古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

仏教

あらゆる蓄積は束縛である/『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー 2 クリシュナムルティの手帖より』J・クリシュナムルティ

・『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー クリシュナムルティの手帖より 1』J・クリシュナムルティ ・あらゆる蓄積は束縛である ・意識は過去の過程である ・思考の終焉・『生と覚醒のコメンタリー 3 クリシュナムルティの手帖より』J・クリシュナムルティ ・…

邪魔とは

ピタゴラスの定理 これらの誘惑、不安、揺らぎなどの煩悩を悪魔の形で表わし、釈尊と悪魔(煩悩)との戦いとして伝記には書かれています。お経のなかではこの悪魔を「邪魔」と表わしています。 【『人間ブッダ』田上太秀〈たがみ・たいしゅう〉(第三文明レ…

ただひとりあること〜単独性と孤独性/『生と覚醒(めざめ)のコメンタリー 1 クリシュナムルティの手帖より』J・クリシュナムルティ

・『真理の種子 クリシュナムルティ対話集 Truth And Actuality』 ・ただひとりあること〜単独性と孤独性 ・三人の敬虔なる利己主義者 ・僧侶、学者、運動家 ・本覚思想とは時間論 ・本覚思想とは時間的有限性の打破 ・一体化への願望 ・音楽を聴く行為は逃…

ピタゴラスの定理

ピュタゴラスは鍛冶屋で和音を発見した ソフィー・ジェルマン 川の長さは直線距離×3.14 ピタゴラスの定理 ピタゴラスの証明は二重の意味で重要だった 図書室の一冊の雑誌をめぐる偶然の出会いが数学史を変えた ガロア 「自分だけがわかっている」ことを、ど…

概念と方法

・並外れて優秀なマネジャーは伝統的なルールを破る ・脳内で繰り広げられる道路工事 ・https://sessendo.hatenablog.com/entry/20091211/p1:title=概念と方法 ・人間の最も根源的な仕事 ・職場の強さを測る12の質問 ・脳細胞の数は銀河系の星の数よりも多い…

人間の問題 2/『あなたは世界だ』J・クリシュナムルティ

「人間の問題 1」の続き―― 世界は完全に分裂しています。 ヒンドゥー教徒、イスラム教徒、クリスチャン、共産主義者というイデオロギー的な分裂、それは測りしれないほどの害を、非常な憎しみと対立をもたらしています。 宗教的なものであろうと政治的なもの…

時代に真っ向から反逆した日蓮/『日蓮とその弟子』宮崎英修

一般向けの作品ではない。マニア向け。本弟子六老僧の一人である日興の筆による「御遷化記録」(ごせんげきろく)を通して日蓮の逝去前後の経緯が詳しく描かれている。日蓮は貞応元年(1222年)に生まれ、弘安5年(1282年)に死去した。立教開宗(=初めて南…

自我は秘密を求める/『伝説のトレーダー集団 タートル流投資の魔術』カーティス・フェイス

・『デイトレード マーケットで勝ち続けるための発想術』オリバー・ベレス、グレッグ・カプラ ・『ゾーン 最終章 トレーダーで成功するためのマーク・ダグラスからの最後のアドバイス』マーク・ダグラス、ポーラ・T・ウエッブ ・自我は秘密を求める ・不明確…

鷲田清一

1冊読了。 130冊目『悲鳴をあげる身体』鷲田清一〈わしだ・きよかず〉(PHP新書、1998年)/課題図書3冊目。限られたスペースでありながらも様々な情報を網羅しており、それが一種のスピード感とキレを生んでいる。これぞ新書の醍醐味。自傷行為や飲食、はた…

一読者からクリシュナムルティの料理人となった青年/『キッチン日記 J.クリシュナムルティとの1001回のランチ』マイケル・クローネン

・一読者からクリシュナムルティの料理人となった青年 マイケル・クローネンはドイツで生まれ育ち、高校卒業と同時にアメリカに移り住んだ。そして、23歳でクリシュナムルティと遭遇する―― 1966年、カリフォルニアのサンディエゴでのある運命的な朝、私はJ・…

十妙と十不二門(じっぷにもん)

「じゅうふにもん」ともいう。天台(智ギ)の『法華玄義』に説かれた本迹の十妙(迹門:境・地・行・位・三法・感応・神通・説法・眷属・利益/本門:本因妙、本果妙、本国土妙、本感応妙、本神通妙、本説法妙、本眷属妙、本涅槃妙、本寿命妙、本利益妙)を…

著者が唱える「顕密体制」に異議あり/『戦国仏教 中世社会と日蓮宗』湯浅治久

込み入った話題が多く一般向けではない。またテーマが曖昧なため、締まりを欠いた内容となっている。歴史の断片を取り上げることに異論はないが、意味性・物語性を示さなければ些末な事実で終わってしまう。 中ほど以降は飛ばし読みのため、思いつくままに書…

枢軸時代の変化

・「空」とは否定作業によって自己が新しくよみがえるプロセスの原動力 ・「私」とは属性なのか?〜空の思想と唯名論 ・枢軸時代の変化 ・「空」の語意・『世界の名著1 バラモン教典 原始仏典』長尾雅人責任編集 ソクラテス、孔子、イエス、仏陀は、同じよう…

提婆達多(だいばだった)/調達(ちょうだつ)

通説によれば、釈迦を殺そうとした悪人デーヴァダッタは、最後には、生きながら火焔に包まれて、「無間地獄」へ落ちて行ったとされていますが、釈迦の没後900年頃、経典を求めてインドにおもむいた法顕(340?-420?)が、その見聞録(『法顕伝』)の中で、調…

「理想的年代記」は物語を紡げない/『物語の哲学 柳田國男と歴史の発見』野家啓一

今年、最大の収穫。脳内のシナプスがバチバチと火花を散らしながら、次々と新しい回路を形成した。 私は20年ほど前から大乗仏教の成立について様々な疑問を抱いていた。最大の疑問は膨大な経典のいずれもが「無署名」であることだった。しかも、それらが「ブ…

宗門人別帳、寺請証文、戸籍台帳

宗門人別帳の記載形式が全国的に統一されるのは、寛文11年(1671)10月「宗門改之儀ニ付御代官江達」という法令が出されてからである。これでは、一人ずつに宗派・生国・年齢・名前・続柄・檀那寺名が書き上げられ、家ごとにまとめ、巻末に寺名と台帳が村単…

思想と理論/『リハビリテーション・ルネサンス 心と脳と身体の回復 認知運動療法の挑戦』宮本省三

リハビリテーションの思想と、イタリアのカルロ・ペルフェッティが提唱する認知運動療法の啓蒙書である。宮本省三の文章は機関銃のように怒りを放っている。畳み込む理論が時に破綻することもある。実に強引極まりない。私は本書を読んで、宮本省三の評価に…

大乗仏教の仏は“真実(リアリティ)の神話的投影”/『仏教は本当に意味があるのか』竹村牧男

案外知られていないと思われるが、実はブッダやイエスは著作を残していない。ソクラテスと孔子も同様。枢軸時代のメインキャストは一様に文字を残さなかった。 何といっても昔の話である。ブッダの生没年さえ定かではないのだ。当時のインドには歴史という考…

オシムが背負う十字架/『オシムの言葉 フィールドの向こうに人生が見える』木村元彦

スポーツ選手や職人の言葉が胸を打つのは、思考に身体性が伴っているためであろう。そう。人生とは“行為”なのだ。時に学者の言葉が軽く感じられるのは、私の人生とは無縁な能書きに過ぎないからだ。 イビチャ・オシム。身長191cmの偉容。猫背なのは知性が重…

輪廻転生からの解脱/『100万回生きたねこ』佐野洋子

この作品には思考や価値観を深いところで揺さぶる何かがある。正直に言うと、私はいまだに思いあぐねている。ただ確実なのは、佐野洋子が明らかに何かを破壊しようと企てていることだ。 私は頭に来ている。この物語を正確に読み解くことができないからだ。ま…

日本仏教は鎮護国家仏教として出発した/『鎌倉佛教 親鸞と道元と日蓮』戸頃重基

鎌倉仏教の3大スター親鸞・道元・日蓮の思想と生きざまを、やや批判的(あるいは学術的)に捉えた好著。タイトルの「仏教」がなぜ旧漢字なのかは不明。何の知識もない人が読むと、毒される可能性あり(笑)。仏教思想の俯瞰が巧みで、見識を感じさせる。 釈…

依法不依人/『仏教とキリスト教 イエスは釈迦である』堀堅士

・宗教は人を殺す教え/『宗教の倒錯 ユダヤ教・イエス・キリスト教』上村静 ・インドのバラモン階級はアーリア人だった ・依法不依人・偶然性/『宗教は必要か』バートランド・ラッセル ・キリスト教を知るための書籍 いやあ、たまげた。これほど興奮を掻(…

仏教はもっともドグマから遠い教え/『ブッダ入門』中村元

インディラ・ガンジーは、インド初代首相ネルーの娘。1984年、護衛兵をしていたシーク教徒の凶弾に斃(たお)れた。 私は、インドのインディラ・ガンジー首相がお亡くなりになる2週間ほど前に何度かお会いしました。ちょうどその時、「仏教および国民文化に…

「私」とは属性なのか?〜空の思想と唯名論/『空の思想史 原始仏教から日本近代へ』立川武蔵

・「空」とは否定作業によって自己が新しくよみがえるプロセスの原動力 ・「私」とは属性なのか?〜空の思想と唯名論 ・枢軸時代の変化 ・「空」の語意・『世界の名著1 バラモン教典 原始仏典』長尾雅人責任編集 ここで展開されているのは初期仏教の「空」(…

インドのバラモン階級はアーリア人だった/『仏教とキリスト教 イエスは釈迦である』堀堅士

・宗教は人を殺す教え/『宗教の倒錯 ユダヤ教・イエス・キリスト教』上村静 ・インドのバラモン階級はアーリア人だった ・依法不依人・偶然性/『宗教は必要か』バートランド・ラッセル ・キリスト教を知るための書籍 「イエスは釈迦である」なんてタイトル…

仏教の変遷 インド〜中国〜日本/『最澄と空海 日本仏教思想の誕生』立川武蔵

鎌倉仏教に多大な影響を与えた最澄(伝教大師)と空海(弘法大師)。同時代を生き、共に唐の国で学んだ二人は、仏教界に革命を起こす。空海はともかく、最澄がこれほど密教の影響を受けていた事実を私は知らなかった。 また、インド、中国、日本を経て、仏教…

ブッダが解決しようとした根本問題は「相互不信」/『ブッダは歩むブッダは語る ほんとうの釈尊の姿そして宗教のあり方を問う』友岡雅弥

・ブッダが解決しようとした根本問題は「相互不信」 ・人を殺してはいけない理由 ・日常の重力=サンカーラ(パーリ語)、サンスカーラ(サンスクリット語) ・友の足音 ・真の無神論者・『仏陀の真意』企志尚峰 ・『悩んで動けない人が一歩踏み出せる方法』…

「空」とは否定作業によって自己が新しくよみがえるプロセスの原動力/『空の思想史 原始仏教から日本近代へ』立川武蔵

・「空」とは否定作業によって自己が新しくよみがえるプロセスの原動力 ・「私」とは属性なのか?〜空の思想と唯名論 ・枢軸時代の変化 ・「空」の語意・『世界の名著1 バラモン教典 原始仏典』長尾雅人責任編集 仏教史を辿り、「空」の概念がどのように変質…

開祖や教団の正統性に寄りかからない/『仏教は本当に意味があるのか』竹村牧男

・開祖や教団の正統性に寄りかからない ・歴史的真実・宗教的真実に対する違和感 大乗仏教運動の意味を思索し、捉え直そうとする内容。この姿勢がいい。 私は、その宗教の開祖であることだけをもって、あるいは教団の正統性だけをもって、無条件にその価値が…

数字のゼロが持つ意味/『人間ブッダ』田上太秀

「人間ブッダ」入門。さほど宗教色はない。いや、宗教色はもちろんあるのだが、宗派性がないというべきか。本書を読むと、驚くほど釈尊(=ブッダ)が常識や道理を重んじていた事実が窺える。 現代に生きる我々が読んでも、「フム、なるほど」と頷けること自…