書評:自伝・評伝

不可触民は立ち上がった アンベードカルは先頭に立った/『不可触民の父 アンベードカルの生涯』ダナンジャイ・キール

飲み水を奪われた不可触民は遂に立ち上がった。アンベードカルはその先頭に立った―― 大会初日、数人のカーストヒンズー有志も演説し、被抑圧階級の権利を認め、援助を約した。その夜、大会委員会は出席した上位カースト・リーダーたちの意向を汲み、チャオダ…

ガンディーはカースト制度の信奉者であった/『不可触民の父 アンベードカルの生涯』ダナンジャイ・キール

歴史は粉飾される。目一杯化粧を施し、ロンドンブーツを履き、更に竹馬に乗ることも珍しくない。嘘と欺瞞と修正主義がセットメニューになっている。歴史とは権力者の都合次第で書き換えられる物語だ。 ガンディー、アンベードカルは全く異った形で不可触民解…

不可触民=アウトカースト/『不可触民の父 アンベードカルの生涯』ダナンジャイ・キール

不可触民=アウトカースト ガンディーはカースト制度の信奉者であった 不可触民は立ち上がった アンベードカルは先頭に立った アンベードカルの名言 ガンディーは不可触民制撲滅運動を起こしていない アンベードカルに対するガンディーの敵意 ガンディーは「…

G・H・ハーディはラマヌジャンを警戒した/『無限の天才 夭逝の数学者・ラマヌジャン』ロバート・カニーゲル

ハーディは当代きっての数学者であった。しかし、このケンブリッジ大学教授ですら、ラマヌジャンの数学理論を「狂人のたわごと」程度にしか思っていなかった。ハーディ以外の数学者にもラマヌジャンは手紙を出していたが、誰一人としてまともに扱おうとする…

噴水のように噴き上がる怒り/『北の大地に燃ゆ 農村ユートピアに賭けた太田寛一』島一春

島一春はこの一冊しか読んだことがないが、人間味を鮮やかに捉える筆致が忘れ難い。太田寛一は農協運動に身を捧げた人物。 「もっと辛辣で、もっとあくどい業者だっているんだよ。それを思うと、血が騒ぐというか、怒りが胸の底から噴水みたいに噴きあがって…

破滅的な人生を歩んだ将棋の天才/『真剣師 小池重明 “新宿の殺し屋"と呼ばれた将棋ギャンブラーの生涯』団鬼六

賭け将棋を「真剣」といい、これで飯を食う人物を「真剣師」と呼ぶそうだ。小池重明〈こいけ・じゅうめい〉は最後の真剣師だった。 本格的に将棋を学び始めたのが高校生の頃で、熱中するあまり「学校の勉強をしない」と決意するほどだった。インチキ傷痍軍人…

アインシュタインを超える天才ラマヌジャン/『無限の天才 夭逝の数学者・ラマヌジャン』ロバート・カニーゲル

ラマヌジャンの名前は知っていたが、功績の内容についてはまったく知らなかった。ところが、藤原正彦の文章を読んで興味を掻き立てられた―― ただ、ラマヌジャンの公式の放つ異様な輝きを、これらだけに帰着させようとするのは、単に我々がほかの要因を思いつ…

昭和の脱獄王・白鳥由栄/『破獄』吉村昭

主人公・佐久間清太郎のモデルは白鳥由栄である。小説ではあるが実話に基づいている(尚、リンクを紹介しようと思ったが、ネタバレとなるのでやめた)。 自由とは、束縛から解放されることだ。だからこそ、佐久間は脱獄を繰り返し、トゥルーマンは舞台から去…

枕がないことに気づかぬほどの猛勉強/『福翁自伝』福澤諭吉

福澤諭吉が緒方洪庵の適塾で学んでいた時のエピソード―― およそこういう風で、外に出てもまた内にいても、乱暴もすれば議論もする。ソレゆえ一寸(ちょいと)と一目(いちもく)見たところでは──今までの話だけを聞いたところでは、如何にも学問どころのこと…

天才博徒の悟り/『無境界の人』森巣博

これは8月に読み終えていた。天衣無縫な文体でぐいぐい読ませる不思議な作品。タテ糸に博奕打ちの体験談、ヨコ糸に日本人論・書評が張り巡らされている。尚、森巣博の奥方はオーストラリア国立大学教授を務める人文学者で、子息は20歳にしてカリフォルニア大…

善は急げ、遅いのは悪だ/『夜』エリ・ヴィーゼル

私たちは目から鱗が落ちたが、もう遅すぎた。 【『夜』エリ・ヴィーゼル(みすず書房、1995年)以下同】 ルワンダ大虐殺と同じ光景がここにも。「まさか……」「よもや……」「いくら何でも……」――そんな人々の声が聞こえてきそうだ。『夜』でエリ・ヴィーゼルが…

『禁じられた歌 ビクトル・ハラはなぜ死んだか』八木啓代

これはいい本だ。私がビクトル・ハラを知ったのは、つい最近のこと。友人から教えてもらった。そこで色々と調べている内に、この本に辿り着いたってわけ。 著者は、中学生の時に何気なく聴いていたラジオから流れてきたビクトル・ハラとビオレータ・パラの歌…

『サハラに死す 上温湯隆の一生』長尾三郎編

だが、サハラよ! 俺は不死鳥のように、お前に何度でも、命ある限り挑む。 正直に、お前に語ろう。恐怖におおわれた闇、お前の体に抱かれていた夜に、何度“死”という言葉が脳裏で舞ったか。果てしなき砂の中、道もなく、人も住まぬ所で、わが友とするラクダ…

『扉を開いたひと 美しいほど強情に自分を生きた51人』田中弘子

超有名な女性のスケッチ。その数、51人。美しく描こうと意図してないところがいい。愛に翻弄されるのが、女の性(さが)か。 ヴィヴィアン・リーは美しいだけではなかった。 生き生きとしてユーモアに富み、立ち居振る舞いの優雅さは類がないほどだった。大…

『SAS戦闘員 最強の対テロ・特殊部隊の極秘記録』アンディ・マクナブ/伏見威蕃訳

好作品。途中、間を空けて読んでしまったために、その多くを失念(笑)。 ロクでもない少年が、特殊部隊の一員となるまでの自伝。とにかく、翻訳が素晴らしく、文体に違和感を覚えることがない。 下巻の途中に、やや中だるみはあるものの、全体の印象を損な…

『ドストエフスキー伝』アンリ・トロワイヤ/村上香住子訳

ダラダラと無為な時間を過ごしている時に思い起こす話がある。 それはかのドストエフスキーが銃殺刑に処せられようとした“あの瞬間”のエピソードだ。革命分子と目され逮捕。予想だにしなかった判決が下される。この時、ドストエフスキー27歳。処刑は3人ずつ…