新思索社、2000年)

「正統派」の諸学に対し、切り離された個ではなく、関係が基本となる思考領域をひとつひとつ覗いていって、その領域での立論の甘さを検証しながら、ひとつの思索体系を築いていったベイトソンの論集。90年刊の改訂第2版。

『大坂堂島米会所物語』島実蔵(時事通信社、1994年)

八代将軍吉宗の治政下、大坂に開設された堂島米会所をめぐり、自由な市場を目指す加嶋屋泰三ら米商人、これを支配下に置こうとする幕府、さらに吉宗に反抗する尾張藩主徳川宗春たちの、熾烈な闘いが展開する。歴史上初の証券・先物取引所の産みの苦しみを鮮…

『風をつかまえた少年 14歳だったぼくはたったひとりで風力発電をつくった』ウィリアム・カムクワンバ、ブライアン・ミーラー/池上彰解説、田口俊樹訳(文藝春秋、2010年)

学ぶことの本当の意味を教える感動の実話! アフリカの最貧国、マラウイを襲った食糧危機。食べていくために、学費が払えず、ぼくは中学校に行けなくなった。勉強をしたい。本が読みたい。NPOがつくった図書室に通うぼくが出会った一冊の本。『風力発電』。…

『原訳「スッタ・ニパータ」蛇の章』アルボムッレ・スマナサーラ(佼成出版社、2009年)

人生は論より正悟。ブッダが説いた「強く」「明るく」生きるための方程式。

『ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)をはじめる セルフヘルプのためのワークブック』スティーブン・C・ヘイズ、スペンサー・スミス/武藤崇、原井宏明、吉岡昌子、岡嶋美代訳(星和書店、2010年)

アクセプタンス&コミットメント・セラピーは、最新の科学的な心理療法です。新次元の認知行動療法とも言われ、急速に世界中で広まっています。今までの心理療法が、人間の苦悩を変化させようとしたり、除去しようとして、どれだけ成功したでしょうか。ACTに…

『臨済録』入矢義高訳注(岩波文庫、1989年)

自らの外に仏を求める修行者にむかって「祖仏は今わしの面前で説法を聴いているお前こそがそれだ」と説く臨済(?‐876)。彼の言行を弟子慧然が記した『臨済録』は、「無事の人」に到達しようとする臨済のきびしい自己格闘の跡をまざまざと描き、語録中の王…

『ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき』レイ・カーツワイル/井上健、小野木明恵、野中香方子、福田実訳(NHK出版、2007年)

2045年……コンピュータの計算能力が全人類の知能を超えた瞬間、「特異点」を迎えた人間文明は指数級数的な進化の過程に入る。人間の脳はリバースエンジニアリングによる解析が終了し、生物としての人間を超える強いAIが誕生する。遺伝子工学、ナノテクノロジ…

『身体化された心 仏教思想からのエナクティブ・アプローチ』フランシスコ・ヴァレラ、エレノア・ロッシュ、エヴァン・トンプソン/田中靖夫訳(工作舎、2001年)

世界は、われわれから独立して存在するのか? 認知は、記号的表象の計算にすぎないのか? 東洋仏教思想の伝統である「三昧/覚瞑想」を手法とし、従来の認知科学の前提に根本的な疑問を投げかけ、認知を「身体としてある行為」と見るエナクティブ(行動化)…

『人口学への招待 少子・高齢化はどこまで解明されたか』 河野稠果(中公新書、2007年)

2005年から始まった日本の人口減少。100年後には半減と予測されている。北・西ヨーロッパに端を発し、いまや世界人口の半分を覆った少子化は、なぜ進むのか──。急激な人口減少が社会問題化するなか、急速に脚光を浴びる人口学だが、戦前の国策に与したと見ら…

『歴史人口学で見た日本』 速水融(文春新書、2001年)

コンピューターを駆使してこれまで打ち捨てられてきた「宗門改帳」などの人口史料を分析し、人口の観点から歴史を見直そうとするのが歴史人口学。その第一人者である著者の精緻な研究から、近世庶民の家族の姿・暮しぶりがくっきり浮かび上がってきた。例え…

『アートとしての教育 クリシュナムルティ書簡集』J・クリシュナムルティ/小林真行訳(コスモス・ライブラリー、2010年)

断片的な知識に偏らない、新しい教育のかたちとは? 本書は、教育に携わる人々に宛てて書かれたクリシュナムルティの72通の書簡をまとめたものである。学びと気づき、条件づけからの解放、関係性と責任、自由と英知など、幅広いトピックに光をあてながらホリ…