古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

新時代の法門

 ――そういえば、法華経の中には、例えば「序品」の中にも日月燈明仏が二万仏も次々に出現して、その最後の日月燈明仏が妙法蓮華を説くというくだりがありますね。また、「化城喩品」などでも大通智勝仏が出てきて16人の子供たちに『法華経』を説いたという記述があります。
 説法されている『法華経』の中で、また『法華経』が何度も説かれるというイメージは、『法華経』というのはそれほど固定的なものではなくて、大枠だけ抑えて、あとは自在にどんどん展開していいんだ、それで新時代の妙法蓮華の法門が出てきても構わないんだということを示唆されていて、非常に興味を持ちました。


【『蓮と法華経 その精神と形成史を語る』松山俊太郎(第三文明社、2000年)以下同】

 ――法門というのは、〈法(真理)〉への〈門(入り口)〉ということですから、教典になり言語表現になったものは真理に至る一つの形にすぎない、ということですね。


 松山と対談する編集部の発言であるが、中々侮れない。そもそも大乗経典自体が、無名のブッダたちによる知の系譜と考えられている。


蓮と法華経 その精神と形成史を語る