2001-01-01から1年間の記事一覧
新宿のとある大きな書店でのことだ。 私の右側に若い母親が立っていた。まとわりつくように二人の少女。まだ、学校には上がってないほどの幼さだった。4歳か5歳と思われる上の子が母親のシャツの袖を引っ張った。 「ねえねえ」と落ち着いた声。 「この間、お…
戦時史研究家・高崎隆治氏の卓見。 (我が)国の対外政策は、時間による自然消滅を期待するか、さもなくば従来型の経済支援という姑息な手段を用いるかのいずれかに頼る以外、有効な手だてを持たないのが現実である。 かつて世界はこの国を評して「東洋の孤…
その瞬間、私の背後で脱兎の如く動いた人間がいた。神田の古書即売会。場所が場所だけに「やられたか?」との疑問が黒雲のように湧いてくる。その人物は一瞬にして1冊の本を抜き取った。フェンシングの突きのような無駄のなさと、猛禽類の急降下を思わせる素…
とんだ馬脚を露呈した悪趣味極まる暴露本 全編これ愚痴一色である。奥崎謙三に対する原監督の恨みつらみが、これでもかと書き連ねられている。客観的に見れば、映画『ゆきゆきて、神軍』の言い訳と受け取れる。監督にとっては余りにも不本意な作品だったのだ…
人類発祥の地とされるアフリカ。いまだ貧しき民が多く、政変に揺れる国も少なくないが、ドラムの響きや子供達の明るい表情に、日本以上の豊かな何かを感じることが多い。アフリカには“人間の輝き”がある。 夜明けが前がもっとも暗いように、闘いも、終末に近…
実写フィルムである。ナレーション・BGMは無し。 物腰の低い62歳の男が現われる――奥崎謙三。顔の相に何かが滲み出ている。続いて結婚式会場へ場面が一転。仲人として祝辞を述べる奥崎。うち並ぶ親族を前に自らが犯してきた罪を語り、反体制活動が新郎との縁…
被害者イジメの俗悪週刊誌 ▼沖縄県で起きた米兵による女性暴行事件で、被害者の女性が沖縄弁護士の人権擁護委員会に人権救済の申し立てをした(7月28日)▼内容は、一部週刊誌の報道によってプライバシーを侵害されたというもの▼ある週刊誌の女性記者は被害者…
カスタネットのような音がけたたましく鳴り響いた。振り向くと、階段を下りてくる馬鹿ムスメのサンダルの音だった。時折、目にする光景だ。ハイヒールのようなサンダルが大半である。馬鹿ムスメを睨みつけても、どこ吹く風といった様子。「悪いのはワタシじ…
明豊対聖光学院。結果は20-0で聖光学院が大敗を喫した。実は、わたくし、工藤の家でこの試合を見ていた。私が受けた印象は「緊張し過ぎたのかな?」程度であった。翌日(8月12日付)の朝日新聞に驚くべき記事が掲載されていたのでご紹介しよう。題して「君と…
ある試算によると、世界で使われる年間の軍事費は約1兆ドル(122兆円)。これをちょっと負けてくれるだけで、何ができるか? 読み書きできない子供2億7500万人に文字を教えるために必要な額が80億ドル。これが軍事費の3日分に相当。 ユニセフ(国連児童基金…
アレキサンダーが、宿敵であるペルシャ王の軍勢に打ち勝った直後のエピソード。 アレキサンダーは何と敵の王の母親のもとに、すぐさま部下を送って丁重な伝言を届けたという。それは、子息である王が無事に生きていることを伝え、母親を安心させる内容であっ…
今日、目撃したのは小学生の二人組。透明なビニール・バッグの中身がバスタオルだったことから、多分、プールへ向かう途中だと思われた。1年生か2年生であろうこの二人、真っ直ぐ歩くことがない。肩をぶつけ合ったり、指で突き合ったりしながら、離れてはく…
音楽は元々好きな方だが、38歳にもなると新しい音楽を探し出すほどの体力は既に残ってない。最近は、なんとはなしに昔よく聴いた音楽を流している。邦盤だと、メロディ志向で日本語がよく聞き取れるものがよい。 同郷ということもあって中島みゆきを好んで聴…
障害者プロレス第2弾である。 北島の2冊目である。ペンが随分と落ち着いている。障害者と社会の間に存在する欺瞞をぶち壊そうと開始したプロレス興行が波に乗る。すると今度は、障害者が自分自身と向き合わざるを得なくなる。身体的な苦痛、将来への不安、家…
・『星と嵐』ガストン・レビュファ ・標高8848mに解き放つ男の本能・『狼は帰らず アルピニスト・森田勝の生と死』佐瀬稔 ・『ビヨンド・リスク 世界のクライマー17人が語る冒険の思想』ニコラス・オコネル ・『そして謎は残った 伝説の登山家マロリー発見記…
ひょっとするとこの作品は期せずして生まれたものかも知れない。『ブラック・プリンス』(光文社文庫)のソールとエリカ、そして『石の結社』(光文社文庫)のドルーとアーリーンが本作で顔を合わせる。このアベックが余りにも酷似し過ぎているのだ。海外ミ…
大リーグ・マリナーズのイチローと佐々木が日本の報道機関に対して取材を拒否することを公表した 7月17日付スポーツ報知にも、このことに触れたコラムが掲載されていた。記者側の言い分としては「一部の報道陣の行き過ぎがあったからといって取材拒否という…
「お箸は何膳おつけしますか?」と訊いてくる店員がいる。買い物の量が多い場合、一瞬、混乱する。「必要な分だけつけてくれよ」と答えるようにしている。 コンビニやファスト・フード店などに見られるマニュアル会話は、このところ、中年の女性店員にまで影…
あとがきによれば「ギュンター・グラスの『ブリキの太鼓』以来、ドイツ文学では最大の世界的成功を収めた作品」(週刊誌『シュピーゲル』)だそうだ。『ブリキの太鼓』を読んでないので比較のしようもないが、まあ、それほどでもあるまい。ハッキリ言って苦…
漫画である。連載中から愛読していた。前々から思っていたのだが、佐々木作品には見事な淡白さがある。今回読んで初めて知ったのだが、北海道の人だったのね。納得。私を筆頭とする北海道人は淡白なのである。なぜか? 歴史が浅いからだ。つまり先祖伝来の怨…
上尾署の警部補自殺 7月9日付朝日新聞夕刊より。この警部補は、会社役員刺殺事件をめぐり、事前に捜査依頼を受けて調べておきながら、引き継ぎを忘れるなど操作を放置したとされる。遺書には「責任をとります」と。自宅で首を吊り、死亡していたのを家族が発…
人は快楽を求めるのと同様、ストイックなものに憧れるのもまた確かであろう。堕落と禁欲は、どこか生と死にも似て、相反するものでありながら、補完し合い、密接につながっている。 主人公のドルーは幼少時に暗殺された両親の復讐を果たすべく、テロ組織「ス…
またしても笑わせてくれる朝日のコラム「ワイドショー政権と参院選」 【朝日新聞 2001年6月30日付】 中央の見出しは“狂熱より理性取り戻すとき”。賢明な読者であれば、これだけで内容を察することができるだろう。小泉首相を「ライオン髪の絶叫」「『構造改…
再読。十分堪能できた。国際謀略モノといえば、フレデリック・フォーサイス、ロバート・ラドラムと並んで三羽烏の一翼を担うマレルである。この後、全く別ストーリーの『石の結社』(光文社文庫)があり、『夜と霧の盟約』(早川文庫)では、両方の主人公が…
南米チリで、15匹の野良犬を引き連れて2年間にわたって放浪生活を送っていた10歳の少年が警察に保護された。「雌犬の乳を飲んで朝食代わりにした」と話している。 【朝日新聞夕刊 2001年6月20日付】 ▼5歳の時に両親と離れて施設に引き取られた少年の冒険行▼…
このシリーズはオンライン・テキストで公開されている。飄々としたポップな文体で知られる北尾が、ややジャーナリスティックな構えで、平成に生き残る“昭和の根っこ”を捉えた作品。いずれの対象も“残滓(ざんし)”と軽々しく言うことがためらわれるような、…
副題は「愛と古書と青春の日々」。前号で紹介した作品の続編。二番煎じと侮るなかれ。筋金入りの古書マニアが披瀝する薀蓄(うんちく)の数々は、2冊の本で涸れてしまう程度のものには非ず。イラストは実弟の唐沢なをき。 何にせよマニアが著した作品の本質…
以前、本屋で半分ほど立ち読みをしたのだが、ちゃんと読み直してみた。いやあ面白い。北海道出身でこんな面白い人がいたとは驚き。道産子というのはわたくしのように奥床しく、ゆったりしていて、大人しい人ばかりと勝手に思い込んでいた。 副題が「人生に大…
豪快な塩まきで人気を読んだ元関脇の水戸泉が今月9日、国技館で断髪式。5歳の時に父親と死別。母の手一つで育てられる。中学卒業と同時に角界入りしたのも「母を楽にさせたい」との思いからだったという。故障に泣かされ続けたが、92年の名古屋場所で平幕優…
・http://www.fenrir.co.jp/sleipnir/ インターネット・エクスプローラー(以下IE)はもう要らない。ネットスケープも不要だ。すこぶるつきの便利なタブ型ブラウザである。私は最近になって知った。このブラウザは、2002年度「窓の杜大賞」を受賞しているフ…