1冊読了。
4冊目『「絶対」の探求』バルザック/水野亮訳(岩波文庫、1939年)/原作は1834年。ビックリするほど面白かった。どこか、小田嶋隆と似たところがある。描写の確かさ、言葉の適切さであろうか。父親は錬金術に余念がなかった。障害を抱えた貞淑な妻がこれを支える。がしかし、科学的実験には金が掛かった。穀潰(ごくつぶ)しの父親が家族を翻弄する。心労が重なった妻は遂に命果てる。賢夫人は娘に遺言を託した。そして、父が真理に没頭し母が情に流される合間を縫って、長女マルグリットとエマニュエル青年の初恋が爪弾(つまび)かれる。芝居じみたセリフが物語を大いに盛り立てる。仏典に説かれる雪山(せっせん)の寒苦鳥(かんくちょう)の現代版といってよい。古典恐るべし。