古本屋の覚え書き

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明治維新は外資によって成し遂げられた/『洗脳支配 日本人に富を貢がせるマインドコントロールのすべて』苫米地英人

 では、明治維新のおさらいをしておこう。


1840年 阿片戦争
・1841年 中濱万次郎、太平洋を漂流しアメリカ船に救われる。
・1851年 土佐漁民中濱万次郎ら、アメリカ船に送られて琉球に上陸する。
・1853年 黒船来航
1854年 日米和親条約
・1858年 安政の大獄
1860年 桜田門外の変
・1867年 大政奉還


 意図的に阿片戦争を入れたわけだが、こうして俯瞰すると欧米列強が東アジアに接近を図ったことが理解できる。


黒船来航の背景


 結局は、産業革命の波が押し寄せたってな話だったわけだ。マーケットの拡大、流通の確保、資本の収奪――植民地政策の動機はこんなところにあったのだろう。


 岸田秀はペリー来航を「強姦」であったと分析している。それ以降、日本は精神分裂病統合失調症)となった。


 日本が近代国家となったきっかけが黒船来航にあったことは疑問の余地がない。では開国後、どのような状況が訪れたのか――

公武合体策と尊王攘夷派の擡頭(1860年1863年


 開国・貿易開始以降、内外の金銀比価が違ったために発生した金貨が大量に流出。その対策として発行された万延小判の品位の低さなどにより諸物価が高騰、開国策・不平等条約への批判が噴出し、外国人排斥の攘夷思想が次第に隆盛し、各地で異人斬りが横行する。また、国学思想から来る尊王思想と結びついて「尊王攘夷」運動として幕府批判へつながっていった。


Wikipedia


「強姦」の反動が国内で頻発したということなのだろう。注目すべきは、経済の混乱が思想の母胎となっている点である。行き詰まった社会は、「新しい物語」を求める。そして、「新しい物語」が社会の枠組みを打ち破る。


 そして、アメリカで南北戦争(1861-1865)が勃発した。日本にかまっていられる状況ではなくなった。


 そうすると、明治維新は日本における自律運動であったのだろうか? そんなわけないよ。油断も隙もないのが国際社会だ。今度はヨーロッパの出番だ――

 話は飛びますが、明治維新のときの日本を想像してください。
 明治政府になって、その後、日本の資本主義は急速に発展を遂げていきます。資本主義が発展するためには、まず資本がなくてはならないはずですが、その資本はどこからやってきたのでしょうか。工業や重工業の発展に連なる経済の基礎は、誰がどのようにして築いたのでしょうか。
 カネの存在を抜きにして、歴史を変えることはできません。大政奉還から明治維新、そして明治新政府が成立する歴史の転回点で、日本に巨額のファイナンスを行った勢力がいたわけです。戊辰(ぼしん)戦争の戦費に使われたカネにしても、同様のことがいえます。倒幕軍の戦費は、薩摩と長州が自分たちの金蔵から出してきたものではありません。幕府軍の戦費にしても、徳川家が全額まかなったものではないでしょう。現代の国際紛争モデル、あるいは内戦モデルから類推すれば、戊辰戦争が外国の二大勢力による代理戦争という性格を色濃く持っていたことは容易に想像がつきます。
 実際、政権交代を目指す薩長勢力にはイギリスが、政権維持を目論む幕府勢力にはフランスが、潤沢な資金を供給していました。もっとはっきりいえば、当時の財政破綻状態のイギリスやフランスの事実上のオーナーともいえたイギリスのロスチャイルド家とフランスのロスチャイルド家が、日本に隠然たる影響力を行使するため、薩長勢力と徳川幕府の双方へ資金を供給したと見るべきなのです。


【『洗脳支配 日本人に富を貢がせるマインドコントロールのすべて』苫米地英人(ビジネス社、2008年)以下同】


 陰謀論としては秀逸すぎる。ロスチャイルド家は初代マイヤー・アムシェルが5人の息子を欧州各地に派遣し、巨額の財を成した。その中でも、“イギリス・ロスチャイルドの祖”である三男のネイサンワーテルローの戦い(1815年)で、莫大な富を手中にした。ロスチャイルド家は資産を増やしながら戦争にコミットし、戦争にコミットすることで更に資産を増やしていった。


 ここに「世界」という名の駄菓子屋があったとしよう。店主は「神」を名乗っている。近所に住む子供達は200人ほどいるが、その殆どは貧しいため何一つ買うことができない。駄菓子を買いにくる子供は8人ほど(G8)。ところが最近、見たことのない女の子がやって来て、「オジサン、お店にある半分の駄菓子をちょーだい」と言い出した。続けて、「でも、私一人じゃ食べ切れないから、ここで商売を始めてもいいかしら?」と言うではないか。店主は「ま、店を取られるわけじゃないんだから構わないだろう」と応じることにした。そして今では、店内の99%の駄菓子を買い占められ、仕入れまでコントロールされるに至った。女の子は名前を「ロス子」といった。ロスチャイルド……(笑)。


 本当にそんな真似が可能なのか? 駄菓子屋で可能ならば、世界でだって可能だろうよ。金は人を動かし物を動かすのだ。ロスチャイルド家が天才的なのは、どちらが勝っても自分達に利益が入ってくる仕組みを考えていることだ。


 苫米地英人は維新後の状況についても、こう記している――

 ところで、徳川幕府に取って代わった明治維新の新勢力は、結局どのような人物たちでしょうか。
 もちろん、薩摩と長州の武士たちです。
 脈々と現代に生き続ける、日本の「勝ち組」の正体は、じつはこの薩摩と長州を中心とする勢力だということができます。
 明治維新以来、昭和21年に日本国憲法が施行されるまでの間に任ぜられたのべ45人の内閣総理大臣のうち、薩摩出身者はのべ5人、長州出身者はのべ11人に上っています。倒幕に参加した土佐藩からはのべ1人、肥前藩からはのべ2人、占有率はじつに42パーセントを超えてしまいます。大蔵大臣、外務大臣などの主要ポストも薩長閥がほとんどです。
 中央省庁のなかでも、とくに警察庁防衛省は、薩長の牙城です。鹿児島県、山口県の出身者が多く、事情を知る関係者の間には「鹿児島県、山口県の出身者でなければ出世できない」という暗黙の了解があるほどです。最後まで新政府軍と戦った会津藩福島県には、昭和になってからようやく国立大学が創られたというのも有名な話です。


 つまり、薩長はロス子の飼い犬となったということか。


 産業革命は文字通り革命であった。物資は世界を駆け巡り、情報がフィードバックされた。これぞ、グローバリゼーションの走りといってよい。交通・通信の発達によって世界は小さくなった。既に駄菓子屋ほどの大きさだ。


 果たしてロスチャイルドはビッグ・ブラザーを目指しているのだろうか。それとも神となることを目論んでいるのだろうか。我々は知らないうちにロスチャイルド教の信者になっているのかも知れない。