古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

抜き書き

「海を見る自由」と「立ち止まる自由」

学ぶことでも、友人を得ることでも、楽しむためでもないとしたら、何のために大学に行くのか。 誤解を恐れずに、あえて、象徴的に云おう。 大学に行くとは、「海を見る自由」を得るためなのではないか。 言葉を変えるならば、「立ち止まる自由」を得るためで…

新時代の法門

――そういえば、法華経の中には、例えば「序品」の中にも日月燈明仏が二万仏も次々に出現して、その最後の日月燈明仏が妙法蓮華を説くというくだりがありますね。また、「化城喩品」などでも大通智勝仏が出てきて16人の子供たちに『法華経』を説いたという記…

いちばん大切なことは、コミュニケーションがとれるということ

紙屋●午前中の授業では、コミュニケーションということをお話したんですけれども、もう一つ最後に、ビデオの中で東京のお兄さんが病気で、札幌まで来た妹さんがいましたよね。あの妹さんが、そのお兄さんに期待していたことはなんですか。「食べたら、おいし…

映画『ゴッドファーザー PartIII』

時代は1979年。マイケルは、ここで、ヨーロッパ最大の不動産会社インモビリアーレの買収を画策する。そのためには、この会社を支配しているバチカン銀行を動かさなければならない。不動産会社をねらったのは、石油や金融経済といっても、株や証券を操作する…

図書室の一冊の雑誌をめぐる偶然の出会いが数学史を変えた

ピュタゴラスは鍛冶屋で和音を発見した ソフィー・ジェルマン 川の長さは直線距離×3.14 ピタゴラスの定理 ピタゴラスの証明は二重の意味で重要だった 図書室の一冊の雑誌をめぐる偶然の出会いが数学史を変えた ガロア 1954年の1月、東京大学の志村五郎は、い…

1500年前後の出来事

いま、時代の位置に見当をつけるため、こころみに、1500年をはさむ前後における著名な出来事を二、三ひろってみれば、まず、1492年におけるコロンブスのアメリカ発見を挙げることができよう。これにつづいて、ヴァスコ・ダ・ガマによるインド航路の開拓(149…

死刑囚の手紙

そして千葉さんが執行の判をおして死刑が執行された死刑囚の手紙がわたしには衝撃だった。 彼はこう書いていた。 「人は未来があるから、反省し後悔し、そして罪と向き合おうとする、けれど死刑が確定したら、もう反省する必要もないし、自分の罪と向き合う…

自分自身との対面

だれでも、青春の日、人生にはじめてまともにぶつかる瞬間がある。その時、ふと浮かびあがってくる異様な映像に戦慄する。それが自分自身の姿であることに驚くのだ。それはいわゆる性格とか、人格とかいうような固定したものではない。いわば自分自身の運命…

菅政権が続いている本当の理由 前原にも岡田にも致命的欠陥が

ハニートラップにかかっていても、証拠がなければ首相に不適格と簡単にはいえない。故橋本龍太郎のように、中国のハニートラップが首相就任後に明らかになった例もある。だが公安関係者は次のようにいう。「朝鮮総連、それに韓国の公安筋に証拠の写真やテー…

医療制度の改悪でST(言語聴覚士)による言語訓練が受けられなくなっている

医療制度の変革で、以前にも増してSTによる言語訓練が受けられなくなっています。私が2002年4月から始めた訪問ケアの目的の一つは、変革によって不利な立場に立たされている失語症者へのサービスを行うことです。訓練の時間も病院では長くてもたいがい40分程…

シモーヌ・ヴェイユ「暴力はそれに屈するすべての人間を物にしてしまう」

戦争の破壊性は、暴力はどのような場合にも正当化できず、力はどのような状況にあっても常に不当である──シモーヌ・ヴェイユが戦争について至高のエッセイ「『イーリアス』あるいは暴力の詩篇」(1940年)のなかで言うように、「暴力はそれに屈するすべての…

「同調」「服従」「内面化」

「同調」「服従」「内面化」は、人が集団に従うときの、不本意さの程度に応じた用語である。もっとも不本意なものが服従である。不本意だという感覚がある限り、服従は服従以上にはなり得ず、「無責任の構造」も拡大はしない。他方、不本意ながら、従ってい…

ウィスキーは偉大なる平等主義者

僕はやがて、ある真理に到達する。それは、ウィスキーとは偉大なる平等主義者であるということだ。広告会社のやり手のエリートであろうと、貧乏な工場労働者であろうと、酒を抑えることができない限り、等しくただの酔っぱらいだ。 【『ぼくと1ルピーの神様…

インタビューの常識

「わたしの質問がもし不快であるなら、すぐにこのインタビューをやめます」(イギリス) 【漂流生活的看護記録】 ある事件の犯人(とされている人物)を「セニョール」と呼び「回答を誘導したり名誉を傷つけるおそれがあるなど、質問が不適切であると思われ…

オシムの戦争観

――監督は目も覆いたくなるような悲惨な隣人殺しの戦争を、艱難辛苦を乗り越えた。試合中に何が起こっても動じない精神、あるいは外国での指導に必要な他文化に対する許容力の高さをそこで改めて得られたのではないか。 「確かにそういう所から影響を受けたか…

湾岸戦争では800トンに上る劣化ウラン弾が使用された

・『そうだったのか! 現代史』池上彰 ・ソ連がアフガニスタンを侵攻するようにアメリカが誘導した ・目をえぐり取られ、耳をそがれ、手足や性器を切断されたチェチェン人の遺体 ・湾岸戦争では800トンに上る劣化ウラン弾が使用された 湾岸戦争では800トンに…

忘却を求める者

ジャンソンは、バーカウンターの奥に並ぶ琥珀色のボトルに目をやった。どのラベルも仰々しいのは、忘却を求める者にとってはそれが恰好の口実を与えてくれるからだ。 【『メービウスの環』ロバート・ラドラム/山本光伸訳(新潮文庫、2004年)】 ロバート・…

体験談

科学者は、体験談を証拠とはみなさない。 【『なぜ人はエイリアンに誘拐されたと思うのか』スーザン・A・クランシー/林雅代訳(ハヤカワ文庫、2006年)】 スーザン・A・クランシー 擬似相関/『昭和の精神史』竹山道雄

構成作家という職業

そう。構成作家は、社内派閥みたいなものが醸す不安定な波の上で上手にサーフィンをしてみせるバランス感覚をもっていなければならない不思議な商売だ。そのためには、飲んで楽しく、語って面白く、怒鳴って無難な男手なければならない。 かように、「書かな…

ファウスト的衝動

ベルは、近代の終焉についても述べている。彼によると、近代の特徴は「超越(beyound)」にある。しかし、ポスト・モダーンは「限度(limit)」である。確かに、近代がルネサンス、宗教改革、大航海時代から始まるとすると、その特徴は「超越すること」にあ…

滅私奉公と『プロジェクトX』

私は、けっして「滅私奉公」が無条件に悪だと言いたいのではない。「滅私」に値するほどの公もあるだろう。たとえば、本章の第5節でも言及する、今後発展されることが期待される「新しい公共空間」がそうなる可能性はある。男性にせよ女性にせよ、公の世界に…

日本文化という幻想

自分たちに独自の「文化」があると思いたがるのは、どの国も同じだ。しかし日本人は、思い込みがすぎることで知られている。日本の国民性(とされるもの)に関する一大出版ジャンルまである。日本人論だ。あるアメリカの研究者は日本人論を、日本社会の「特…

吾れ此れを以て勝負を知る

故にこれを校(えら)ぶるに計を以てして、其の情を索(もと)む。曰く、主 孰(いず)れか有道なる、将 孰れか有能なる、天地 孰れか得たる、法令 孰れか行なわる、兵衆 孰れか強き、士卒 孰れか練(なら)いたる、賞罰 孰れか明らかなると。吾れ此れを以て…

刷り込みやアンカーに気づく

『隠れた脳 好み、道徳、市場、集団を操る無意識の科学』シャンカール・ヴェダンタム 『意識は傍観者である 脳の知られざる営み』デイヴィッド・イーグルマン 比較トラップ 不合理性はいつも同じように起こり、何度も繰り返される 刷り込みやアンカーに気づ…

北条時頼と『立正安国論』

〈この男……何者なのだ〉 時頼は背筋にしばしば寒気を覚えながら大部の書巻を読み終えた。 夏も真盛りを過ぎて7月も半ばだ。 いよいよ日蓮が得宗被官(とくそうひかん)の宿屋光則(やどや・みつのり)を通じて『立正安国論』と題する問答仕立てのものを時頼…

作為的に死を選ぶのは邪道

同居家族が老人を孤独へ追いやる 最も多い自殺原因は「経済生活問題」 作為的に死を選ぶのは邪道 - 人は生まれるとき、自らの意志とは無関係に生を受ける。どこの世界や家庭に生まれるか、選択の余地はない。人生の始まりからしてそうなのだから、作為的に死…

盲目の冒険者

視覚の謎を解く一書 道に迷うことは物事を発見するために欠かせないプロセスだ 盲目の冒険者 『奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき』ジル・ボルト・テイラー ある日、ロブと連れだって、山の中に高さ50メートルを軽く超す無線塔をもっているという噂のアマチ…

危険なゲームと合理性

危険なゲームをすることは少しも非合理的なことではない。非合理的なのは、危険について錯覚を持つことである。 【『世界は感情で動く 行動経済学からみる脳のトラップ』マッテオ・モッテルリーニ/泉典子訳(紀伊國屋書店、2009年)】 マッテオ・モッテルリ…

個性は伸ばすものではなく、勝手に伸びるものだ

私は、「若いヤツらを縛りつけろ」と言いたいのではない。「個性は伸ばすものではなく、勝手に伸びるものだ」ということを私は言おうとしている。 言い換えるなら、「勝手な行動は許さん」「黙って指示に従え」という圧力を受けながら、それでもなお勝手な行…

イランはアラブ民族ではない

中国−大躍進政策の失敗と文化大革命 戦争と真実 イランはアラブ民族ではない 『そうだったのか! 現代史 パート2』池上彰 中東地域のアラブ諸国はアラブ民族ですが、イラン国民の多数はペルシャ民族です。 【『そうだったのか! 現代史』池上彰(ホーム社、2…