障害者プロレス第2弾である。
北島の2冊目である。ペンが随分と落ち着いている。障害者と社会の間に存在する欺瞞をぶち壊そうと開始したプロレス興行が波に乗る。すると今度は、障害者が自分自身と向き合わざるを得なくなる。身体的な苦痛、将来への不安、家族との折り合い、恋愛への憧れ……。ある者は酒に溺れ、ある者は忽然と姿を消してしまう。夢に向かってスタートした1冊目(『無敵のハンディキャップ』文春文庫)とは打って変わって、北島の苦悩は深い。
養護施設の職をなげうち、日焼けサロンをしてまで菓子パンマンの面倒を見続ける神山。全治2週間の怪我をしてもリングに上がる北島。健常者である彼等は、まるで恋でもしているかのように、障害者に尽くす。だが、リングの上では決して手加減をすることはなかった。本書のラストに出てくる試合場面は真剣そのものである。健常者が障害者の顔を殴り(反則技)、本気で膝蹴りを入れる。
それぞれの人生の重みが読み手にのしかかってくる。北島のペンは静かではあるが、虚栄を剥ぎ取り、コンプレックスをさらけ出し、悪癖をも暴き立てる。だが、北島の眼差しは温かい。
どんな人生の舞台であってもそうだろうが、去る人があり、伸びゆく人がいる。喜びと悲しみがリング・サイドで交錯する。だが、ドッグレッグスは走り続ける。
実生活では器具や介助者を必要とする障害者が、リングに上がった途端、一匹狼になる。ここでは障害を言い訳にすることはできないのだ。技と技がせめぎ合い、力と力がぶつかり合う。汗だくとなり、息を切らせても彼等は戦うことをやめはしない。
それにしても北島は突拍子もないやり方で、障害者を取り巻く環境に風穴を空けたものだ。