古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

小田嶋隆 の検索結果:

春は出会いと別れの季節

…て、町には新入生や山出しや事情を知らない新参者があふれかえっている。とすれば、その混乱と感傷と興奮に沸く春霞の空気は、テレビにとって、願ってもない背景なのだ。だからこそ、テレビの見世物小屋は、桜咲くこの季節に、古いテントを畳み、新しい花茣蓙(ござ)を広げる作業を繰り返してきたわけです。そう。テキ屋の皆さんと一緒。桜前線とともに各地の祭りを北上しつつ、その場限りのテンポラリーな商売を楽しむ、と。縁日。 【『テレビ救急箱』小田嶋隆(中公新書ラクレ、2008年)】 『テレビ救急箱』

歳をとるということ

それにしても、歳をとるということはやっかいなことだ。なにしろ、おまわりや医者のような連中が自分より年下になってしまうのだから。 【『「ふへ」の国から ことばの解体新書』小田嶋隆(徳間書店、1994年)】 『「ふへ」の国から ことばの解体新書』 「ふへ」の国から ことばの解体新書

人生はロールプレイングゲームだ

…「らしさ」は、すべて不特定多数の他人が決めることになっていて、だれもそれらに逆らうことはできないのだ。 きっと、そうだからこそ、我々はRPGに熱中するのだ。我々は、自分の現実の中で実行できないことを、もっぱら想像の世界や、ゲームのディスプレイの中で実現しようとしているわけなのだ。 【『パソコンゲーマーは眠らない』小田嶋隆(朝日新聞社、1992年/朝日文庫、1995年)】 『パソコンゲーマーは眠らない』 パソコンゲーマーは眠らない(単行本) パソコンゲーマーは眠らない(文庫本)

アナロジーは死の象徴化から始まった/『カミとヒトの解剖学』養老孟司

…コンピュータ妄語録』小田嶋隆 養老孟司 岸田秀 教条主義こそロジックの本質/『イエス』R・ブルトマン マネーと民主主義の密接な関係/『サヨナラ!操作された「お金と民主主義」 なるほど!「マネーの構造」がよーく分かった』天野統康 ラットにもメタ認知能力が/『人間らしさとはなにか? 人間のユニークさを明かす科学の最前線』マイケル・S・ガザニガ デカルト劇場と認知科学/『神はなぜいるのか?』パスカル・ボイヤー クルト・ゲーデルが考えたこと/『ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論…

民族という概念は18世紀に発明された

…ま現在の「大東亜戦争=アジア解放戦争」論に繋がっている。 「八紘一宇」論とは、つまり、わたしの言う「日本型中華思想」である。中華が蕃(蛮)を救済し、指導してやる、と言うのである。 【『無境界の人』森巣博〈もりす・ひろし〉(小学館、1998年/集英社文庫、2002年)】 民族という概念は「創られた伝統」に過ぎない/『インテリジェンス人生相談 個人編』佐藤優 愛国心への疑問/『イン・ヒズ・オウン・サイト ネット巌窟王の電脳日記ワールド』小田嶋隆 日本が成立したのは7世紀か 森巣博

NTTの番号案内

第一、電話番号という、言ってみれば自分の会社の事業内容の案内でカネを取るという神経がわからない。 たとえば、デパートのねえちゃんが売場案内でカネを取るだろうか? 「あ、メニューお願いね」 「料理案内は1件80円ですが」 なんていうレストランがあったとして、そんな商売が通用するものであろうか? 【『かくかく私価時価 無資本主義商品論 1997-2003』小田嶋隆(BNN、2003年)】 『かくかく私価時価 無資本主義商品論 1997-2003』

架神恭介、辰巳一世

…、2009年)/いやあ笑った笑った。小田嶋隆が好きな人なら確実にはまることだろう。巻末には「感謝の手紙」まで挿入されている。教祖のハッピーライフを実現するための解説書という体裁をとっているが、実はかなり正確な記述が多く、実体は「世界宗教入門」といった具合だ。驚くほどわかりやすく書かれているが、中級者レベルの人が読んでも勉強になることだろう。各章の間の「コラム」も親切で目が行き届いている。その辺に転がっている宗教書よりもはるかに面白かった。これで著者が20代というのだから驚き。

バルザック

…面白かった。どこか、小田嶋隆と似たところがある。描写の確かさ、言葉の適切さであろうか。父親は錬金術に余念がなかった。障害を抱えた貞淑な妻がこれを支える。がしかし、科学的実験には金が掛かった。穀潰(ごくつぶ)しの父親が家族を翻弄する。心労が重なった妻は遂に命果てる。賢夫人は娘に遺言を託した。そして、父が真理に没頭し母が情に流される合間を縫って、長女マルグリットとエマニュエル青年の初恋が爪弾(つまび)かれる。芝居じみたセリフが物語を大いに盛り立てる。仏典に説かれる雪山(せっせん)…

2009年に読んだ本ランキング

…の電脳日記ワールド』小田嶋隆 67位 『真剣師 小池重明 “新宿の殺し屋"と呼ばれた将棋ギャンブラーの生涯』団鬼六 68位 『ドンと来い! 大恐慌』藤井厳喜 69位 『アメリカ重犯罪刑務所 麻薬王になった日本人の獄中記』丸山隆三 70位 『おテレビ様と日本人』林秀彦 71位 『鎌倉佛教 親鸞と道元と日蓮』戸頃重基 72位 『新訂 孫子』金谷治訳注 73位 『蓮と法華経 その精神と形成史を語る』松山俊太郎 74位 『国債を刷れ! 「国の借金は税金で返せ」のウソ』廣宮孝信 75位…

「強い本」と「弱い本」

…。ガルシア・マルケスあたりになると「六番小田嶋っ、マルケス一本行きます!」ぐらいの気合いがないと読みこなせない。 こういう、ゴリゴリの本を読むためには、ふだんから地道なトレーニングをして、基礎体力を養っておく必要がある。また、若い頃多少鳴らしたからといって、準備運動なしにいきなりかかると肉離れを起こす。やはり、1月から自主トレにはいって、2月にキャンプ、3月からオープン戦といった具合に、段階を踏んで調整したいところだ。 【『安全太郎の夜』小田嶋隆(河出書房新社、1991年)】

転落を演出する芸能リポーター〜みといせい子の場合

…目にはびっくりしてみせていた昭和の時代の芸能リポーターは、その実、予想通りの展開に小躍りしながら仕事をしていた。 「華やかなスポットを浴びていた朋ちゃんがこんなことになるとは、あの当時、誰が想像できたでしょう」と、今回、みといせい子がしきりに嘆いてみせているのも、もちろん、華原朋美のタレント性を惜しんでいるからではない。転落の落差をデカく見せるためには、過去の栄光を強調するのが得策だと、そう考えているからに過ぎない。 【『テレビ救急箱』小田嶋隆(中公新書ラクレ、2008年)】

格闘技番組と紅白歌合戦

…果たしたファミリーだけが、正しい日本のお正月を迎える資格を備えた、保守本流の花マル家族なのだ。 紅白歌合戦の視聴率は、番組の出来不出来を反映しているわけではない。出演者の歌唱力の総和を意味しているのでもない。あの45.9パーセントという数字は、大晦日の夜に、家族が一斉に打ちそろってテレビの前に座る家庭が、もはや、日本には45パーセントしか残っていない、と、そういうふうに考えるべきなのである。 【『テレビ標本箱』小田嶋隆(中公新書ラクレ、2006年)】 『テレビ標本箱』小田嶋隆

ポピュリズムによるナショナリズムの昂揚

…して怒っている状態」が続くようになった。怒りの対象は100パーセント悪く、それを攻撃する世論は100パーセント正しいという二重図式が確立した。ある時は怒りの対象が鈴木宗男氏であり、ある時は「軟弱な」対露外交、対北朝鮮外交である。 【『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』佐藤優〈さとう・まさる〉(新潮社、2005年/新潮文庫、2007年)】 愛国心への疑問/『イン・ヒズ・オウン・サイト ネット巌窟王の電脳日記ワールド』小田嶋隆 『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』

カテゴリーを追加

「クリシュナムルティ」と「小田嶋隆」を追加した。

「恋人がサンタクロース」

…脅迫的な調子でスピーカーから連呼される。 「ふざけるな、女に尽くすだけが男の甲斐性だってのか?」 まだ20代だったころ、私はこの歌に出てくるサンタ野郎に大いに反発して、「恋人が編んだズロース」という替歌を作ったことがある。恋人のために毛糸のズロースを編む男の哀れな姿を描写した歌だ。 いい歌だった。 が、だれもほめてくれなかった。 何人かが片頬で笑っただけだった。 【『仏の顔もサンドバッグ』小田嶋隆(JICC出版局、1993年)】 『仏の顔もサンドバッグ』 仏の顔もサンドバッグ

最高裁は酒井法子主演、故・原田昌樹監督の裁判員制度広報用映画『審理』の配信及び公共施設での貸し出し、および上映活動の中止を決定した

…て描く広報映画への措置として、他ならぬ最高裁が、性急に下していい判断だったのでしょうか。 そのことを、疑問に思います。 また、作品そのものと出演した役者、制作に携わったスタッフの私生活とは区別して考えるべきではないでしょうか。 そしてこの作品を、最高裁が制作した作品として、歴史から消してしまうようなことに、もしなったとしたら、とても悲しいことです。今回の公開中止はあくまで一時的な措置であることを祈ります。 【切通理作 中央線通信】 「のりピーの夏休み」は意外に短そう:小田嶋隆

『日本問題外論 いかにして私はデジタル中年になったか』小田嶋隆

現代っ子の老化、インター熱湯の極楽、国際電脳ちゃんこ鍋試案、シリコンバレーのブルース、テレビの国から、バンカー地獄など、電脳界の鬼才・オダジマが送る日本列島ななめ斬りの最新エッセイ集。 小田嶋隆

三橋貴明、桜井章一、小田嶋隆

…識人だと思う。 93冊目『イン・ヒズ・オウン・サイト ネット巌窟王の電脳日記ワールド』小田嶋隆(朝日新聞社、2005年)/前原さんオススメの一冊。確かに面白かった……が、「ア・ピース・オブ・警句」よりは落ちる。ブログの記事を編んだものゆえ、どうしても散漫な印象を拭えない。更にサッカーネタに私はついていけなかった。その意味では、同じく妖怪ネタについていけなかった『安全太郎の夜』(河出書房新社、1991年)と五分。活字がゴシック体なのも気に入らない。私の中では6位ってところだな。

こぶ平議員

…、ああ見えてこぶ平だからなあ」 と、先代の先生の遺影に惑わされることなく、現役の候補者の立ち位置にこぶ平の顔を重ねて見るようになれば、もう少し冷静な判断ができるようになる。 「むしろカズシゲじゃね?」 と、別方向からの突っ込みが入れば、世襲論議はさらに豊かなものになる。 いずれにしても、立候補の制限には反対だ。 勝手に立たせて、存分に落とすべきだ。 【小田嶋隆のア・ピース・オブ・警句】 議席を相続する二世議員/『かくかく私価時価 無資本主義商品論 1997-2003』小田嶋隆

意外とデタラメの多い新聞記事

かように、新聞というものは、専門的な分野について触れたが最後、実にあっさりと馬脚をあらわしてしまうことになっている。彼らの体には馬の脚がついている。で、顔にはヤジ馬の眼と、ロバの耳がついていて、頭の中には、古新聞が詰まっている。 【『安全太郎の夜』小田嶋隆(河出書房新社、1991年)】 『安全太郎の夜』 安全太郎の夜

議席を相続する二世議員/『かくかく私価時価 無資本主義商品論 1997-2003』小田嶋隆

…1997-2003』小田嶋隆(BNN、2003年)】 小田嶋が指摘するように、世襲は「権力を私物化している」証拠であろう。親が築いた地盤・看板・カバンを、労せずして手に入れることができる。まさに「濡れ手で粟」。 民主党の菅直人は、日本の改革が遅れている理由は、守旧化した官僚主導の政治と世襲政治に最大の原因があると叫んできた。その矛先(ほこさき)は1999年の代表選挙で味方にまで突きつけられ、世襲議員の2名の対立候補者に向かって「銀のスプーンをくわえて生まれた」と皮肉った。とこ…

政府に奉仕する記者クラブ/『ジャーナリズム崩壊』上杉隆

…ディアは下水管だ」と小田嶋隆が喝破しているが、全く同じ理由から「メディアはケツの穴だ」と私は言いたい。 上杉隆には気骨がある。傑作『官邸崩壊 安倍政権迷走の一年』(新潮社、2007年)にまつわるエピソードも記されているが、非常に興味深いものだった。かつて上杉本人が勤務したNHKに対する苦言も真摯である。 読書の目的は、「世の中の仕組み」や「世界の構造」を知ることにある。本を読まないと、知らず知らずのうちに権力者のコントロール下に置かれる羽目となる。本書は間違いなく“目を開かせ…

斎藤学、渥美國泰、P・F・ドラッカー、高橋克彦

…出版、2004年)/小田嶋隆が目指しているのは蜀山人(大田南畝)ではないかと思い、入門書を探したが見つからなかった。これは資料といってよい。B5版で書や落款(らっかん)の写真が多数。私としては、特に『寝惚先生文集』を知りたかったため、何の役にも立たなかった。18ページまで。 76冊目『プロフェッショナルの条件 いかに成果をあげ、成長するか(はじめて読むドラッカー 自己実現編)』P・F・ドラッカー/上田惇生(うえだ・あつお)編訳(ダイヤモンド社、2000年)/期待外れだった。こ…

原爆資料館を訪れたチェ・ゲバラ/『チェ・ゲバラ伝』三好徹

…ゲーマーは眠らない』小田嶋隆 ・チェ・ゲバラ ・植民地 ・若きパルチザンからの鮮烈なメッセージ/『イタリア抵抗運動の遺書 1943.9.8-1945.4.25』P・マルヴェッツィ、G・ピレッリ編 ・米国の不快な歴史/『人間の崩壊 ベトナム米兵の証言』マーク・レーン ・被爆を抱えた日常/『夕凪の街 桜の国』こうの史代 ・アメリカ人の良心を目覚めさせた原爆の惨禍/『トランクの中の日本 米従軍カメラマンの非公式記録』ジョー・オダネル ・ヒロシマとナガサキの報復を恐れるアメリカ/『日…

和田アキ子という代理オヤジ/『テレビ標本箱』小田嶋隆

… 【『テレビ標本箱』小田嶋隆(中公新書ラクレ、2006年)】 「完パケ」とは完全パケットの略か。和田アキ子は「力」を体現している。小田嶋隆は「代理オヤジ」と手加減しているが、ま、自民党か暴力団というのが正解だろう。あるいは、神……。つまり、「逆らうことが許されないもの」の象徴として和田アキ子は存在しているのだ。そして、現実世界にドラえもんは存在しない。 世にマザコン男性は多い。年上の女性から叱られることで快感を覚えるタイプだ。“叱ってくれる”という関係性に甘え、寄り掛かり、も…

「リーダー」になりたいやつなんかに投票したくない

オダジマンは脂(あぶら)が乗ってきたねえ。 小田嶋隆のア・ピース・オブ・警句

「空耳アビィロード」桑田佳祐

これは多分、作家が書いたものだろう。桑田の作詞であれば、桑田への評価を上方修正する必要がある。小田嶋隆より凄いよ。この言葉のセンスは。 【追記 2009-05-08】「る」さんからのコメントで、全曲桑田佳祐の作詞であることが判明した。ってことで、桑田佳祐を大幅に上方修正する。桑田は音楽のリズム感だけではなく、言葉のリズム感においても天才であることが証明された。

公共の空間に土足のままで入り込む携帯電話/『仏の顔もサンドバッグ』小田嶋隆

…を読んだ後は、やはり小田嶋隆の作品を開いてしまう。小田嶋はミスター明晰だ。駄洒落や下ネタが多いのは確かだが、これほどすっきりした文章を書ける人物はそうそう見当たらない。いつ読んでも、「初めて経験したウォシュレット」みたいな爽快感を覚える。 私は携帯電話が嫌いだ。もちろん、それ以前に出回ったポケットベルも嫌いだった。あんなものは「犬の鎖」だ。文明の利器は我々を一人にしてくれない。何が何でも社会につなぎ止めようとする。流行に逆らうのが私の流儀だ。であるがゆえに、仕事以外で携帯電話…

駄洒落炸裂/『「ふへ」の国から ことばの解体新書』小田嶋隆

小田嶋隆は駄洒落が上手い。下ネタともなると超絶的な技巧が冴える。この際、当ブログの品位をかなぐり捨てて、抱腹絶倒の駄洒落を紹介しよう。解説はするまい。黙って笑ってくれ給え―― さすがに、コンドームの自販機がしゃべるのはまだ聞いたことがないが、あいつだって黙ってはいないかもしれない。 「よっ、兄さん、今夜は頑張れよ」 と、コンドームの自販機が親しげに話しかけてくる……あり得ない話ではない。内臓されたセンサーで客の性別、年齢を判断して、かけ声だってそれぞれに使い分けてくるかもしれ…

我々自身が人生を短くしている/『人生の短さについて』セネカ

…た。古典、恐るべし。小田嶋隆がしばしば使う「なぜというに」ってのは、多分本書から影響を受けているのだろう。170ページ余りの薄い本だが、その辺の本が10冊くらい束になっても敵(かな)わないほどの衝撃を受けた。しかも、2000年前に書かれたものなのだ。人間の本質は変わらないようだ。否、文明の発達に伴って劣化しているのかも知れない。 しかし、われわれは短い時間をもっているのではなく、実はその多くを浪費しているのである。人生は十分に長く、その全体が有効に費(ついや)されるならば、最…