・かつて無線は死者との通信にも使えると信じられていた
・レオナルド・ダ・ヴィンチ
・コペルニクスが引っ繰り返したもの
・コペルニクスは宇宙における人間の位置づけを変えた
・『量子革命 アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突』マンジット・クマール
・『宇宙は「もつれ」でできている 「量子論最大の難問」はどう解き明かされたか』ルイーザ・ギルダー
・『すごい物理学講義』カルロ・ロヴェッリ
・『重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る』大栗博司
・『広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由 フェルミのパラドックス』スティーヴン・ウェッブ
・『ブラックホール戦争 スティーヴン・ホーキングとの20年越しの闘い』レオナルド・サスキンド
サブカルネタでぐいぐい読ませる科学史。ワンセンテンスが短く小気味いい。叩きつけるドラムのようだ。アメリカ物理学会の会員向け月刊誌の編集に携わっているだけあって、データも正確無比。
無線が発明された当初、電波とその仕組みを知る人は存在しなかった――
話が面倒なのは、当時電波が何であるのか、どのように働くかをだれも本当には知らなかったことで、マルコーニなどその最たるものだった。テスラでさえ、電磁波の一部ではなく、新しい波を発見したと思っていた。無線の送信は当時の人々にとって魔法のようなもので、無線には超自然的な力があり、死者との通信に使えるのではないかとまで考える人が多かった。トーマス・エジソンもかつて死者と話す電話を作ろうとしたし、都市伝説によれば、メリー・ベイカー・エディ(米国の宗教家でクリスチャンサイエンス教会の創立者)が埋葬されたときには、死の彼方から新しい説教を現世の人々に伝えられるように、電話もいっしょに埋葬されたということだ。
【『黒体と量子猫』ジェニファー・ウーレット/尾之上俊彦、飯泉恵美子、福田実訳(ハヤカワ文庫、2007年)】
ね、面白いでしょ。しかしこの話、面白いだけで終わらせるわけにはいかない。つまり、このエピソードが教えてくれるのは、「理論は後からついてくる」ということに他ならない。当時の人々の逞しい想像力を嘲笑うことは簡単だが、夢に胸ふくらませればこそ、新たな発明が成ったことを忘れてはなるまい。
既に亡き家族や友人と話ができれば、と思うことは多い。だがよく考えてみると、その内容は「ありがとう」といった類いの感謝の言葉しか思い浮かばない。そうであるならば、今自分の周囲にいる人々を大切にすべきなのだろう。多くの後輩を喪(うしな)って、今つくづくそう思う。擦れ違うような出会いが人生を彩る。愛別離苦は人の常なれど、出会いに感謝できる人は心美しい。