古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

フィリップ・プルマン


 1冊挫折。


黄金の羅針盤フィリップ・プルマン/1ページ目の文章、「長いすは客のためにあらかじめひいてあった」で戸惑う。確かに「椅子を引く」という言葉はあるが、果たして小中学生が理解できるだろうか? 例えば、「長いすはいつでも客が座れるようにテーブルから少し離されていた」とか、「長いすは客が座りやすいようにセッティングされていた」とすべきだろう。そして7ページ目の「いまはここにじっとしてるっきゃないよ」という科白を目にして本を閉じた。この大久保寛という訳者は、世界で数々の文学賞に輝き、「今世紀最後のファンタジー」とまで言われた作品を、今風の言い回しを挿入することで台無しにしてくれた。「してるっきゃないよ」なんて言葉が20年後にも通用するのだろうか? 私はそは思わない。妙な流行を取り入れると、小説はあっと言う間に古臭くなってしまうことがある。星新一の作品が今尚読み継がれているのは、一切の流行を排除しているからであろう。出版社は翻訳者の選定をもっと真剣に行うべきだ。