「恋人がサンタクロース」

 12月になると、街にユーミンの歌声が溢れかえる。これは、もう10年も前から進行しているこの国の病気のようなものだ。
 なかでも「恋人がサンタクロース」というあの不穏な主張を含んだ歌は、最も高い頻度で、まるでシュプレヒコールみたいに脅迫的な調子でスピーカーから連呼される。
「ふざけるな、女に尽くすだけが男の甲斐性だってのか?」
 まだ20代だったころ、私はこの歌に出てくるサンタ野郎に大いに反発して、「恋人が編んだズロース」という替歌を作ったことがある。恋人のために毛糸のズロースを編む男の哀れな姿を描写した歌だ。
 いい歌だった。
 が、だれもほめてくれなかった。
 何人かが片頬で笑っただけだった。


【『仏の顔もサンドバッグ』小田嶋隆JICC出版局、1993年)】


仏の顔もサンドバッグ