古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

郵貯・簡保・厚生年金で戦費調達/『「お金」崩壊』青木秀和

 歴史を動かしているのは何か? 人の心だ。人と言ったって万人を指すわけではない。もちろん権力者である。では、権力者の心を動かすのは何か? 金だ。金に決まっているよ。


 歴史というものは、経済で読み解くと非常にわかりやすい構図となる。どこからどこへ金が動いたか、誰が得をして誰が損をしたのか、そして得をした者は次にどう動いたのか――こうしたことは歴史を読んでもわからない。そりゃそうだ。権力者にとっては都合の悪い話だからね。わざとわからないように工夫を凝らしているに違いない。


 例えばキリスト教の歴史や、産業革命や、第二次世界大戦なども、経済という視点から見れば、世界の仕組みが一目瞭然となることだろう。株式会社という手法は、メイフラワー号でアメリカという新天地を目指したピューリタンに投資したのがそもそもの始まりだった。


 歴史を司っているのは宗教だ。そして歴史を大きく動かすのは戦争だ。文明が発達してからというもの、戦争の勝敗は武器によって決まった。織田信長が勝ったのは鉄砲を持っていたからだった。


 戦争の規模が拡大するにつれ、社会のあちこちに“税の網”が張り巡らされた。戦費はいつだって足りないのだ。現在、我々がさして疑問を抱かないシステムも、元をただせば戦費調達を目的としたものだった――

 ところが、アジア太平洋戦争という大消耗戦において、国家財政はさらに逼迫(ひっぱく)する。政府はこの苦境を乗り切るために、郵貯簡保に加えて、次なる預金部への強制預入制度の導入に踏み切る。それが「厚生年金」である。


【『「お金」崩壊』青木秀和(集英社新書、2008年)】


 わたしゃ知りませんでしたよ。郵貯簡保も、そして厚生年金までもが戦費として使われていたとは。どうせなら、年金問題もこの辺から議論してもらいたいもんだね。

 日本が戦争をしていないからといって油断してはいけない。国内で武器が製造されている上、日本の税金がアメリカの戦争を支えているケースが殆どだ。

 国際的な人道保護団体であるアムネスティ・インターナショナルはこんな報告書を発表している。「世界中で、毎日毎日、政府や武装政治集団の手により、男性や女性や子どもが、家を追われ、拷問を受け、殺害され、失踪している。多くの場合、アメリカはその責任の一端を担っている」。この報告が発表されたおが1996年。アフガニスタン空爆イラク戦争を経た現在、その傾向がさらに強くなっているという印象を持つ人は少なくないだろう。


【『世界反米ジョーク集』早坂隆(中公新書ラクレ、2005年)】


 ということは、アメリカと友好関係にある国々は、アメリカの暴力とも関わりを持っていることになる。そして、アメリカの基幹産業は軍産複合体である。アメリカが世界を牛耳っている限り、アメリカ経済が崩壊することはない。


戦時中に構築された日本のシステム/『1940年体制 さらば戦時経済』野口悠紀雄