古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

転落を演出する芸能リポーター〜みといせい子の場合

 思えば、20世紀の芸能界には、この種の、転落そのものが芸風であるみたいなタレントさんがもっとたくさん活動していた。彼らは、不倫、失言、三角関係、ドタキャンぐらいの軽微な逸脱行動を端緒に芸能人としての活動を展開しはじめ、じきに、当て逃げ、踏み倒し、プロダクション独立騒動みたいな中規模スキャンダルを引き起こす。で、最終的にはクスリ、恐喝、詐欺、傷害あたりで警察マターの三面記事人脈の仲間入りを果たす、と、そういう決まりになっていた。
 だから、「信じられません」「なんということでしょう」と、二言目にはびっくりしてみせていた昭和の時代の芸能リポーターは、その実、予想通りの展開に小躍りしながら仕事をしていた。
「華やかなスポットを浴びていた朋ちゃんがこんなことになるとは、あの当時、誰が想像できたでしょう」と、今回、みといせい子がしきりに嘆いてみせているのも、もちろん、華原朋美のタレント性を惜しんでいるからではない。転落の落差をデカく見せるためには、過去の栄光を強調するのが得策だと、そう考えているからに過ぎない。


【『テレビ救急箱』小田嶋隆中公新書ラクレ、2008年)】