・社内主義から社外主義への転換
・『制度と文化 組織を動かす見えない力』佐藤郁哉、山田真茂留
ビジネス書ではあるが、日本人の内向性を見事に言い当てている。組織の内側に向かうエネルギーが、企業から体力を奪い取っている。
この数年間、多くの企業の部課長と議論を重ねた結果、一つの結論に達した。これから日本企業が発展していくには、「社内主義」を転換し「社外主義」の道を歩む以外にないということである。社内主義とは、社員が主として社内を向いており、その結果として過度の社内サービス、内部調整、人脈づくり、社内情報収集などが起こり、付加価値創造に結びつかないエネルギーが過剰に費やされる状態である。
そんなことは、わかっている、もうすでに改善してきたという経営者がいるかもしれない。しかし、筆者が事務局を務めるわが国最大の異業種交流会、アーバンクラブ(会員数1100人)に加盟する部課長114名のアンケート(1995年12月)によると、仕事を進めるうえでのエネルギー投入は、社内が66%、社外が34%、社内での過度のつきあいや根回しを圧縮し、社外に向かって仕事をするための改革が必要という人が89%にのぼっている。
ある企業の営業部では、部長が管理職を毎夜会議室に集め、酒を飲みながら10時までつきあわせる。その結果、管理職は疲れがたまり、仕事に身が入らないという。また、別の会社では、毎週1回の部長会議のために、各部の社員が必死に分厚い資料をつくるが、その多くはほとんど読まれることなく捨てられていくという。さらに、役員から呼ばれたので、顧客とのアポをキャンセルする。せっかく他部門からいい案が出てきても、自分の部門の発案でないので得点にならないと潰してしまう。こんな事例が山のようにある。こんなことをしていて、人件費世界一の日本企業が、国際競争に勝てるはずがない。
日本全体で膨大なむだなエネルギーが浪費されており、ここにメスを入れることが日本企業の再生と日本経済の発展に不可欠になっている。
社外主義とは、社員の目が主として社外を向いており、社内調整やつきあいが最小限に圧縮され、社会に最大の付加価値を生み出すためにエネルギーが使われる状態である。いまこそ、社内主義から社外主義への転換を進めなければならない。
【『スーパーサラリーマンは社外をめざす』西山昭彦(読売新聞社、1996年)】
「敵は本能寺にあり」ってわけだ。しかしながら、組織という体制がヒエラルキーによって支えられている限り、内部構造における不要なエネルギーは常に浪費されることになる。問題は、これが新陳代謝なのか、はたまた腫瘍なのかということだ。進行性の癌であれば、会社の存続も危うくなる。また、末端社員に過大なストレスがのしかかっているような企業は、手足が自由に動かなくなった状態といえる。
人体こそ理想的な組織とすれば、トップ(脳)からの指示系統というタテの線は不可欠だ。ただ人体は、脳からの中枢神経だけで機能しているわけではない。運動器系、循環器系、内臓系、感覚器系という多重構造が人体を成り立たせている。
この多重構造を社内でいかに組織化するかが、経営者の力量なのだろう。健全な組織を構築すれば、次に衣服や武器が必要な段階となる。