古本屋の覚え書き

古い書評&今週の一曲

年齢を重ねる意味/『折々のうた 第十』大岡信編

 大岡信の「折々のうた」は朝日新聞の朝刊一面で、1979年1月25日から2007年3月31日まで連載された。引用は2行でコラムは180字。葉書に収まりそうなわずかな字数で、多くの読者を句歌の世界へ誘(いざな)った。

 年をとる それはおのれの青春を
 歳月の中で組織することだ


『途絶えざる詩II』(1935)所収。上記詩集は20世紀前半のフランスを代表するこの詩人の没後1年して刊行された。右の2行は700行近い長編詩「よそにもここにもいずこにも」の中にある。私は詩集刊行当時この詩を読み、何とか日本語に移そうと試みたが中途で挫折した。したがって右の詩句は未完の訳からという変則的なことになるが、ここに含まれる生への洞察に敬意を表して、あえて引用した。


【『折々のうた 第十』大岡信〈おおおか・まこと〉編(岩波新書、1992年)】


 この本に収められているのは、ちょうど私が朝日新聞を購読していた頃の連載。日本航空が世界の子供達による「ハイク」を集めて『地球歳時記 世界こども「ハイク」コンテスト'90』という本となった。ここからの引用が私の目を引いたのだ。


 ポール・エリュアールの言葉も実に味わい深い。たとえ、いくつになったとしても過去は「俺の若い頃は――」と語られるわけだから、人は死ぬまで青春を謳歌できるのかも知れない。