古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

シモーヌ・ヴェイユ「暴力はそれに屈するすべての人間を物にしてしまう」

 戦争の破壊性は、暴力はどのような場合にも正当化できず、力はどのような状況にあっても常に不当である──シモーヌ・ヴェイユが戦争について至高のエッセイ「『イーリアス』あるいは暴力の詩篇」(1940年)のなかで言うように、「暴力はそれに屈するすべての人間を物にしてしまう」ゆえに不正である──と考えるのでない限り、実際にそう考える者はほとんどいないが、戦争の破壊性それ自体は戦争を仕掛けることに反対する根拠にはならない。


【『他者の苦痛へのまなざし』スーザン・ソンタグ/北條文緒訳(みすず書房、2003年)】


他者の苦痛へのまなざし シモーヌ・ヴェイユの詩学