人が歴史を動かすのか、歴史が人をつくるのか──いずれにしても時代と人は密接につながり、シンクロしてゆく。
世に偉人と言われる人々は、それまでの価値観を一変させた──
歴史を通じて、ごく稀にではあるが伝統に抗した人々がいる。ソクラテス、アインシュタイン、マーティン・ルーサー、偉大な革命家イエス・キリスト、フロイト、仏陀。彼らは自分自身および周囲の世界をまったく新しい見方で見つめる勇気と洞察力を持っていた。そして彼らが見たものは世界を永遠に変えた。
【『変化への挑戦 クリシュナムルティの生涯と教え』J・クリシュナムルティ/柳川晃緒〈やながわ・あきお〉訳、大野純一監訳(コスモス・ライブラリー、2008年)以下同】
この文章は制作を担当したイーブリン・ブローというおばさんが書いたのかもしれない。DVDに登場する中でこの人物だけが傲慢そうに見えて仕方がなかった。イエス・キリストについては、クリシュナムルティ自身が「実在しなかったと思う」と言っている。
更にクリシュナムルティが常々語る「組織宗教」というのは、明らかにカトリックを意識していると思われるが、わざわざ「偉大な革命家」と形容するのもおかしい。「神」という言葉を多用しながらも、神の欺瞞を衝いたのがクリシュナムルティであったはずだ。神こそは、人類最大の詐欺だというのが私の考えだ。
時代が民衆にプレッシャーを与え続けると、星のごとく偉人が登場する。彼等の生きざまや、ものの見方が人々に伝播(でんぱ)し、時代の潮流を変える。
人と人とは大なり小なり何らかの影響を及ぼし合って生きている。そして、時代や社会に束縛されない人物が一石を投じた瞬間、世界にさざ波が広がってゆくのだ。
次に紹介されている人々は、たぶん個人面談をしたことがあると思われる──
アインシュタインがニュートン〔以来の物理学〕に対して成し遂げたようなことを、彼はスピリチュアリティの領域で成し遂げた。20世紀の大部分にわたり、世界中の何百万もの人々が彼のビジョンに惹きつけられた。ダライ・ラマ、オルダス・ハクスレー、エリック・クラプトン、カーリル・ジブラーン、ハリケーン・カーター、グレタ・ガルボ、ディーパック・チョプラ、ヴァン・モリソン、ヘレン・ケラー、チャーリー・チャップリン、ジョナス・ソーク、ジョージ・バーナード・ショー、母親、学生、農民、詩人、科学者、そして国家元首。彼らの各々に直接、彼は人類が直面している最も根源的な問題を語った。
こういう場合は、きちんとロバート・パウエルのテキストを紹介するべきだ。
それにしても凄い顔ぶれだ。ヴァン・モリソンに至っては「No Guru, No Method, No Teacher」というアルバムでクリシュナムルティへの謝辞を書いている。タイトルもそのまんまって感じですな(笑)。色々と検索してみたところ、「ビートルズからグルの依頼もあったが、クリシュナムルティに断られている」という記事もあった。グルを否定する人物に、グルを依頼するってのもいい根性をしているね(笑)。
人が人を呼ぶ。人は必ず人を得る。彼等がクリシュナムルティからどのような影響を受けたのか、それは定かではない。それでもクリシュナムルティの魂の巨大さに圧倒されたことは確かだろう。
彼の教えをスピリチュアリズムの範疇(はんちゅう)でしか捉えることのできなかった人々も多かったはずだ。残念ながら、そのような人々は今尚後を絶たない。クリシュナムルティの教えはもっとシンプルなものだ。目に見えない神や霊などは一切否定しているのだから。
仏教は人を得てインドから中国、そして日本へと伝わり発展した。クリシュナムルティの教えも同様に、人を得て広まってゆくことだろう。
・ミルトン・フリードマンによるクリシュナムルティの記事
・バーナード・ショーもクリシュナムルティを称賛
・ヘンリー・ミラー「クリシュナムルティは徹底的に断念した人だ」/『ヘンリー・ミラー全集11 わが読書』ヘンリー・ミラー