格闘技番組と紅白歌合戦

 いずれにしても、格闘技は、エロと並んで、家族が打ちそろって見るのにもっともふさわしくない番組ではあるわけで、とすれば、問題は、むしろ、紅白歌合戦の視聴率が、ついに50パーセントを大きく割り込んだという事実のほうにある。紅白の視聴率は、翌日から始まる正月のあり方を決定する数字だ。言いかえれば、伝統的な血族イベントとしての紅白共同視聴を果たしたファミリーだけが、正しい日本のお正月を迎える資格を備えた、保守本流の花マル家族なのだ。
 紅白歌合戦の視聴率は、番組の出来不出来を反映しているわけではない。出演者の歌唱力の総和を意味しているのでもない。あの45.9パーセントという数字は、大晦日の夜に、家族が一斉に打ちそろってテレビの前に座る家庭が、もはや、日本には45パーセントしか残っていない、と、そういうふうに考えるべきなのである。


【『テレビ標本箱』小田嶋隆中公新書ラクレ、2006年)】


テレビ標本箱 (中公新書ラクレ (231))