古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

1500年前後の出来事

 いま、時代の位置に見当をつけるため、こころみに、1500年をはさむ前後における著名な出来事を二、三ひろってみれば、まず、1492年におけるコロンブスアメリカ発見を挙げることができよう。これにつづいて、ヴァスコ・ダ・ガマによるインド航路の開拓(1498年)、マジェラン一行の世界周遊(1522年)など、これらの地理上の発見によって旧世界の人々の視界は外に向ってとみに広くなろうとしていた。また、グーテンベルクが金属活字による印刷術を発明したのは15世紀の中葉であって、このため、いままで一部の人に独占されていた知識がようやく一般にゆきわたろうとする勢いを示しはじめた。さらにまた、1517年にはルターによって宗教改革の火蓋が切られ、1543年にはコペルニクスがその地動説を発表している。こうして、中世以来重苦しくヨーロッパの上におおいかぶさっていた教会の権威は、ガリレオの宗教裁判にいたる動揺の歴史の途上にあった。


【『零の発見 数学の生いたち』吉田洋一(岩波新書、1939年)】


零の発見―数学の生い立ち (岩波新書)