魔女は生木でゆっくりと焼かれた/『魔女狩り』森島恒雄

 12世紀にカトリック教会は異端審問を始める。教会に歯向かう者は叩き潰しておくに限るってわけだ。キリスト教における神は絶対的な存在である。人間は「神に似せてつくられた」存在であり、「僕(しもべ)」に過ぎない。こうした差別観をテコに、教会は権力を手に入れた。


 Wikipediaによると、「魔女狩りはスイスとクロアチアの民衆の間で始まり、やがて民衆法廷という形で魔女を断罪する仕組みがつくられたという」。当初は魔女裁判と一線を画していたカトリック教会だが、15世紀になると「異端=魔女」というイメージが形成され、ヨーロッパを覆っていた反ユダヤ主義と結びついた。


 ウーム、調べものをしながら書いていると頭が痛くなってきた。結局、15〜18世紀の間に4万人が殺されたとされているが、正確な事実はいつまで経ってもわからないことだろう。


 最も悲惨な処刑方法はこうだ――

「私はその経過を全部見届けました。……女の方は炎の中で半時間、男は1時間以上も生きていました。……その男が焼かれながら嘆願する悲痛な声が長い間聞こえていました。それは、もう少し薪(たきぎ)を加えて下さいというだけの願いでした。が、その願いは聞き入れられませんでした。……その背中だけは完全に焼けましたので、彼が上体をよじらせると肋骨(ろっこつ)が現れました」(※のろのろと燃える生木の火刑)


【『魔女狩り森島恒雄岩波新書、1970年)】


 衆人環視の中でこんなむごいことが行われていたのだ。中世のルネサンスは魔女の血で染められていた。プロテスタントの祖マルティン・ルター宗教改革の火の手を上げたのが1517年(95ヶ条の論題)。反ユダヤ主義に反対したルターですら、熱狂的に魔女狩りに取り組んだ。ケプラーの母親も、ニュートンの祖母も魔女だった。


 私が言いたいことはこうだ。欧米に共通の歴史である以上、キリスト教の影響が考えられる。そして、「宗教上の対立が戦争に至る」というケースの殆どがキリスト教である。つまり、キリスト教の思想に人間をヒステリー状態に追い込む原因があるのではないか。ルワンダキリスト教に支配されていた。


 キリスト世界における戦争の周期、そしてキリスト教思想がどのような心理的負担を与えるか、こうした研究が求められる。いずれにしても、神を天上から引き摺り下ろさない限り、戦争はなくならないと私は考える。


魔女狩り (岩波新書)