古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

斎藤学、渥美國泰、P・F・ドラッカー、高橋克彦


 2冊挫折、2冊読了。


 挫折38『インナーマザーは支配する 侵入する「お母さん」は危ない斎藤学〈さいとう・さとる〉(新講社、1998年)/久し振りに斎藤学を読んだが相変わらずだった。淡々とした説明調、ツルツルした講義調である。43ページで挫ける。「私は患者ではないぞ」と言いたくなるような文章だ。世間にひれ伏した親の価値観が、子供の心を束縛し歪(いびつ)な形に変える。これを斎藤は「親教」と名づけている。それにしても、紛らわしい出版社名だ。


 挫折39『大田南畝・蜀山人のすべて 江戸の利巧者 昼と夜、六つの顔を持った男』渥美國泰(里文出版、2004年)/小田嶋隆が目指しているのは蜀山人大田南畝)ではないかと思い、入門書を探したが見つからなかった。これは資料といってよい。B5版で書や落款(らっかん)の写真が多数。私としては、特に『寝惚先生文集』を知りたかったため、何の役にも立たなかった。18ページまで。


 76冊目『プロフェッショナルの条件 いかに成果をあげ、成長するか(はじめて読むドラッカー 自己実現編)P・F・ドラッカー/上田惇生(うえだ・あつお)編訳(ダイヤモンド社、2000年)/期待外れだった。これは多分、上田訳の文体に問題ありと見た。入門書として抄録という発想はいいのだが、胸に響いてくる何かが欠けている。


 77冊目『時宗 巻の参 震星高橋克彦NHK出版、2000年/講談社文庫、2003年)/やっと時宗が主人公となる。虚々実々の駆け引きと政治的思惑が交錯する。まだ天下が統一されていない鎌倉時代である。天皇と将軍、そして執権が権力の鼎(かなえ)を形成している。時宗は二十歳前後であるが、要職を全うし執権に就く。蒙古からは幾度となく使者が送られてきた。時宗は父・時頼から教えられた起死回生の手を打つ。そして鎌倉では日蓮国難を叫んでいた。日蓮の首を刎ねようとした時に現れた竜の口の光り物と、北条時輔の乱について高橋史観から新しいドラマが誕生した。